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TOPページ > 海外競馬情報 > 政権交代は競馬にどのような影響を与えるか?(イギリス)【その他】
海外競馬情報
2010年08月06日  - No.15 - 4

政権交代は競馬にどのような影響を与えるか?(イギリス)【その他】


 デヴィッド・キャメロン(David Cameron)首相の父親イアン(Ian)氏は、ジョン・ダンロップ(John Dunlop)調教師とヒューイ・モリソン(Hughie Morrison)調教師の厩舎に現役馬を所有している。イアン氏は1996年、フィリップ・ロウトン(Sir Philip Wroughton)卿との共同所有により、ロイヤルアスコット開催のウォーキンガムSをエマージングマーケット(Emerging Market)で制し、またイタリアのサンシーロ競馬場のG1競走グランクリテリウムをハロー(Hello)で制した。

 しかし、不振にあえぐ経済を立ち直らせ、傷ついた金融構造を修復するという手ごわい挑戦に没頭する息子に、イアン氏の競馬への情熱が受け継がれている証 拠は今のところほとんど見当たらない。8%の失業率と1,530億ポンド(約21兆4,200億円)の記録的な公的債務に直面しており、新政権の優先事項 リストの中には競馬産業の問題は含まれていないだろう。

 保守党の選挙公約には競馬への言及はなかった一方で、自由民主党の選挙公約には1つだけ間接的に言及されていた。それは、“地域のスポーツ施設を改修 し、スポーツクラブを支援する基金を設けるために休眠中の賭事口座の現金を使用すること”である。その公約は現在、連立政権のプログラムに記されている。 競馬界は、競馬関連の計画のために資金を充てるよう政府に働きかけるだろう。

 競馬の繁栄は、経済状況と可処分所得水準の動きに左右される。可処分所得とはすなわち、競走馬の馬主になること、競馬場へ行くこと、賭事などに拠出できる資金である。

 今後数年間において、英国が強力な経済成長を遂げることは困難であり、競争の激しい市場において競馬は顧客の目にできる限り魅力的に映るように全力を尽 くさなければならない。それゆえ、競馬変革プロジェクト(Racing For Change: RFC)は時宜に適った取組みである。

 競馬界は、1997年に労働党政権の外務大臣で、本物の競馬ファンであった故ロビン・クック(Robin Cook)氏以来、政府において影響力のある支持者を何人か持っている。リチャード・ケイボーン(Richard Caborn)氏やジェリー・サトクリフ(Gerry Sutcliff)氏のような近年のスポーツ大臣が、競馬の問題のために相当の時間を捧げたことは有名である。また、新しいスポーツ大臣であるヒュー・ロ バートソン(Hugh Robertson)氏が2012年オリンピック・ロンドン大会に没頭しているため、競馬と賭事の職務が観光・遺産大臣であるジョン・ペンローズ (John Penrose)氏の担当になったことは心強い。

 ペンローズ氏は、アマチュア騎手であり1998年チェルトナムゴールドカップ勝馬クールドーン(Cool Dawn)の馬主であるディド・ハーディング(Dido Harding)女史と結婚している。


トート社

 内務特別委員会(Home Affairs Select Committee)は1991年、「相応しい競馬統轄機関が発足したときに、政府はトート社を競馬界に無償で譲渡すべきである」と勧告した。これが、長 期に渡ってフラストレーションを起こし依然として決着のついていない苦労話の始まりであった[注:1993年にBHB(英国競馬公社)が設立された]。

 政府は2000年、トート社を競馬界に売却する決定を発表したが、価格の問題だけは未決着であった。その後10年間にわたり、公正取引委員会 (Office of Fair Trading)と欧州裁判所(European Court)の介入をはじめ予測の付かなかった一連の展開が、政府の計画の妨げとなった。

 公正取引委員会は、トート社の英国競馬を対象としたパリミューチュエル賭事の独占に難色を示した。一方欧州連合(European Union: EU)は、競馬界への市場価格以下でのトート社売却は違法な国家援助であると指摘した。2004年競馬賭事およびオリンピック宝くじ法(2004 Horserace Betting and Olympic Lottery Act)は、所有権を最終的に競馬界に移行するという理解の上で、政府がトート社の資産を政府所有の後継会社へ移行させることを可能にする条項を含んでい た。しかし、競馬界によるトート社の競売価格が、低すぎる又は十分に資金供給されていないということで入札が却下されたことから、この条項は実行されな かった。

 2008年に、政府は経済不況を理由にトート社売却を“中期的に”延期したが、2009年10月にゴードン・ブラウン(Gordon Brown)前首相は、「トート社は2010年夏に始まる予定の手続きにより公開市場で売却され、その手続きは2011年に終了するだろう。また競馬界は 純利益の半分を受け取ることになるだろう」と唐突に発表した。

 そして現在、保守党議員で、超党派の競馬および馬生産業グループ会議(Parliamentary All Party Racing and Bloodstock Industries Group)の共同議長を務めるローレンス・ロバートソン(Laurence Robertson)氏は、トート社の将来を改めて洗いなおすチャンスであると提案する。

 ロバートソン氏は、「私たちは議論を再開する必要があります。これは政府の優先事項ではありませんが、2004年の法律がありますので、私たちは新法な しに進めることができるでしょう。トート社の上級役員たちとの最近の会合において文化大臣のジェレミー・ハント(Jeremy Hunt)氏は、競馬界がトート社の所有権を獲得することを手伝うのにかなり前向きでした」と語った。

 「私は競馬界がトート社を獲得するのを見たいと思っており、私たちはEUとの問題を再検討しなければならないでしょう。私は彼らの意見には誤解があったと思います。英国において、トート社の独占状態は市場を歪曲するものではありません」。

 「私は大蔵省の姿勢がどのようなものであるか解明するために彼らと会合を持ちたいと思います。彼らはできるかぎり多額の資金を求めるでしょうが、トート 社は取るに足りないものです。競馬界は、例えば1億5,000万ポンド(約210億円)のような支払可能な額での売却を納得させなければなりません」。

 「私は、売却のための一括払いよりも、競馬界に拠出されているトート社の利益の確保のことをより懸念しています。年金債務を十分に負担できるほど純収益が巨額にはならないでしょうから、一体だれが資金を調達するのでしょうか?」

 トート社が競馬界に売却される現実的な可能性はある。それでもまだ未回答の疑問がいくつか残っており、なかでも競馬界がトート社を有した場合、これまでと比べて競馬界のためにどれだけ実りをもたらすかという疑問がある。


賦課金制度

 トート社の将来と同様に、1961年に法定された賦課金制度の将来については、これまで精力的ではあるが結論を得ることなく話し合われてきた。競馬産業は、賦課金制度は競馬のために正当な対価をもたらさないといつも不満を漏らしている。

 労働党政権は、競馬界の財政問題への関与を終わらせることに熱心であり、このためBHBは、賦課金制度をデータ権の売却に基づいた商業的なシステムに移 行させることを提案していた。2004年にこの計画は、欧州裁判所の裁定により頓挫した。競馬賭事賦課公社(Levy Board: 賦課公社)を2006年に廃止するという計画のあと、2009年に再び廃止する計画が出されたが、ドナヒュー卿(Lord Donoughue)による見直し案は、賦課金制度に代わる堅実な選択肢を得ることができないと結論付け、賦課金制度が続行されることが合意された。

 この結果、既存の法律の枠組みの中で賦課金制度を近代化する提案に議論が移り、2010年には、競馬産業がブックメーカー委員会 (Bookmakers’ Committee)に代わって賦課公社の受け入れられるような提案を行うことから手続きが始められ、それに対して賭事業者の反応を待つことになった。

 競馬産業の提案は、賦課金を現在の8,000万ポンド(約112億円)から1億3,000万〜1億5,000万ポンド(約182億〜210億円)まで増加させることを要求しているため、拒否反応があることは確実と思われる。

 新しい法律なしで変更を施す余地は限定されており、もし賦課金計画について合意に至らなかった場合は、文化大臣が決断を余儀なくされる状況となるが、これは歴代の大臣も歓迎しなかったことである。

 新政権は、競馬界の財政問題への義務的な関与に関して前政権より熱心であるようには見えない。

 ロバートソン氏は、「競馬への資金援助は政府が関与すべき問題ではありません。私は、政府がおそらく2012年には法定賦課金制度は終わると述べること を予測しています。もし競馬界と賭事産業が自発的に賦課金制度の継続を望むのならそれはそれで良いですが、現在の経済状態の故に、競馬界は賦課金制度の先 を思い描かなければならなくなるでしょう」と語った。

 「私は長い間、毎年の年次会議で賦課金制度への不平を聞いていて、競馬界の賦課金への過度の依存を心配してきました。賦課金収入は減少しつつあり、賭事 市場において競馬のシェアが減少している中で、人々がベッティングショップに行くのは競馬のためであり、それゆえ競馬はより多くの資金を与えられる資格が あるという論法は非現実的だと思います」。

 「競馬界は現実と向き合い、自己満足におちいることなく、他の収入源の開拓に対する関心不足から抜け出さなければなりません」。

 BHAは賦課金とメディア権からの収入をまったく別個のものとみなしているが、賦課金が減少しメディア権収入が増加している事実は、賦課金制度の将来を不確実なものとしている。

 競馬場がメディア権収入を一番享受しているので、競馬場の影響力は拡大し続けるだろう。また賞金額の水準を守り強化しようとするホースマンの決意も強くなるだろう。


海外賭事業者

 政府は2001年、大手ブックメーカーが海外事業を英国に戻すことを条件に、賭事税を粗利益税に置き換えることに同意した。

 粗利益税の導入はブックメーカーの利益を増加させたが、2009年にウィリアムヒル社(William Hill)とラドブロークス社(Ladbrokes)が小規模な賭事業者たちと一緒になってインターネット・スポーツ賭事事業をジブラルタルに移したた め、大蔵省の税収入と競馬の賦課金収入が合わせて年間400万ポンド(約5億6,000万円)失われた。ウィリアムヒル社は、海外で適用されている税制と 競合し得る税制の導入に失敗したと政府を非難した。

 総選挙キャンペーンの間、スポーツ大臣であったジェリー・サトクリフ氏は、労働党政権は海外賭事業者に賦課金を支払わせると公約し、一方影の文化大臣で あったトビアス・エルウッド(Tobias Ellwood)氏は、保守党政権はこの問題を“途中で頓挫させることはない”と表明していた。

 それらの詳細は明らかではないが、海外賭事業者に賦課金支払いを強要することは、生易しいことではない。ラドブロークス社のオンライン賭事担当役員の ジョン・オレイリー(John O’Reilly)氏は、「私は、政府が賦課金の管轄区を英国外に広げることができるとは考えていません。EU法の下、そのようなことはできないのです」 と見解を示した。

 新たな法案が必要となるかもしれないことや、飴か鞭のどちらを使うか決定しなければならない文化・メディア・スポーツ省と大蔵省の2つの省が関わることから、状況は込み入っている。

 ロバートソン氏は次のように警告した。「海外賭事業者は、英国を拠点としているブックメーカーと同じルールに則って営業しなければなりませんが、私たち は、これらの会社がなぜ自身の事業とともに海外に移転したのかについても、考えていかなければなりません。それは、私たちがブックメーカーを過剰に規制し 重税を課した場合に彼らがとる行動です」。

 政府は、海外賭事業者、インターネット賭事業者に賭事税と賦課金を強要する巧妙な任務を企てるのだろうか。あるいは、英国を規制されたインターネット賭 事における世界のリーダーにするという当初の目標を達成するため、賭事税率を引き下げて海外賭事業者が戻ってくるよう導くのだろうか。


ベッティング・エクスチェンジ

 長い間未解決となっているブックメーカーおよび競馬産業とのもう一つの議論は、ベッティング・エクスチェンジ利用客の一部はビジネスとしてやっており、賭事税や賦課金を支払うべきであるということについて、労働党政権を説得できていないことである。

 大蔵省がベッティング・エクスチェンジ利用客に課税することに躊躇するのは、そうすれば税対策のために賭事による損失を他の収入で相殺する途を開いてしまう懸念があるからである。

 この圧力は新たな政府へも掛けられ続けるだろう。もしその説得が成功すれば、関係者ごとの賭事の利幅に影響を与え、ベッティング・エクスチェンジの競争力は弱まり、ブックメーカーと賦課金にとってはプラスとなるが、賭事客には不利益となるだろう。


政府の経済および税制方針

 保守党と自由民主党間の連立合意の下、最優先事項は主に歳出の削減により、財政赤字を減少させることである。

 2010-11年度に見込まれる60億ポンド(約8,400億円)の削減と、現在のインフレ率の上昇などのためにさらなる削減の増大が加味された緊急予算は、6月22日に発表されるだろう。

 政府は国民健康保険のための財源を実額で増加させることと2011年4月から所得税の課税最低額を引き上げることに熱心なので、主要分野以外の歳出は大幅な削減に直面するとともに、増税が必須となるだろう。

 付加価値税率は現在のところ17.5%であり、上昇することが確実と見込まれている。また政府は、現在15%の賭事に対する粗利益税率と、ベッティング ショップの利益の大きな割合を占めている娯楽機免許税(Amusement Machine License Duty)のレベルを引き上げるかもしれない。

 増税がなされる一方で政府の歳出を削減することは、消費者の支出を抑制し、競馬産業および賭事産業の両方において影響があるだろう。経済不況の影響はす でに感じられており、新政権が避けて通れない金融引き締め政策は、国民にとっての苦痛がさらに続くことを意味するだろう。


結論

 競馬に最も影響を与えるのは英国経済の成果だろうが、それに対して政府は限定された支配力しか持っていない。歳出削減のため、競馬界は、顧客へのサービ スを向上させるために考えられるすべてのことの実行を求められるだろう。競馬変革プロジェクト(RFC)は成果を挙げることが求められる。

 新政権は前政権と同様に、競馬と賭事への直接的な関与を終わらせることを切望している。トート社は、その売却利益は明らかではないが、競馬界に売却されることになるだろう。

 競馬場団体の権限は、メディア権収入が賦課金よりもますます重要になるので、増大し続けるだろう。

 新しい大臣たちは、海外賭事業者とベッティング・エクスチェンジの厄介な問題への取組みを注意深く進めていくだろう。

 

By David Ashforth
(1ポンド=約140円)


[Racing Post 2010年5月24日「How will change in government affect British racing?」]


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