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2013年06月13日  - No.24 - 1

スティーヴンス騎手、劇的復帰後のクラシック初勝利(アメリカ)[その他]


 ゲイリー・スティーヴンス(Gary Stevens)騎手(50歳)は5月18日、古くからのパートナーであるD・ウェイン・ルーカス(D. Wayne Lukas)調教師とのコンビで、オクスボウ(Oxbow)に騎乗して総賞金100万ドル(約1億円)のプリークネスS(G1)で驚きの勝利を収め、自身の劇的復帰後のクラシック競走優勝を果たした。

 ピムリコ競馬場の11万7,203人の観衆に、スティーヴンス騎手がオクスボウ(単勝オッズ16倍)で巧みな先行策をライバルたちに披露した一方、ケンタッキーダービー馬オーブ(Orb)は精彩を欠き4着に終わり、米国三冠達成の夢は少なくとも1年後の世代に持ち越されることとなった。

 オーサムアゲイン(Awesome Again)産駒でケンタッキーダービーでは6着だったオクスボウは、イッツマイラッキーデイ(Itsmyluckyday)とマイリュート(Mylute)を大きく引き離して優勝した一方、1番人気馬オーブはスタートから動きが鈍くレース終盤でも脚が伸びず、4着に終わった。

 コメンダブル(Commendable)で優勝した2000年ベルモントS(G1)が直近のクラシック勝利だったルーカス調教師は、「クラシック勝利は久しぶりですが、いつもいいものです。ゲイリーは、さすが殿堂入り騎手の騎乗ぶりでした」と語った。

 今年のケンタッキーダービーが伝統のあるグループの勝利だとすれば、プリークネスSは老舗厩舎の勝利である。スティーヴンス騎手は今年の1月に7年間のブランクを経て現役復帰し、ルーカス厩舎の馬で勝利を挙げたが、今回のプリークネスS優勝は伝説的な同調教師にとって6回目の優勝となる。

 長い雌伏のあとで再びスポットライトを浴びた77歳のルーカス調教師は、三冠競走14勝の新記録を打ち立て、これは“サニー”ジム・フィッツシモンズ(‘Sunny’ Jim Fitzsimmons)調教師を1勝上回る記録となる。一方スティーヴンス騎手にとっては、1997年シルヴァーチャーム(Silver Charm)、2001年ポイントギヴン(Point Given)に続く3回目のプリークスネスS優勝であり、これまでに三冠競走を9回制しているが、その中には、ルーカス調教師とコンビで勝利した1988年のウィニングカラーズ(Winning Colors)、1995年のサンダーガルチ(Thunder Gulch)の優勝を含む3回のケンタッキーダービー制覇がある。

 1999年にサー・マイケル・スタウト(Sir Michael Stoute)厩舎のお抱え騎手として英国に4ヵ月滞在したことで英国に多くの友人を持つスティーヴンス騎手は、「7ヵ月のブランクを経て50歳でクラシック競走を優勝したことは本当にうれしいことです」と語った。

 そして、「私が復帰を果たしたのはまさにこのようなクラシック競走を勝つためで、しかもウェインのために勝てたことは本当に特別なことです」と付け足した。なお同騎手は、8月10日にアスコット競馬場のシャーガーカップに騎乗する予定である。

 スティーヴンス騎手は次のように続けた。「ウェインは、私が1月に現役復帰したときに最初に声を掛けてくれた1人で、騎乗してほしい馬がいると言いました。それがオクスボウでした。オクスボウはケンタッキーダービーで素晴らしいパフォーマンスを見せた後でもあまり評価は上がりませんでしたが、私たちは自信を持っていました」。

 スティーヴンス騎手は、最初にスタンド前を通りすぎたときにオクスボウをサンタアニタダービー勝馬ゴールドセンツ(Goldcents)よりも先行させ、他の8頭のライバルはスピードの余力があるように見えたが、何とかスローペースを作りリードした。オーブは内埒沿いで馬群の中に入ってしまったが、これがチャンスを掴むのに予想以上に不利に働いたかもしれない。なぜなら、この日に行われていたレースでコースの内埒沿いは遅かったからだ。

 スティーヴンス騎手は次のように語った。「半マイル標識に差し掛かったときに、“まさか?本当に起こっていることなのか?”と思いました。その時点で勝負はついたも同然です。そこまで余力を残して散歩していたようなものでした」。

 イッツマイラッキーデイとマイリュートは追いかけてきましたが、どちらもオクスボウを捉えられないように見えた。オクスボウは1馬身3/4差をつけてゴールした。2着馬と3着馬の着差は1/2馬身であった。1分57秒54は、1961年プリークネスS以降最も遅いタイムであった。

 オクスボウは、名門カルメットファームCalumet Farm)の8頭目となるプリークネスS勝馬で、赤と青の勝負服を背負ってこのレースを制した馬には、1941年と1948年にそれぞれ三冠を達成したワーラウェイ(Whirlaway)とサイテーション(Citation)などがいる。1990年代の経営失敗により、牧場は以前の姿の残像だけとなり、1992年には勝負服さえもブラジルの同業者に売られてしまった。カルメットファームの馬は現在、黒と金の勝負服で出走しているが、これは、隠遁生活を好むタバコ会社経営のブラッド・ケリー(Brad Kelley)男爵の勝負服である。

 ルーカス調教師は、「ゲイリーのためだけではなく、カルメットファームを蘇らせるために尽力したケリー男爵のためにも、私は幸せです。満足のいく勝利で、私は賞金を得ましたが、三冠馬誕生の可能性を台無しにしました。レースごとに馬場状態は異なり、勝ち時計もまったく違います。それらに合わせて、馬をレースに臨ませなければならないのです」と語った。

 オーブを管理するシャグ・マゴーヒー(Shug McGaughey)調教師は、「がっかりしていますが、レースの結果は分からないものです。絶好のチャンスでした。オーブの単勝オッズは3-5(1.6倍)だったが、4着に終わりました。このようなチャンスをものにできなくてがっかりしていますが、今回の同馬の走りは、ケンタッキーダービーの2週間後にしては素晴らしいものでした」と語った。 
 

2013年プリークネスS(G1)の結果
1  着 オクスボウ(Oxbow) 154-10(16.4倍)
2  着 イッツマイラッキーデイ(Itsmyluckyday) 17-2(9.5倍)
3  着 マイリュート(Mylute) 109-10(11.9倍)
馬  主:カルメットファーム(Calumet Farm)
調教師:D・ウェイン・ルーカス(D. Wayne Lukas)
騎  手:ゲイリー・スティーヴンス(Gary Stevens)
生産者:コルツネック牧場(Colts Neck Stables)
着  差:1馬身3/4、1/2馬身 

  

  ゲイリー・スティーヴンス騎手 D・ウェイン・ルーカス調教師
北米での獲得賞金 2億2,300万ドル(約223億円) 2億6,300万ドル(約263億円)
北米での勝利数 4,908勝 4,675勝
三冠競走での勝利 9勝
ケンタッキーダービー3勝、
プリークネスS 3勝、
ベルモントS 3勝  
14勝
ケンタッキーダービー4勝、
プリークネスS 6勝、
ベルモントS 4勝 

 
By Nicholas Godfrey
(1ドル=約100円)

[Racing Post 2013年5月20日「Stevens caps comeback with Classic triumph」]


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