EnglishKorean
中文Francais
Japanese Stud Book


世界の競馬
海外競馬ニュース(毎週更新)
海外競馬情報
海外競馬場・日程
海外競走登録・遠征情報
世界の競馬および生産統計 アジア競馬会議・競馬連盟
軽種馬登録情報
軽種馬登録ニュース
統計データベース
軽種馬の登録の仕組み
登録のあゆみ
ユビキタス関連
マイクロチップについて
申請書類ダウンロード

モバイルサイト
TOPページ > 海外競馬情報 > ファーブル調教師、モハメド殿下と提携し事業再編(前編)(フランス)【その他】
海外競馬情報
2008年10月03日  - No.19 - 3

ファーブル調教師、モハメド殿下と提携し事業再編(前編)(フランス)【その他】


 競馬界に衝撃が走った。1987年から不動の最優秀調教師であるアンドレ・ファーブル(Andre Fabre 63歳)調教師が、厩舎施設の1つをモハメド殿下(sheikh Mohammed Al Maktoum)に売却し、そのまま殿下が同調教師にその厩舎を貸付けた。殿下はファーブル調教師の最大の馬主となろうとしている。そのあおりを受けて、ファーブル調教師の顧客である馬主の数人は所有馬の預託を打ち切られ、残りの馬主も預託頭数を減らされる。

 数日前から流れている噂について、ファーブル調教師は8月中旬沈黙を破り、ジュール・ド・ギャロ(Jour de Galop 競馬関係者向けの日刊オンラインジャーナル)に、「モハメド殿下から、私が所有する大きい方の施設で100馬房を有するロスチャイルド厩舎施設を買収したいという申出がありました。この買収により、私の事業は大きく前進します。モハメド殿下は私の最大の馬主となり、今年末から私は30頭あまりの2歳馬の調教を任され、約70頭の有望な1歳馬を迎え入れます」と投稿した。

 ファーブル調教師は、このような決定をした理由について、「この決定は私にとっては転機となるものです。その主な理由は次の通りです。現在のような調教、競走番組、競馬の状況では、質の良い調教を行うことが難しいのです。しかし、私はこのような状況に甘んじるつもりはありません。今回の事業再編はその帰結です」とコメントした。

 このことが、シャンティイ、メゾン=ラフィット、その他の調教場を駆け巡り、大きな話題となっている。

 ファーブル調教師は、パリ地区の競馬と地方の競馬を対比しながら、優良馬よりも低質馬や凡庸馬が不当に優遇されており、フランス競馬は平凡なものとなる恐れがあると強調し、シャンティイが本拠の厩舎は衰退していると述べた。同調教師の事業の再編成は、根本的な問題および戦略に結びつくと囁かれている。

 この事業再編には、実利的な理由があるように思われる。63歳になるファーブル調教師は約20年間フランス競馬界のトップに君臨し、この数年で250頭の管理馬持つまでになった。このシャンティイの達人は、伝統あるロスチャイルド厩舎をモハメド殿下に売却するというチャンスを掴んだ。モハメド殿下は、100頭あまりの競走馬をロスチャイルド厩舎に入厩させ、ファーブル調教師にその管理を要請したが、調教事業ではよくある“専属”の調教師になることを依頼したわけではない。ファーブル調教師はこれを受け入れた。同調教師は、高度な調教を続ける方針に変わりはなく、モハメド殿下がその手段を与えてくれるものと理解している。

 これまでもファーブル調教師は、自身の厩舎にヨーロッパおよび世界で最も重要な馬主の競走馬を巧みに共存させ、常に主導性を発揮してきた。モハメド殿下との関係は、15年ほど前に殿下がさまざまな調教師の厩舎から優良馬を集めてゴドルフィン社(Godolphin)のサイード・ビン・スルール(Saeed Bin Suroor)厩舎を軌道に乗せたときこじれてしまった。そしてその後は優良馬の引き抜きという事態を回避してきたが、同調教師は今では受け入れる覚悟をしている。今後シャンティイの達人は、自身が調教した馬がゴドルフィン行きになるというリスクを冒しながらも、マクツーム一族のカードを優先し、徹底的に勝負を楽しむだろう。そして、他の馬主のシェアは一貫して減っていくだろう。

 この事業再編に関する残る疑問は、競馬界が注目する疑問である。それは、ファーブル調教師は今回の事業再編により、2008年12月末に22年連続で最優秀調教師となれるだろうか?

 平地シーズンが4ヵ月過ぎた現在、ファーブル調教師の管理馬の獲得賞金総額は307万2000ユーロ(約4億9152万円)で、ジャン=クロード・ルジェ(Jean-Claude Rouget)調教師の獲得賞金総額330万7000ユーロ(5億2912万円)にリードされている。

ファーブル調教師の厩舎施設

 ファーブル調教師は、2つの厩舎施設を運営している。1つは100の馬房を持つロスチャイルド厩舎施設で、もう1つはそれより少し小さいフラヴィアン厩舎施設である。ファーブル調教師は優良な雇用者であるとの評判を得ている。彼はシャンティイの調教における最大の雇用者であり、3頭につき1人の従業員を割り当てており、その組織はとりわけ管理職の水準において完璧である。優秀な人材を結びつけておくために、進上金[注訳:収得賞金額の4%]は言うまでもなく魅力的な給与を支払っている。

 他方、フランスギャロ(France Galop)は馬主たちには、シャンティイで調教されている馬に対する分担金[1頭につき毎月平均税込みで75ユーロ(約1万2000円)]を課しているほか、シャンティイで調教された馬が勝利した場合に賞金の1%を徴収している。

 フランスギャロの公式サイトによれば、2008年8月現在、ファーブル調教師の厩舎には170頭あまりの競走馬がおり、馬主は約30名(社)である。主要な馬主とその頭数は以下のとおりである。

 ヴェルテメール兄弟は2006年にファーブル調教師の馬主に加わった。アガ・カーン殿下(S.A. Aga Khan)とファーブル調教師の関係は、殿下が故ジャン=リュック・ラガルデール(Jean-Luc Lagardere)氏の競走馬を買収した後数年にわたり協力関係にあったが、昨冬決裂した。

モハメド殿下(sheikh Mohammed Al Maktoum 30頭)
アブドゥラ殿下(prince Khalid Abdullah 27頭)
ヴェルテメール兄弟(les freres Wertheimer 2頭)
ド・ムーサック家(la famille de Moussac 13頭)
ヴォン・ウルマン家(les Von Ullmann 10頭)
ファーブル夫人(Mme Fabre 9頭)
クールモア牧場(Coolmore 9頭)
アメルランド牧場(Gestut Ammerland 6頭)
ラ・ペレル牧場(le haras de la Perelle 6頭)
メイフェア牧場(Mayfair Stud 5頭)
エドゥアール・ド・ロスチャイルド(Édouard de Rothschild 4頭)

2009年の展望

 今後、ロスチャイルド厩舎施設はモハメド殿下に買収され、所有権が移転する。モハメド殿下の100頭もの所有馬がここに入厩し(3歳馬30頭と2歳馬70頭)、同調教師が管理することになる。フラヴィアン厩舎施設については、同調教師は2〜3歳馬のなかから一定数の管理馬を“選別する”。競走引退後に種牡馬となって価値が高まる見込みのある牡馬が優先されるだろう。

 預託契約を維持する“選ばれた”馬主は、アブドゥラ殿下、ヴェルテメール兄弟、ヴォン・ウルマン男爵、サウジアラビアの新厩舎S.K.A.S.(サウジアラビアの王様の息子の1人により所有)、そしてエリザベット夫人である。

君臨と輝かしい成績

 法学士のアンドレ・ファーブル調教師の競馬人生には、いくつかの変遷がある。障害競走のアマチュア騎手として成功し、その後に同分野でプロの騎手となり、1978年にメゾン=ラフィットで障害競走の調教師として開業した。6年間のうちパリ大障害を4回制した後、1983年末に平地競走に専念することになった。

 1984年から、ファーブル調教師はフランスにおいて513頭のグループ競走優勝馬を輩出した。そのうち、87頭がG1競走の優勝馬である。そして、凱旋門賞で7回優勝するという記録も打ち立てた。外国における多くのG1競走の勝利の1つは、渇望していたダート競走のブリーダーズカップ・クラシック[1993年のアルカング(Arcangues)]の勝利であり、欧州の調教師として初めてこの競走を制した。その独特の受賞リストには、アスコット競馬 場で開催のキングジョージVI&クイーンエリザベスSを含むいくつかのイギリスのクラシック競走と2回のアイリッシュ・ダービー、ドバイ・シーマクラシック、ブリーダーズカップ・ターフがある。

 ファーブル調教師は金銭面では、2005年フランスで管理馬が670万ユーロ(約10億7200万円)以上を獲得し、最高のシーズンを迎えた。同調教師は、1992年と1993年に年間獲得賞金が550万ユーロ(約8億8000万円)となり、90年代の終わりにすでに頂点を極めていた。しかもその当時、賞金には国からの補助はなかった(2000年代初めから適用)。ファーブル調教師の管理馬数は21世紀に入って大幅に減少し、特に2001年と2002年はそれぞれ僅か100頭ほどしか出走しなかった。

 フランスにおける同調教師の重賞競走での初勝利は1983年3月エクスビュリー賞でのイムヤール(Imyar)であり、G1競走での初勝利は1984年4月フランス2000ギニーでのシベリアンエクスプレス(Siberian Express)である。

 外国における同調教師のG1競走での初勝利は1986年6月コロネーションカップでのサンテステフ(Saint Estephe)である。

最優秀調教師としての21年間

出走馬数 競走数 勝鞍数 獲得賞金
1987 110 495 86 287万2055ユーロ(約4億5953万円)
1988 131 460 134 315万6807ユーロ(約5億509万円)
1989 161 531 116 440万5334ユーロ(約7億485万円)
1990 164 555 106 344万7390ユーロ(約5億5158万円)
1991 176 630 145 452万3932ユーロ(約7億2383万円)
1992 169 576 139 563万1512ユーロ(約9億104万円)
1993 175 584 148 551万6825ユーロ(約8億8269万円)
1994 178 562 131 510万8063ユーロ(約8億1729万円)
1995 183 557 138 506万9608ユーロ(約8億1114万円)
1996 186 522 103 353万4149ユーロ(約5億6546万円)
1997 201 566 155 527万7480ユーロ(約8億4440万円)
1998 168 398 101 363万8851ユーロ(約5億8222万円)
1999 152 442 101 360万6852ユーロ(約5億7710万円)
2000 128 393 101 339万3461ユーロ(約5億4295万円)
2001 103 282 70 269万8561ユーロ(約4億3177万円)
2002 103 333 76 290万7158ユーロ(約4億6515万円)
2003 121 399 98 364万9670ユーロ(約5億8395万円)
2004 145 515 103 442万2170ユーロ(約7億755万円)
2005 150 545 148 675万4940ユーロ(約10億8079万円)
2006 158 494 124 608万3700ユーロ(約9億7339万円)
2007 187 626 150 589万5895ユーロ(約9億4334万円)
2008 116 353 69 306万7640ユーロ(約4億9082万円)

2008年は8月27日までの獲得賞金

モハメド殿下のフランスへの復活

 シャンティイの最も名高い厩舎施設の1つを買収することで、モハメド殿下のフランス競馬への華々しい復活が始まる。現在、フランスにいる同殿下の所有馬のうち約30頭はファーブル調教師に、その他はアンリ=アレックス・パンタル(Henri-Alex Pantall)調教師に預けられている。所有馬の数は、シャンティイで今後数ヵ月で3倍になるだろう。ドバイの指導者であるモハメド殿下は、最近のドーヴィルでの1歳馬セールにおいて、ダーレー社名義で500万ユーロ(約8億円)で15頭を購入し、最も積極的な購買者であった。

 イギリスでは、モハメド殿下の所有馬は、ジョン・ゴスデン(John Gosden)調教師が35頭(そのうち25頭が同殿下の配偶者ヨルダンのハヤ皇女の勝負服で出走している)管理しており、そのほか、マイケル・ジャーヴィス(Michael Jarvis)調教師、マーク・ジョンストン(Mark Johnston)調教師、ミック・シャノン(Mick Channon)調教師、デーヴィッド・ロダー(David Loder)調教師が管理している。ロダー調教師は90年代半ば、モハメド殿下から5年間貸与されたエヴリー競馬場で2歳馬の育成を任されていた。

 モハメド殿下にとって最も重要な組織であり、またドバイの地位を高めるためのゴドルフィン社の名義で、ヨーロッパに約200頭いると確認されている競走馬は、ニューマーケットに入厩しており、サイード・ビン・スルール調教師の手厚い管理に委ねられている。

シャルル=アンリ・ド・ムーサック氏「予想よりもずっと早い」と述べる

 他の馬主たちと同様、シャルル=アンリ・ド・ムーサック(Charles-Henri de Moussac)氏は先週、ファーブル調教師から選別結果を予告された。同氏の父ポール・ド・ムーサック(Paul de Moussac)氏により繁栄した同家の勝負服のもと、ファーブル調教師はトランポリーノ(Trempolino)で1987年に初めて凱旋門賞を制すことができた。メズレー牧場(haras du Mézeray)のもう1頭の管理馬スボティカ(Subotica)はその5年後、同じく凱旋門賞を優勝し、同牧場の獲得賞金を倍増させた。

 「ファーブル調教師は事業再編を通告してきました。彼にとっては時宜にかなっているのでしょう。いずれは“ファーブル以降をどうするか”について考えざるを得なくなると分っていましたが、それがこんなにも早くなるとは思っていませんでした。私たちは彼の厩舎に、約15頭預けており、牝馬も多く含まれています。これから年末にかけて、歴史のページがめくられます。ファーブル夫妻(アンドレとエリザベット)は、 私たちに馬主としてのとても大きな喜びを与えてくれましたし、私たちのメズレー牧場の収支も大幅に黒字でした。ファーブル調教師は、私たちの生産事業のイメージ向上に貢献しました。彼には1歳馬をまったく預託できず、また2歳馬と3歳馬は年末にかけて退厩しなければならない今、新しい方針を立てなければなりません。これは、私たちには大きな計画になります。まだ勝つべき競走はありますし、受賞リストにメズレー牧場の名前を刻むべきクラシック競走があります。私たちはファーブル氏に代わる調教師とともにチャレンジを続けます」。

By François Hallopé
(1ユーロ=約160円)

[Paris Turf 2008年8月30日「Andre Fabré: la nouvelle donne」]

次号(20号)には「ファーブル調教師、モハメド殿下と提携し事業再編(後編)(フランス)」を掲載


上に戻る