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No.6 - 3
馬の"取違え事件"、再び起こる(イギリス)[開催・運営]
2018年02月15日

 サウスウェル競馬場で"取違え事件"が起こった。アイヴァン・フアタードゥー(Ivan Furtado)厩舎の2頭がそれぞれ間違ったレースに出走したのだ。この事件は審問において"全然面白くない『間違いの喜劇』"と言われた。

 審問は2月1日、ロンドンのBHA(英国競馬統轄機構)本部で開かれた。そこで、1月14日にサウスウェル競馬場でアフリカントレーダー(African Trader)とスクリブナークリーク(Scribner Creek)が出走する前に個体確認を行う機会が4回あったが、それを怠っていたことが分かった。審問の議長をつとめたジェームズ・オマハニー(James O'Mahoney)氏は、このような出来事は競馬への信頼を失墜させるリスクを招くと語った。

 取違えられた2頭はいずれも5歳せん馬であり、この日はフアタードゥー厩舎に転厩してから初めて出走することになっていた。BHA職員は、スキャナーで2頭のマイクロチップIDのチェックを行っていたが、"取違え"に気付かなかった。

 競走後に2頭のうち1頭が薬物検査を受けることとなった。その翌日、BHAが採取した検体の分析を行っているときになって、ようやくこの"取違え"に気付いた。

 フアタードゥー調教師には2,000ポンド(約30万円)の過怠金が課された(1レースにつき1,000ポンド)。これらの馬はそれぞれ3位と7位で入線したが、失格となった。

 オマハニー氏はこう語った。「サウスウェルにいた他の人々もミスを犯したことは分かっています。しかし私たちは、出走馬の個体確認に最終的な責任を負うのは施行規程に定められているように調教師だと考えています」。

 「人的ミスがあったことは分かっています。しかし、この事件に関して観客・馬券購入者・競馬ファンがどうとらえているか、またこの事件が競馬の公正確保・評価にどう影響するかについて考えなければなりません。言うまでもないことですが、正しい馬が正しいレースに出走しなければなりません」。

 「BHAとフアタードゥー氏の双方から、このような取違え事件が再び起こらないようにするための手順が整えられていると聞きました」。



"取違え"はどのようにして起こったのか

 "取違え"が起こったのは、この6ヵ月間で2回目である。昨年7月、ミリーズキス(Millie's Kiss 牝3歳)はヤーマス競馬場において、同じチャーリー・マクブライド(Charlie McBride)厩舎所属の2歳牝馬マンダリンプリンセス(Mandarin Princess)が出走すべきレースに出走し、年少の他馬を負かした。

 この出来事により、追加的な個体確認プロセス、すなわち装鞍所に行くために厩舎を出る全出走馬のマイクロチップIDのスキャニングが義務付けられた。サウスウェルでこの作業は適切に行われており、BHA職員は馬の特徴と調教師について確認していた。しかし、名前が違っていたことに気付かなかった。またルールに記されているとおり競馬場到着時にスキャニングしたときも、獣医師が検査したときも"取違え"は明らかにならなかった。さらにこの過失は、アフリカントレーダーだと思われていた馬の検体を採取する段階でスキャニングするときにも繰り返された。

 BHAの公正担当理事であるティム・ネイラー(Tim Naylor)氏は、サウスウェルの馬の福祉・公正を担当する職員たちが犯した"人的ミス"をこう非難した。「その日の手順においていくつかのミスがあったことは疑いようがないと明言せざるを得ません。"人間が関わる要素を減らすことで"同じミスが繰り返されるのを防ぐスキャナーのために、新しいソフトウェアが開発されつつあります」。

 オマホニー氏はこう語った。「この"取違え"はほとんど『間違いの喜劇』であり、全然面白くありません。観客には"どの馬がどのレースに出走しているか"を知る権利があります。このようなミスが繰り返されるたびに、競馬への信頼が失墜するのではないかと大変心配しています。馬が検体採取に選ばれていなければ、誰もこの"取違え"には気付いていなかったでしょう」。

 フアタードゥー調教師の代理人であるドーン・バッカス(Dawn Bacchus)氏は審問において、これらの馬は昨年11月にフアタードゥー厩舎に移ってきた7頭のうちの2頭であると語った。これらの馬は競馬場到着時に個体確認された。しかし、フアタードゥー調教師によれば、"取違え"はそれ以前に、調教後に正しくない馬房に戻されて"間違った馬"として扱われたことですでに発生していたようだ。

 2頭とも後肢に白斑のある鹿毛のせん馬であり、アフリカントレーダーは額に星(白微)がある。バッカス氏は「この"取違え"に気付くほどこれらの馬を詳しく知っていた者はいませんでした」と述べた。

 バッカス氏は、ルールでは転厩後初めて出走する馬のチェックの重要性を強調しており、サウスウェルではパスポートはチェックされたもののスキャニングが行われなかったと指摘した。



「これを教訓とする」

 フアタードゥー調教師はこの件を受けて、80ポンド(約1万2,000円)のスキャナーを購入した。そしてこう語った。「サウスウェルのレースでこれら2頭の馬が走っている様子を前走と比べていて、2頭が異なる馬であることに気付きました。もしBHAから連絡がなかったとしても、私が連絡したでしょう」。

 「できるだけ少ない過怠金が課されることを望んでいましたが、ミスを犯したのでそれを償わなければなりません。これを教訓にして再びこのようなことが起こらないようにします。BHAも同様にこの件から学んでほしいと思います。観客や馬主にお詫びしたいと考えています。このようなことが二度と話題にならないことを望んでいます」。

 BHAのメディア担当理事であるロビン・マウンジー(Robin Mounsey)氏はこう語った。「懲戒委員会は審問において、出走馬の個体を確認する最終責任はフアタードゥー氏にあるとしました。しかしそれは、競馬の評判を守り、一般の人々が競馬の公正性と規制に信頼を持ち続けることを確かなものにするというBHAの責任を軽くするものではありません」。

 「BHAは、馬の個体確認プロセスに関する技術を強化し、再びこのような事件を起こす人的ミスのリスクを減らすために、積極的で迅速な行動をとっていきます」。

By Jon Lees

(1ポンド=約150円)

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[Racing Post 2018年2月1日「'A comedy of errors not in any sense funny' - panel gives Furtado £2,000 fine」]



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