TOPページ > 海外競馬ニュース > 米国競馬界のリーダー的存在オグデン・ミルズ・フィップス氏が死去(アメリカ)[その他]
海外競馬ニュース
2016年04月14日  - No.15 - 2

米国競馬界のリーダー的存在オグデン・ミルズ・フィップス氏が死去(アメリカ)[その他]


 "ディニー(Dinny)"という愛称で親しまれた米国競馬界のリーダー的存在オグデン・ミルズ・フィップス(Ogden Mills Phipps)氏は、長い闘病生活の末、4月6日にニューヨーク・プレスビティリアン病院で亡くなった。享年75歳。

 フィップス氏は米国のオーナーブリーダー一族の4代目であり、先代からの方針を引き継いで大きな成功を収めた。1995年最優秀古牝馬のインサイドインフォメーション(Inside Information)、その牝駒で2005年最優秀3歳牝馬のスマグラー(Smuggler)、1989年BCジュヴェナイル(G1)優勝馬リズム(Rhythm)、2002年BCジュヴェナイル優勝牝馬ストームフラッグフライング(Storm Flag Flying)などを生産・所有した。

 ストームフラッグフライングは、自家生産馬でBCジュヴェナイルフィリーズ(G1)を制したマイフラッグ(My Flag)の娘であることから、フィップス一族の生産事業において重要な意味を持つ。マイフラッグは、一族の伝説的なチャンピオン牝馬パーソナルエンスン(Personal Ensign 13戦13勝)の娘である。これらの馬はすべて、クロード・"シャグ"・マゴーヒー(Claude 'Shug' McGaughey)調教師に管理された。

 フィップス氏は従兄弟のスチュアート・ジャニー(Stuart Janney III)氏と共同で、2013年ケンタッキーダービー(G1)優勝馬オーブ(Orb 父マリブムーン)も所有した。オーブは現在、フィップス一族が長年親密な関係を築いてきたクレイボーン牧場(Claiborne Farm ケンタッキー州)で供用されている。

 同氏は欧州においても、1980年にクイックアズライトニング(Quick As Lightning)で英1000ギニー(G1)、ポッス(Posse)でセントジェームズパレスS(G1)とサセックスS(G1)を制し、オーナーブリーダーとして成功を収めた。

 フィップス氏は傑出したオーナーブリーダーであっただけではなく、米国競馬界のリーダー的存在であった。1983年から2015年夏まで米国ジョッキークラブの会長、1976年から1983年までNYRA(ニューヨーク競馬委員会)の会長を務めた。ジョッキークラブ会長の在任期間は史上最長であった。

 競馬産業への多大な貢献が認められ、フィップス氏には2015年8月にジョッキークラブからメダルが贈呈された。1978年にはエクリプス賞の功労賞、2002年にはサラブレッド馬主・生産者協会(Thoroughbred Owners and Breeders Association)から産業功労賞を授与された。

 フィップス氏は2014年IFHA(国際競馬統括機関連盟)年次総会(通称パリ会議)において、一族にとっての競馬の重要性や競馬から得る喜びについて、こう語った。

 「簡単に言えば、私たちの事業は、多くの喜びを与えてくれるスポーツに還元する手段であると考えています。これはおそらく父から受け継いだものであり、この責任感と情熱を子供たちに植え付けるよう努めています」。

 フィップス氏はブリーダーズカップ社(Breeders' Cup Ltd.: BCL)とNTRA(全米サラブレッド競馬協会)の理事会メンバーでもあった。

 BCLの理事長兼CEOのクレイグ・フレイヴェル(Craig Fravel)氏は声明においてこう語った。「BCLと競馬界は、私たちの友人フィップス氏のご家族に対し心からお悔やみを申し上げます」。

 「オーナーブリーダーとしてのフィップス氏の偉業は比類ないものです。私たちはまた、フィップス氏が競馬界を正しい方向に導くために数々の貢献をしてくださったことや、競馬が不振に陥っているときに率直な意見をくださったことに感謝しています。彼はこの上なく寛大かつ親切で、真のスポーツマンでした。寂しくなります」。

 NYRAの理事長兼専務理事であるアレックス・ウォルドロップ(Alex Waldrop)氏はこう語った。「フィップス氏の逝去により、サラブレッド競馬界は大きな成功を収めたオーナーブリーダーを失っただけでなく、競馬に深い情熱を注いだリーダー、スポーツマン、支持者、擁護者であった人物を失いました」。

 フィップス氏はまた、一族が経営するベッセマートラスト社(Bessemer Trust)の会長を1994年の引退まで務めた。

 ニューヨーク生まれのフィップス氏の遺族は、妻のアンドレア、子供のケイス、ケリー、リリー、デイジー、サマンサ、オグデンである。娘のデイジー・フィップス・プリート(Daisy Phipps Pulito)氏がここ数年、日常的な牧場経営を取り仕切っている。

By Nancy Sexton

[Racing Post 2016年4月7日「US racing mourns death of Ogden Mills Phipps」]


上に戻る