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2015年11月05日  - No.44 - 1

メルボルンカップで女性騎手が初優勝(オーストラリア)[その他]


 11月3日に施行された2015年メルボルンカップ(G1・フレミントン競馬場)において、単勝オッズ101倍の最低人気馬プリンスオブペンザンス(Prince Of Penzance)は、女性騎手を背に歴史的勝利を収めた。

 10万1,015人の観衆は、最終コーナーで24頭の馬群が密集し、その後ミシェル・ペイン(Michelle Payne)騎手が騎乗するプリンスオブペンザンスの前が開いたとき、夢のような物語の誕生を目の当たりにした。中団から抜け出したペンタイア産駒(6歳せん馬)は、外側を走り、残り300メートルの地点から一番早く先行勢をとらえに行った。ペイン騎手は、栄光に向かってプリンスオブペンザンスに鞭を入れ、激しく追って、残り100メートルに差し掛かる前に先頭に立った。

 マックスダイナマイト(Max Dynamite)が、最後の1ハロン(200m)で急激な追い込みを開始し、ゴール直前でプリンスオブペンザンスに迫ってきたので、この勝利は最後まではっきりしなかった。しかし、マックスダイナマイトは優勝馬をとらえることができず、1/2馬身差の2着となり、クライテリオン(Criterion)がその1馬身1/4差の3着となった。

 1番人気のフェイムゲームは、最終コーナーで大外を回り距離をもたせることができず、最後の直線では上位勢にその姿はなく13着に終わった。

 マックスダイナマイトに騎乗したフランキー・デットーリ(Frankie Dettori)騎手は、不注意騎乗のため、2万豪ドル(約170万円)の過怠金と1ヵ月の騎乗停止処分が科された。同騎手は残り400mの地点でグランドマーシャル(Grand Marshall)の進路を妨害したとされており、ジム・キャシディ(Jim Cassidy)騎手は危うく落馬しそうになった。デットーリ騎手は謝罪し、制御しきれずにこのようなことが起きてしまったと語った。

 今年のメルボルンカップ(3200m)の勝ち時計は3分23秒15である。プリンスオブペンザンスは総賞金440万米ドル(約5億2,800万円)のメルボルンカップを制してG1初勝利を挙げた。10月24日には、昨年優勝したムーニーバレーゴールドカップ(G2)で2着となっていた。

 不屈の精神と鋭いペース判断で知られるペイン騎手は、ダレン・ウィアー(Darren Weir)厩舎のプリンスオブペンザンスの過去23戦のうち22戦に騎乗し、7勝を挙げている。ペイン騎手はプリンスオブペンザンスがメルボルンカップで勝てると常に信じてきた。そして、同馬は155年のメルボルンカップ史上最低人気馬の1頭としてそれを証明した。

 ペイン騎手は、レース後のインタビュー(www.abc.net.au)で次のように語った。「プリンスオブペンザンスはタフなのでいつも尊敬していました。メルボルンカップを勝てる馬だと考えていました。強い精神力を持っていることは分かっていました。彼はいくつかのレースで、優勝しなくてもまるで優勝したようにゴールしていました。信じられないような馬です。騎手であることで、他の人々以上にそれを感じることができました。2週間前、ウィアー調教師に“これまで乗った中で最高の馬で、メルボルンカップで優勝できると思う”と伝えました」。

 ニュージーランド産のプリンスオブペンザンスの生産者は、リッチヒルファーム(Rich Hill Farm)と吉田勝己氏のノーザンファームである。母はミスタープロスペクター(Mr. Prospector)の牝馬ロイヤルサクセサー(Royal Successor)で、キーンランド9月1歳セールで吉田勝己氏に50万米ドル(約6,000万円)で購買された。祖母(2代母)のオンリーロイヤル(Only Royale)はヨークシャーオークス(G1)で2勝した。

 プリンスオブペンザンスは、2011年にニュージーランドブラッドストック社(New Zealand Bloodstock)のプレミア1歳セール(カラカ開催)に上場され、クイーンズランドのエージェントであるジョン・フート(John Foote)氏により5万NZドル(約400万円)で購買された。そして、ジョン・リチャーズ(John Richards)氏などの馬主グループにより所有されている。何人かの共同馬主がメルボルンカップの際に男性騎手への乗り替わりを望んだ時、リチャーズ氏はウィアー調教師とともにペイン騎手を支持した。

 メルボルンカップデーの興奮状態の後、競馬界の多くの人々は、ペイン騎手が競馬界を“性差別主義”と言うのを耳にした。

 「女性には十分な力がないと思われていたので、誰に対しても“勝手にしろ!”と言いたかったです。しかし、世界を納得させることができました」とペイン騎手は語った。

 ウィアー調教師のバララット調教場(Ballarat stables)で10年近く働いているダウン症の兄スティーヴン・ペイン(Steven Payne)氏ほど、彼女の勝利を誇りに思った者はいないだろう。スティーヴン氏は先週の枠順抽選会で1番を引き、彼女を喜ばせていた。

 ペイン騎手は次のように付言した。「兄とこの経験を共有したことは素晴らしいことです。なぜなら、私たちは10人兄弟の一番下で、仲良く育ったからです。私たちはよく2人で遊びましたので、兄と一緒にこの喜びを分かち合えたことは最高です」。

By Myra Lewyn
(1豪ドル=約85円、1米ドル=約120円、1NZドル=約80円)

[bloodhorse.com 2015年11月3日「Michelle Payne Makes Melbourne Cup History」]


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