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海外競馬ニュース
2007年06月21日  - No.24 - 3

アナボリック・ステロイドの投与禁止が確認される(イギリス)[獣医・診療]


 競馬監理機構 (Horseracing Regulatory Authority: HRA)は6月5日、アナボリック・ステロイドは英国競馬では包括的禁止の対象であることを改めて発表した。この発表は、ロイヤル・アスコット開催への出 走を目指しているガイ・ウォーターハウス(Gai Waterhouse)調教師の管理馬がオーストラリアでアナボリック・ステロイドに陽性反応を示したことを受けて行われたものである。

 競馬統括機関の中には、調教時のアナボリック・ステロイド投与を禁止せず、レース後の検体検査で陽性になった場合のみ、過怠金を科すかまたは競馬関与を禁止しているところがある。

 ウォーターハウス調教師が管理しているパーフェクトリーポイズド(Perfectly Poised 2歳)は、4月18日にキャンタベリー競馬場で行われたレースで2着に入線したあと、薬物検査でボルデノンの陽性反応を示した。ボルデノン は、獣医師が食欲のない馬に投与する補助剤で、腎臓のエリスロポエチン(赤血球の生成を助けるホルモン)の放出を刺激する。

 ウォーターハウス調教師、ロドニー・ノーサム(Rodney Northam)調教助手、あるいは馬主であるダーレー・オーストラリア(Darley Australia)のいずれの監視下にあったときに当該2歳牝馬にボルデノンが投与されたのかは定かでない。

 なお、同調教師の管理馬ベントレービスケット(Bentley Biscuit)は、ニューマーケット競馬場で行われるキングズスタンドSとゴールデンジュビリーSに向けて調教中である。

 タニア・ラウズ(Tania Rouse)調教助手は、「ベントレービスケットは、ニューマーケット競馬場でキャンターをしており、きわめて順調です」と述べている。

 これまでにも、昨年のキングズスタンドSに優勝し、ゴールデンジュビリーSで3着に入ったテイクオーバーターゲット(Takeover Target)が薬物検査でステロイド(17-alpha-hydroxyprogesterone hexanoate)の陽性反応を示したため、香港スプリントへの出走を取り消され、物議を醸したことがある。ステロイドは香港では競走の際に馬の体内に あってはならない薬物とされている。

 テイクオーバーターゲットは、6月12日に連勝を狙ってキングズスタンドSに出走予定だが、ジョー・ジャニアック(Joe Janiak)調教師は、4日後に行われるゴールデンジュビリーSへの出走も考えている。

 HRAの広報担当者は、アナボリック・ステロイドの投与が、ロイヤル・アスコット開催に出走予定のオーストラリア調教馬に特有の問題であるとの認識を示 し、「ステロイドは、英国競馬において全面的に禁止されています。馬がレース後に陽性反応を示した場合、調教師は懲罰委員会から審問されることになりま す。調教師は、イギリスの競馬施行規程を知っていなければなりません」。

 「禁止薬物に関するイギリスの規程は、包括的であるという点においてきわめて明確です。すなわち、ステロイドがイギリスの競馬において許可されていない のは明らかであり、どのステロイドが許可されていて、どのステロイドが許可されていないかという問題ではありません。なお、イギリスは定期的なレース前検 査を行っていませんが、将来実施される可能性があります」と述べた。

 HRAの上級獣医アドバイザーであるリン・ヒリアー(Lynn Hillyer)氏は、次のように述べている。「私たちがアナボリック・ステロイドを許容しない理由は、馬を過酷に調教するために投与される可能性がある ためであり、これは承認できないことです。競馬施行規程第239条は、アナボリック・ステロイド等の薬物について、検査の結果が陽性となった場合、競馬場 の内外いずれで採取されたものでも規制の対象となると極めて明確に規定しています。海外の調教師の管理馬がイギリスで出走する場合には、HRAのウェブサ イトをよく読むよう注意喚起するなど最善を尽くして、支援、助言、協力するつもりです」。          

 

By Andrew Scutts


〔Racing Post 2007年6月6日「HRA confirm steroid stance」〕


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