
北米のサラブレッド生産頭数が縮小を続ける中、12月10日に開催された「競馬のグローバルシンポジウム」で登壇した多くのパネリストが、減少傾向にある州における生産の安定化のため、地域横断的な複数州間の協力の必要性を指摘した。
進行役を務めたポール・ラインフェルド氏(ホースレーシング・アルバータ代表兼10エーカーズ・ソリューションズ共同創業者)は、「数の強み:米国サラブレッド生産を活性化する革新的アプローチ」と題したパネルディスカッションの冒頭で、サラブレッドの生産がケンタッキー州、フロリダ州、カリフォルニア州、ニューヨーク州に集中している現状を強調した。なかでもケンタッキー州で全体の60%以上を占めている。
カリフォルニア州の生産者兼馬主ハリス・アウアーバック氏は、家族で約50年にわたり生産に携わってきたが、同州を代表する生産者の一人という立場から、ケンタッキー州ジョージタウンの牧場で繁殖牝馬を繋養して小規模高付加価値の繁殖事業を営むに至った経緯を説明した。
彼は約12〜14年前にカリフォルニア州、アリゾナ州、ニューメキシコ州で生産プログラムを共有・集約する構想を提唱したにもかかわらず、当時カリフォルニアの生産者たちが生産者賞を共有することに消極的だったため進展しなかったと述べた。
これは時代を先取りした構想だった。現在ではメリーランド州とバージニア州の提携を筆頭に、複数州でそのようなプログラムが実施されている。
バージニアサラブレッド協会の理事であるダイアナ・マクルーア氏は、両州が州産限定競走の開催日程を統合して、年間を通じた競走の機会を提供している状況を説明した。
「今年はすべての関係者にとってウィンウィンの結果になったと思います」。
同様に、ニューメキシコ州はアリゾナ州と提携し、お互いの州産馬限定競走への出走を可能にしたとニューメキシコ州競馬委員会のイジー・トレホ常務理事は述べた。同氏は自州の生産の衰退と、西部諸州における広域的な連携の重要性について次のように表現した。
「我々は馬を必要としています。馬こそが車を動かす燃料なのです」。
こうした取り組みやその他のプログラムの更なる成功と認知度の向上を目指し、ジョッキークラブとサラブレッド馬主・生産者協会は先月ケンタッキー州で非公開のワークショップを開催した。ジョッキークラブのジェイミー・ヘイドン副常務理事は本ワークショップを成功と評した。
「今後、このワークショップを再度開催するのみならず、現在内部の人間が閲覧するためのツールの開発を進めています。今後、そのツールを生産者団体や競馬場へ提供し、競走馬の生産地情報を見られるようにしたいと思います」と同氏は述べた。
パネル参加者の大半はサラブレッド業界の関係者だったが、マイク・タナー氏はスタンダードブレッド業界の視点を提供した。米国トロッティング協会の副理事長兼CEOである同氏は、経済的な機会こそが最大の動機だと強調した。
「人は最大の報酬を得られる場所で馬を走らせ、生産を行うのです」。
ケンタッキー州はそうした一例で、同州で賞金総額が急増した背景にはゲーム機ヒストリカル・ホースレーシング(HHR)の存在が大きい。バージニア州にもスロットマシンに似たHHR機が導入されている。
カリフォルニア州は競馬産業を支援するゲーム機からの収入を有しない数少ない州の一つだ。1/STレーシング社が保有するサンタアニタパーク競馬場の先行きが不透明になっていることは、アウアーバック氏ら関係者の懸念材料となっている。同競馬場は南カリフォルニアの地価が高額なエリアに位置している。1/STレーシング社は、同様に地価が高額な南フロリダに保有するガルフストリームパークにおける競馬については、段階的に廃止していこうとしている。
アウアーバック氏はサンタアニタ競馬場について、次のように述べた。
「要するに人々は確実性を求めているのだと思います。1/STレーシング社の方たちが残ると言ってくれれば、いくらか確実性は増すでしょう。これまでのところそのような話は一切ありません。目にするのは馬術競技やオリンピック関連の話題ばかりです。それらは素晴らしいものではありますが、競走馬を生産するには、生産した馬たちが競走年齢に達した時に実際にレースをする場所があることを我々が分かっていないといけないのです」。
By Byron King
[bloodhorse.com 2025年12月10日「Symposium: States Urged to Unite Breeding Programs 」]