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TOPページ > 海外競馬情報 > 馬とヒトが共有する疾病の対処法(アメリカ)【獣医・診療】
海外競馬情報
2007年07月20日  - No.14 - 4

馬とヒトが共有する疾病の対処法(アメリカ)【獣医・診療】


 脊椎動物からヒトに伝染する疾病は、動物原性感染症(zoonoses)として知られている。動物原性感染症は、長年にわたり存在してきた。紀元前25年にウェルギウス(Virgil)は、炭疽(anthrax)が動物原性感染症であると説明した。炭疽は、3,500年前に発生した“エジプトの第五の災い(fifth plague of Egypt)”(訳注:聖書「出エジプト記」での人と家畜の大量死のエピソード)の原因であった可能性があり、または数千もの動物とヒトの死をもたらしたリフトバレー熱(Rift Valley Fever)であったかもしれない。動物とヒトが共有する疾病は、ヒトが動物と接触することにつきものである。

白癬症

 馬が管理者である人と共有する最も一般的な疾病は、白癬症(ringworm)とサルモネラ菌症(salmonella)である。

 白癬症は命取りにはならないが、大きな不快感をもたらす。この真菌感染症(fungal infection)はしばしば、栄養不良の動物または病気のために免疫力が減弱した動物に起きる問題である。真菌感染症は、感染した動物やヒトとの直接的接触を通じて伝染し、あるいは感染した動物が使用した馬具・用具から間接的に伝染することがある。

 馬における白癬の発症は、脱毛角化皮膚疾患(hairless, crusted skin lesions)により確認できる。患部は円形であったり、そうでないこともある。ヒトの場合、白癬菌の感染部分はかゆく、赤色を帯び、腫れ、角質化し、水泡ができて液体がしみ出ることがある。患部はしばしば、健常皮膚との境がはっきりしており、外側が濃い赤みを帯び、中心部分は通常の皮膚色である。

 真菌培養(fungal culture)は、感染を診断する唯一の確実な方法である。白癬症は、6〜12週間で自然に治癒することもあるが、自然環境中の真菌胞子(fungal spores)は数年間生存することもある。

 馬とヒトにおける真菌蔓延の防止には、薬用シャンプー・薬用スキンクリームを用いる。感染馬に使用される馬具・馬衣・用具の洗浄に特別の注意を払うべきである。

サルモネラ菌症

 ハグヤード馬事医学研究所(Hagyard Equine Medical Institute)のタッド・ティプトン(Tad Tipton)獣医学博士は、「サルモネラ菌は、自然発生する有機体でありふれたものであり、長期間生存します。サルモネラ菌は、ストレスを受けているか免疫力が減弱している馬やヒトに重大な影響を与えることがあります」と述べた。

 サルモネラ菌は、感染動物の排泄物を介して伝染する。鳥、げっし類動物(ネズミ等)、犬、猫が排泄物でサルモネラ菌を排出し、これが牧草、飼料、水または馬がなめるその他の物を汚染することがある。ヒトは、感染馬の馬房を掃除する際または水槽や飼料桶を洗う際に、サルモネラ菌に感染することがある。

 ティプトン博士は、「馬とヒトは、体内にサルモネラ菌を保有していても、ストレスが生じるまで悪影響を受けないことがあります。ストレスが生じた場合、免疫力が減弱して、馬やヒトは重い病気になることがあります」と述べた。

 馬・ヒトにおける活動性感染の最初の兆候は、胃腸の不快感と下痢である。馬は、疝痛の兆候を示すことがあり、牛糞のような水様下痢をすることがある。ヒトは、激しい腹痛、筋肉痙攣、嘔吐、下痢をすることがある。排泄物の検体は、間違って陰性と判断される可能性が高いため、常時複数回の検体試験が必要となる。

 サルモネラ菌の存在が確認された場合、直ちに治療することが重要である。これはサルモネラ菌の毒素が、蹄葉炎・敗血症など馬にとって極めて有害な問題を引き起こすことがあるためである。

 サルモネラ菌に感染した馬とヒトの治療は、まったく治療をしない場合から病院で集中治療する場合までさまざまである。治療には、静脈内輸液療法、馬の免疫系の反応時に治療するための抗生物質、ショックを軽減するための非ステロイド性抗炎症薬の投与や血漿療法が含まれる。しかし、サルモネラ菌の中には、一定の抗生物質に対して薬剤耐性を発達させていて、治療困難なものがある。

 サルモネラ菌保菌馬は、病気の兆候を示さないことがあり、排便のたびごとにサルモネラ菌を排出する訳ではない。このような馬を新しい厩舎や牧場に輸送することは、いっしょにサルモネラ菌を運ぶことを意味する。

 ミッドウェスト研究所(Midwest Research Institute)の上級生物学者デーヴィッド・フランツ(David Franz)獣医学博士は、サルモネラ菌保菌馬の輸送が、疾病が急速に伝播する主な原因だと考えている。同博士は、「動物の個体群は現在、かつてないほど集中し、以前よりも広範囲に、時には海外にも輸送されます。しかし、家畜産業に重大な経済的損害を引き起すおそれのある高伝染性生物因子の流入を防止するための技術的防御策はほとんどありません」と述べている。

 馬の国際輸送は、赤道の両側の繁殖サイクルに合わせて1年に2回、両半球を行き来する多くの一流シャトル種牡馬にとって避けがたい現実である。1月にドバイのレースに出走する馬は、年の後半にヨーロッパ・アメリカのレースに出走するために空輸される。競馬産業がますます国際性を高めてきた結果、馬を保護するために厳しい検疫が実施されている。

 しかし、馬に一般的に使用されている多くの抗生物質に耐性を有する日和見菌(opportunistic bacteria)の一種であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant sraphylococcus aureus: MRSA)を鼻腔に保有している馬は、MRSAに感染していない多数の馬に伝染させる可能性がある。また、このような場合、馬を世話するヒトと菌を共有する可能性もある。

MRSAに必要な警戒

 オンタリオ市にあるゲルフ大学獣医学部(University of Guelph’s Ontario Veterinary College)で臨床調査を担当するJ.スコット・ウィーズ(J. Scott Weese)准教授(獣医学博士)は、「海外輸送される馬に関しては厳格な検疫条件があり、腺疫や馬ヘルペスウイルスなどに罹っている馬の移動を制限しています。しかし、馬がMRSAに罹っているかどうかを確認するために鼻孔粘液採取(nasal swab)を行うことは、まだ共通の慣行になっていません」と述べている。同准教授は、全米馬開業獣医師協会(American Association of Equine Practitioners)の2006年総会のMRSA部会において共同発表者を務めた。

 多くの動物原性感染症と同じように、MRSAは馬とヒトにほぼ同じように影響を与える。馬とヒトは共に、MRSAを保菌することがある。つまり、馬とヒトは猛威の影響をまだ起こしていない病原体を保有することがある。しかし、MRSAを保菌しているヒトまたは馬が負傷するか、手術するか、他の病気のためにワクチンを接種した場合、通常の抗生物質治療に反応しない深刻な感染症が急に起きることがある。

 過去20年間で、MRSAはヒトの院内感染と死亡の主な原因となっている。一方、MRSAの感染馬が増えていることが過去10年間で確認されている。

 内科医の免許をもつウィーズ准教授は、次のように述べている。「私たちは、馬および馬の世話をするヒトに悪影響を与える特定株のMRSAを発見しました。MRSAを保菌するヒトの中には、一生の間わずかな影響しか受けないヒトもいますし、大半のヒトは体から急速にMRSAを排除します。馬も同じ現象が起こります。ヒトと馬の相違は、MRSAを保菌するヒトは特定の経鼻抗生物質や、必要な場合は全身用経口抗生物質または注射用抗生物質で治療できることです」。

 「馬の場合は、ヒトに比べて若干難しい状況にあります。馬は鼻腔が大きく、経鼻抗生物質をスプレーすることによって鼻腔を治療するのはかなり困難と思われます。また、ヒトが使うことのできる“切り札(big gun)”的な抗生物質はたくさんありますが、馬が使うことのできるものはありません。馬に下痢を起こす可能性のある抗生物質をあえて使用して馬を治療したいと思う者はいません」。

 同准教授は、サルモネラ菌やMRSAといったきわめて伝染しやすい細菌感染症に罹っている馬への正しい対処法は、常識的な感染症制御であると述べている。

 ウィーズ准教授は、「細菌感染症に罹った馬を他の馬から隔離しなければなりません。また、隔離された馬の世話をする者の数を制限し、これらの者に防護衣類(手袋、作業衣、長靴、靴カバー、マスク)を着用するよう義務付けるべきです。感染地域を離れる時は、防護衣類を脱いで手を洗わなければなりません。馬の鼻、とりわけMRSAに感染している馬は、バイオハザード(生物学的有害物)として扱われるべきです。これらの馬は、馬房の壁、バケツ、調教師のコートなど鼻に触れるあらゆるものにMRSAを放出します。これは仕方がないことです。調教師は、馬に安心感を与えるため、あるいは馬とある種の関係を維持するために、馬の鼻に触り、あるいは馬の顔をなでたいといつも思っています。調教師は他の馬と接触する前に、細菌感染症に罹った馬が触れた可能性のあるものを洗浄すべきです」と述べている。

危険にさらされる獣医師

 驚くべきことに、ウィーズ准教授とゲルフ大学のスタッフは、獣医師と助手にMRSA保菌者がかなりいることを発見した。多くの獣医師が馬を治療する目的で診療所から牧場へ赴くので、この状況はとりわけ重大である。

 ウィーズ准教授は、「特にMRSAが発生した場所で厳重な検査が行われるべきです。多くの場合、MRSAが定着したヒトは、MRSAを自力で体内から排出します。MRSAを保有していても、病気になることを意味しません。また、一生保菌者であることにもなりません」と述べている。

By Robin Stanback

〔Thoroughbred Times 2007年6月9日「Diseases shared by horses and humans」〕


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