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TOPページ > 海外競馬情報 > ドサージュ(配合理論)の新しい展開(アメリカ)【生産】
海外競馬情報
2009年02月06日  - No.3 - 2

ドサージュ(配合理論)の新しい展開(アメリカ)【生産】


 現代のサラブレッドの血統的な背景分析はジャン=ジョゼフ・ヴュイエ (Jean-Joseph Vuillier)大佐が構築した基本的枠組みに基づいている。19世紀末にフランスの騎兵将校だったヴュイエ大佐は、サラブレッド血統表に科学的な方法 を適用した最初の配合理論の研究者だった。

 配合理論研究は今日でも難解なテーマだが、ヴュイエは科学的に理に適った研究をまとめた最初の人だった。ヴュイエは1902年にその詳細な研究成果を著 書『合理的なサラブレッド配合(Les croisements rationnels dans la Race Pure)』で発表した。ヴュイエは英国のクラシックレース勝馬654頭の12代前までの血統を調べ、最も共通する先祖21頭の遺伝的影響を数値化したと ころ、ほぼ一定であることを発見し、その数値が望ましいもの(基準ドサージュ)であるとした。そこで、繁殖牝馬への配合を決定する際、生まれてくる仔馬の 基礎種牡馬(指標とする先祖種牡馬)に関するドサージュがこの基準に近くなる様に計算して現役種牡馬を選ぶべきであるとした。この21頭の先祖種牡馬を出 生時期に従って5つの「系」に分類し、さらに1925年、ヴュイエは『合理的なサラブレッド配合』第2巻で6番目の「系」を発表した。(表1)。

 1921年に英国の競馬界に参入したアガ・カーン3世(Aga Khan III)は、ヴュイエの仕事に感銘を受け、彼を個人的な配合アドバイザーとして雇い、その後の出版はさせなかった。ヴュイエは数年後に死去したが、彼の未 亡人、ジェルメーヌ(Germaine)がほぼ40年にわたりこの方式を維持・更新し、アガ・カーン殿下はこれを種牡馬交配の指針とした。この方式は現在 も更新・改訂され、アガ・カーン生産牧場で活用されている。

 

表1:英国馬における基準ドサージュ
1902年版
Eclipse
568
Herod
750
Highflyer
543
         
Waxy
258
Orville
252
Buzzard
208
Blacklock
167
Tramp
114
Walton
111
Sorcerer
106
Cato
64
Birdcatcher
288
Touchstone
351
Pocahontas
313
Voltaire
186
Pantaloon
140
     
Melbourne
184
Bay Middleton
127
Gladiator
93
         
Stockwell
340
Newminster
295
           
1925年版
St.Simon
420
Galopin
405
Isonomy
280
Hampton
260
Hermit
235
Bend Or
210
   


ヴァロラとローマンによる改訂


 1950〜60年代にイタリアのジャーナリストで配合アドバイザーであったフランチェスコ・ヴァロラ(Francesco Varola)は、ヴュイエの考え方に基づく新しい解釈をあみ出し、この成果を2冊の研究書、すなわち、『競走馬類型学(Typology of the Racehorse)』および『サラブレッドの機能的発展(Functional Development of the Thoroughbred)』として発表した。残念ながらヴァロラはヴュイエの世代数値[両親から50%、祖父母から25%、曽祖父母から12.5%、玄 祖父母から6.25%・・・の遺伝的影響を受けているというゴルトンの法則(Galton’s law)]という概念を放棄したが、“基礎種牡馬(chefs-de-race)に関する素質カテゴリー”の考案は、競走馬の評価が適性毎に論じられることを意識してのものである。

 ヴァロラの方式は血統表における先祖種牡馬名の出現数を数えるだけではなく、様々な指数を用いて血統表におけるバランスを算出しようとした。残念なことにヴァロラの用いた指数には遺伝学上の科学的根拠がなかった。

 1981年にデイリー・レーシングフォーム紙(Daily Racing Form)のコラムニストであるレオン・ラスムッセン(Leon Rasmussen)は、米国の化学者で血統研究家のスティーブ・ローマン(Steve Roman)による新しい研究を紹介した。これはドサージュ・システムにヴァロラの洞察を科学的なアプローチで結び付けようとするものだった。血統表の最 初の4代だけではあったが、ヴァロラが考案した素質カテゴリーの貢献度を数学的に正確に計算した。

 ローマンはヴァロラと同じく、生産者が配合を検討するのに役立つよう自分が提案した指数やガイドラインの意味を明らかにしようとした。ヴァロラはスタミナ、距離適性、素質の間の関連性を強固に否定したが、ローマンは純粋に距離適性の観点から貢献度を明らかにした。

 ローマンは自著『ドサージュ:血統と能力』を2002年に出版した。ローマンの公式化は多くの生産者に評判が良く、ウェブサイト(www.chef-de-race.com/index.html)で見ることができる。

 ヴュイエ方式そのものは歴史上、生産方式に関するこれまで最も長期で最も厳格なフィールドテストに持ちこたえたと言っても間違いないだろう。アガ・カー ン3世は同時代で最も成功した有力な欧州の生産者である。彼の孫であるカリム・アガ・カーン4世も祖父と同様に優れた生産者であることを、自身が生産した 3歳牝馬ザルカヴァ(Zarkava)で2008年凱旋門賞(G1)を制することで実証した。

 アガ・カーン3世が1920年にヴュイエ方式(ドサージュ・システム)を専有化して以来、アガ・カーン生産牧場のその後の調査結果が公表されていないの で、同時代の生産者たちはヴュイエ方式を利用することができなくなった。しかし、ヴュイエの最初の刊行物は閲覧可能であり、彼の方式は簡単な数式なので、 それは容易にコピーされ、恐らく改良さえされているだろう。

 ヴュイエは、両親は次の世代の個体に遺伝子の平均50%を伝えると推論したことは幸運もしくは賢明だった。

 すなわち、競走馬を12代遡れば4,096頭の先祖が存在するが、ヴュイエ方式では、12代前の遺伝的影響は1点に相当し、11代前は2点に相当し、 10代前は4点と続き、1代前では2,048点になる。従って、ゴルトンの法則と一致して、各代の両親はその子供にそれぞれ50%の遺伝的影響を与えるで あろうことを前提としている。

 そのため、例えば、ある血統が4代前と5代前でノーザンダンサー(Northern Dancer)が2回交配されているなら、この血統に対するノーザンダンサーのドサージュは384となる[256(4,096を、4代前の先祖の数を16 としてこの数で割る)+128(4,096を、5代前の先祖の数を32としてこの数で割る)]。血統をさらに遡れば重複が認められるであろうが、それぞれ の出現に応じて世代ごとに計算される数値を足すと最終的な数値になる。

 配合を評価する方法として、ヴュイエ方式は、配合によってきまる血統から算出される基礎種牡馬のドサージュ値が最優秀馬たちのドサージュの平均値(基準 ドサージュ)に最も近い場合、最良の配合であると仮定する。基本的にヴュイエ方式は、大半の生産者があまり科学的でない方法で行おうとすることを数量化し たものといえる。


調査による新しいアプローチ

 ヴュイエ方式に基づく方法を利用したいと考える現代の生産者にとって、問題は、(1) どの馬を基礎種牡馬―分かり易い「祖型(archetype)」という用語が使われることが多い―として用いるべきか、そして(2) ヴァロラとローマンの洞察をどのようにして組み込み、方法を改良するかという点である。

 2008年、筆者はオーストラリアを拠点とするシンタックス・ソフトウェアの経営者、サイモン・モリス(Simon Morris)と一緒に、最初の問題に取り組んだ。広く利用されているモリスの血統分析プログラム、テシオパワー(Tesio Power)で、血統におけるすべての先祖のドサージュを計算することはモリスにとって容易なことであった。

 利用できるこのソフトウェアツールを用いた次の段階はどのレースを選択するかである。我々は1984年以降の米国の競馬にだけ焦点を合わせ、すべてのブ リーダーズカップ競走、三冠競走、それにホープフルS(G1)、メトロポリタンハンディキャップ(G1)、ケンタッキーオークス(G1)、コーチングクラ ブ・アメリカンオークス(G1)およびアラバマS(G1)を選択した。競走を選択するにあたりその目標は、最初に過度に野心的なプロジェクトにしてしまわ ないよう、米国の競走の全領域を網羅することだった。

 その結果、318頭の勝馬がサンプルとなった。我々はテシオパワー・プログラムに各馬の血統を組み入れ、膨大な先祖種牡馬の中から、首尾一貫して最大数 の産駒を生産した様な重要な種牡馬および歴史的・感傷的などの様々な理由から、セントサイモン(St. Simon)ハーミット(Hermit)、ベンドア(Bend Or)を含む61頭の馬を選択し、それらの種牡馬に関する基準ドサージュを計算した。セントサイモン、ハーミットおよびベンドアはヴュイエが計算した最初 の数値の正当性を検証するために対象とした。その結果、表2に見られるように、これら3頭の馬の基準ドサージュは一貫してヴュイエの数値を下回っている。 実際、これは予測通りの結果だった。これら3頭の馬は、12代を過ぎると調査の対象にならない古い種牡馬は1925年の調査時より早く消え去るからだ。

 例えば、2007年アラバマSの勝馬レディジョアン(Lady Joanne)の12代血統において、セントサイモンの名前が幾つかの世代間隔をおいて157回現れ、“たった”264点が加えられただけだった。ただし その名前は彼女の血統で4代より上の世代の中で最も多く出現した先祖である。しかしながら、血統を16代前まで遡るなら、さらにセントサイモンが現れるの は195を下回らないことが分かる。レディジョアンに関するセントサイモンの16代前までのドサージュは336になる。

 表2に示されているように、サンプル318頭のセントサイモンの基準ドサージュは347である。レディジョアンから算出された数値と同じく、ヴュイエの 数値よりかなり小さい。12代のレベルの推移ということが部分的にその相違を説明するが、セントサイモンが20世紀初めの米国の血統表では欧州におけるほ ど傑出していないことは事実である。現在のサンプルの血統は大部分が米国馬のものであるので、彼の影響力は純粋に欧州のサンプルにおけるよりも確かに低 い。

 これらの要素に加え、セントサイモンが生まれたのは1881年という昔であるという事実にもかかわらず、同馬は現代の米国血統表における最も影響のある ファクターである。サラブレッドの熱狂的なファンにとって、ノーザンダンサーが実際に20世紀のサラブレッドの最も重要な先祖であることはそれほど驚くべ きことではない。その基準ドサージュは296で、ネアルコ(Nearco:279)、その現代の父系の直系のライバルであるミスタープロスペク ター(Mr. Prospector:256)およびネアルコの息子ナスルーラ(Nasrullah:243)がこれに続く。


カテゴリー別の基準ドサージュ

 表2の“全競走”欄の数値は、318頭すべての血統を反映している。これらの馬は北米で最も重要な多数の競走の勝馬であり、競走距離は様々であり、ター フおよびダート両方の競走を含んでいる。しかしながら、ヴァロラが最初に指摘したように、現代のサラブレッドはある意味で異なる適性に専門化された、異な るカテゴリーに分かれる。ヴァロラの時代から、その専門化は先ず競走距離における専門化(特に2マイル以上の競走は基本的にレーシングカレンダーから消え た)から、馬場(surface)と早熟性(precocity)に基づく専門化へと移ってきた。従って、現代の血統調査の問題は次の点である:血統分析 方式はその才能がこれらの新しい専門性を反映する馬の血統を区別できるだろうか?

 表2の“2歳馬競走”、“ターフ競走”、“外国の血統”および“米国ダートクラシックディスタンス”のタイトルがつけられた各欄は、必然的により小さな サンプル(母集団)に関してではあるが、その質問に対する肯定的な回答といえる。この4つの欄はオリジナル・サンプルを各タイプの競馬の勝馬を再分類して 算出したものである。

 例えば、2歳馬競走の欄は、BCジュヴェナイル(G1)、BCフィリーズ(G1)、ホープフルSおよびBCジュヴェナイル・ターフが含まれる。その欄の ゴシックの数値が示すように、特定の先祖、特にボールドルーラー(Bold Ruler)、ミスタープロスペクター、ネイティブダンサー(Native Dancer)およびナスルーラの影響が全体平均に対するよりも、2歳馬競走の勝馬に対して著しく大きい。これらの種牡馬の現在までの影響を考慮に入れる と、このことは驚くべきことではない。

 同様に、ノーザンダンサーの名前が主要なターフ競走の勝馬の血統および外国血統(輸入馬または両親が輸入馬:レースのカテゴリーは無視)で突出していることに驚く者はいないはずである。

 反対に、シアトルスルー(Seattle Slew)の名前はターフ競走勝馬の血統または外国血統には出現しないが、11/4マ イル以上の距離の米国ダートクラシックでの勝馬に与える影響は非常に大きい。フェアプレイ(Fair Play)からマンノウォー(Man O’ War)、ウォーアドミラル(War Admiral)に続く米国の最も優れた米国産スタミナ系統の数値がダートクラシックディスタンスの勝馬に関して著しく大きいことも同じように興味深い。

 最後に、どの方式でも適切なドサージュを決定するにあたり浮上する1つの問題は、新しい勢力、特に例外的な種牡馬の父馬が遺伝子プールを通してその影響 力を拡大するにつれて、血統の構造が急速に変わることである。このファクターは現代の特定の種牡馬への配合の集中化とシャトル・スタリオン構想によって一 層増大している。この何れもが繁殖用種牡馬の数を減少させ、はやりの血統への集中化を招いている。

 “過去10年間”という見出しが付けられた表2の最後の欄(1998年から2007年までのすべての競走の勝馬の結果)はその問題に符合する。この欄は 遥かに現代的な血統グループである。その欄における数(特に下線付き数値)は、“全競走”欄におけるよりも著しく高く、その血統に与える影響がまだ増大し ていることを示す。

 これらの名前の中で最も注目に値するのはミスタープロスペクターで、過去10年間のその数は同馬の“全競走”数値よりも50%ほど高く、他の先祖より高 い。ミスタープロスペクターのドサージュが長い目で見て確立するかどうか知る方法はないが、数値が現在の“全競走”数値よりも上昇する、少なくとも米国の ダート血統に関して上昇する可能性は高い。同様に、ヘイルトゥリーズン(Hail to Reason)およびシアトルスルーの影響もまだ増加している。

 さらに大きな馬サンプルを用いた表2の改良は明らかに有用だろう。人工馬場およびスプリント等のその他のカテゴリーが今後生産者にとって大きな関心事になるのは明らかである。

 これは現在どこの国でも利用可能なソフトウェアの長所のひとつである。生産者と血統研究家は彼ら自身のリストを作図し、彼ら自身のデータを編纂し、彼ら自身の個人的な結論に達することができる。

 

表2:米国馬における基準ドサージュ(1984-2007年版)

先祖 全競走 2歳競走 芝競走 外国血統 米国ダートクラシック
ディスタンス
過去10年間
Almahmoud 87 80 134 118 74 95
Bay Ronald 114 113 120 129 113 113
Ben Brush 81 84 58 44 89 80
Bend Or 171 169 159 151 176 150
Black Toney 76 72 66 56 85 74
Blandford 121 118 124 140 124 125
Blenheim II 157 165 152 144 158 159
Blue Larkspur 100 106 86 60 106 105
Bold Ruler 157 200 82 34 128 126
Broomstick 60 63 43 32 66 65
Buckpasser 108 97 78 69 152 112
Bull Dog 114 122 90 62 118 122
Canterbury Pilgrim 128 123 142 159 125 127
Chaucer 130 119 149 169 123 128
Commando 73 76 55 41 83 72
Count Fleet 74 84 66 61 78 77
Discovery 105 115 75 50 103 107
Djebel 38 38 44 69 26 36
Domino 81 87 57 40 89 78
Fair Play 112 118 85 62 125 112
Fair Trial 37 28 65 86 27 34
Fairway 42 40 56 90 29 38
Gainsborough 139 125 173 192 134 134
Hail to Reason 94 96 111 82 95 123
Hermit 151 143 149 152 149 112
Hyperion 150 130 188 217 145 139
La Troienne 46 49 29 27 57 47
Mahmoud 118 114 103 90 136 120
Man O’War 116 112 89 68 139 113
Mr. Prospector 256 333 152 59 290 382
Mumtaz Begum 139 155 126 124 126 141
Mumtaz Mahal 107 114 95 90 103 109
Nasrullah 243 275 220 219 220 243
Native Dancer 197 228 188 149 205 218
Nearco 279 272 307 306 239 267
Northern Dancer 296 271 469 407 248 299
Peter Pan 69 74 59 52 77 69
Phalaris 178 166 196 215 170 181
Pharamond II 52 49 47 35 61 58
Pharos 184 172 206 215 171 187
Plucky Liege 118 123 102 81 123 123
Princequillo 151 158 166 105 148 142
Raise a Native 190 227 87 44 224 235
Ribot 75 40 68 43 94 69
Rough’n Tumble 41 34 9 0 54 52
Rough Shod II 13 1 37 30 17 15
Seattle Slew 120 117 0 0 124 184
Secretariat 87 115 36 26 66 102
Selene 128 118 137 142 131 125
Sir Gallahad III 85 89 64 47 94 81
Somethingroyal 67 76 55 48 55 73
Spearmint 130 134 126 110 130 132
St.Simon 347 333 370 392 342 329
Sundridge 117 117 112 110 117 117
Swynford 119 115 131 145 117 119
Teddy 190 201 163 149 198 198
The Tetrarch 90 97 87 92 86 89
Tourbillon 40 37 44 66 31 40
Turn-to 102 93 98 75 104 114
Ultimus 53 55 39 25 59 53
War Admiral 85 79 61 46 106 80
ゴシックの数値はカテゴリーの血統に著しく大きな影響を及ぼす種牡馬を示す;
“過去10年間”欄の下線付き数値はその影響力が依然として上昇している馬を示す。

By John P. Sparkman


[Thoroughbred Times 2008年12月13日「A new understanding of dosage」]


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