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海外競馬情報
2007年03月09日  - No.5 - 6

サラブレッド取引における目にあまる違法行為(イギリス)【生産】


 マクツーム一族(Maktoum family)の最古参かつ最上位のアドバイザーの1人であるマイケル・グッドボディ(Michael Goodbody)氏は、サラブレッド業界の「目に余る違法行為」に注意を喚起して、業界の暗部にスポットライトを当てた。

 故シェイク・マクツーム殿下に25年間仕え、最近までは同殿下が世界規模で経営していたゲンズボロー・スタッド(Gainsborough stud)の場長をごく最近まで務め、11月に引退した同氏は、個々の事例についての発言は差し控えた。

 しかし、疑う余地のない情報源から出た発言は、イギリスとアイルランドのサラブレッド業界だけでなく、サラブレッド業界全体に衝撃を与えるものと思われる。

 同氏は、「私は、多年にわたりヨーロッパとアメリカの両方でサラブレッドの購買に携わってきました。この間、露骨な違法行為を目にしてきました。このような行為は、サラブレッド業界の損になるだけです」と述べている。

 購買者が人為的につり上げられた金額を支払い、リベートを要求され、またサラブレッド売買仲介業者が買い手と売り手の双方を代理しているなどのうわさが広まっていたが、とりわけイギリスにおいて世間の注目を引いた裁判事例を受けて、サラブレッド仲介業者協会(Federation of Bloodstock Agents)の支援のもとに導入された倫理規定(code of ethics)が、サラブレッド取引を透明にするために役立ったと一般的に考えられていた。

 しかし、グッドボディ氏の発言は、このようなぬるま湯的な意識をこっぱみじんに打ち砕くものと思われる。

 1月9日の夜にロンドンで開かれた表彰式夕食会でサラブレッド生産者協会(Thoroughbred Breeders’ Association: TBA)の新会長として行った挨拶で、同氏は次のように述べた。「北米ではサラブレッド売買仲介業者およびセリ会社の倫理規定に関連して協議が行われています。また、我々が伝えているように、サラブレッド取引における違法行為に関しての訴訟が継続しています」

 「現段階で訴訟の結果は何とも言えませんが、重要なことは、サラブレッド取引で違法行為があったという訴えがあっただけで、サラブレッド業界の公正性大きく損なわれます」。

 同氏は、サラブレッド取引のシステム全体が開放的でつけ込まれやすいため、早く国際標準の取引倫理規定を導入しなければならないと述べた。

 また、「サラブレッド業界への新規参入者と従来からサラブレッド業界にいる人々に対する適切な助言・配慮および、トラブルが生じないような金銭的保護が絶対に必要です」と付け加えた。

 金銭的保護の必要性は、ポール・ロイ(Paul Roy)氏の共感を得た。同氏は、クラシック競走の勝馬を所有し、投資銀行の経営者であり、新しく創設された英国競馬統括機構(British Horseracing Authority: BHA)の会長である。

 ロイ氏は、BHA会長としてサラブレッド業界の公正確保を最優先課題とする方針であり、サラブレッド業界の他のあらゆる部門も公正確保に前向きに取り組むという同氏の方針に従うことを期待している。

 1月9日に開かれたTBAの年次総会における挨拶で、同氏は次のように述べた。「競馬の規制機関としてのBHAにおいては、最高レベルの公正確保は引き続き最優先課題でなければなりません。しかし、公正は常に個人責任ありきです」。

 「公正は、競馬場だけでなくサラブレッド業界全体に、そしてサラブレッド取引業界内部にも存在することが必要です」。

 同氏はまた、次のとおり付け加えた。「金融業界では本人と代理人の関係は明確に区別されており、それぞれの行為に透明性があります」。

 「双方の代理人として行為する場合または取引の両当事者から手数料を受け取る場合、その事実は開示されなければなりません。金融業界と同じ情報開示がサラブレッド業界でも行われるべきです」。

 ロイ氏はさらに、サラブレッド取引に関する倫理規定は“見直されかつ改定される”べきであると説明し、「売り手と買い手の両方の適切な保護」について協議するため、TBAおよびセリ会社の代表と会合を持つことに同意した。

 ドンカスター・ブラッドストック・セールス(Doncaster Bloodstock Sales: DBS)社の社長ヘンリー・ビービィ(Henry Beeby)氏は、ロイ氏の会合申し出を受け入れた場合、DBSおよびタタソールズ(Tattersalls)社を代表して意見を述べると語った。

 同氏は、次のとおり付け加えた。「イギリスのサラブレッド業界とセリ市場の信頼性を高めるものは何であれ歓迎されるべきです。イギリスは、とりわけ相対取引と公開セリについて定めた倫理規定を率先して実施しました」。

 「倫理規定は、法的実効性を持っており、平易な英語で書かれていますが、我々はそれで満足してはいけません。DBSとタタソールズ社は、派生する問題であれ、それ以外の問題であれ、どの団体とも真剣に協力するつもりです」。

〔Racing Post 2007年1月11日「New TBA president condemns ‘blatant’ case of malpractice」〕


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