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TOPページ > 海外競馬情報 > スポーツ賭事解禁を受けて競馬産業が取るべき行動(アメリカ)【開催・運営】
海外競馬情報
2018年05月20日  - No.5 - 1

スポーツ賭事解禁を受けて競馬産業が取るべき行動(アメリカ)【開催・運営】


 米連邦最高裁は、スポーツ賭事を禁じる連邦法を無効とする決定を下した。これを受け、ニュージャージー・デラウェア・ウエストバージニアで合法スポーツ賭事の運営が今年中に開始されそうだ。その後間もなく、ペンシルベニア・ニューヨーク・ミシガンを含む7州もスポーツ賭事を解禁する可能性がある。そして今後5年以内に、最多で10州がそれらの州に続く見込み。スポーツ賭事産業は2023年までに、1,200億ドル(約13兆2,000億円)を売り上げる見通し。

 すべての種類の賭事は結局のところ、賭事市場のシェア獲得を巡って競合している。しかし、スポーツ賭事解禁によって市場のカニバリゼーション(奪合い)が生じる恐れは限定的だと考えられている。

 マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company 本社:ニューヨーク)でグローバルスポーツ&ゲーミングに関するコンサルティング業を指揮するダニエル・シンガー(Daniel Singer)氏とベン・ヴォンウィラー(Ben Vonwiller)氏の分析は以下のとおりである。

・ 競馬は、スポーツ賭事が解禁されている国々でも人気ある賭事であり続けてきた。米国と他の競馬国との間には大きな違いはある。それでも、英国・豪州・アイルランドにはずっと以前から合法オンラインスポーツ賭事が存在するにもかかわらず、1人当たりの馬券購入額は米国よりも高い。この事実には勇気づけられる。

・ "今後賭事を控える"と言う競馬ファンはほとんどいない。2018年3月に馬券購入者264人を対象に行った調査では、自身の州でスポーツ賭事が解禁されれば馬券購入を控えると答えた人はわずか4%だった。また馬券購入者の55%は、すでにスポーツ賭事を行ったことがあると述べている。このことは、(海外スポーツ賭事業者などを通じて)スポーツ賭事がすでに競馬賭事の代替品となっていることを示している。

・ ネバダでは約50年間、スポーツ賭事は合法とされてきた(モバイルスポーツ賭事は2011年に解禁)。しかし、サラブレッド競馬は依然として1年間に米国全体の3%にあたる2億7,500万ドル(約302億5,000万円)を売上げている。ネバダの観光客の多さを考慮すれば、1人当たりの馬券購入額のレベルは特定しにくいが、他州より低くはなさそうだ。



クロスセリングのチャンス

 スポーツ賭事、とりわけオンラインスポーツ賭事を解禁する州において、競馬はスポーツ賭事客へのクロスセリング(商品・サービスを販売するにあたり、関連する別の商品・サービスを組み合わせて同時に販売すること)で利益を得ることができるかもしれない。

 米国で最も人気があるスポーツの試合の平均時間は次の通りである。NFL(アメフト):3時間12分、メジャーリーグ(野球):3時間5分、NBA(バスケットボール):2時間15分。わずか2分間のレースを対象とする競馬賭事は、スポーツ賭事客が他の試合が始まるまでの時間や試合中の休憩時間をつぶせるので、クロスセリングにはうってつけである。

 競馬はクロスセリングのチャンスを逃さないために、他の賭事形式に対処しなければならないだろう。たとえば、英国のブックメーカーは他のスポーツのために試合中賭事の販売を促進している。昨年、カジノゲームとポーカーは、パディパワー・ベットフェア社(Paddy Power-Betfair)のオンライン賭事売上げの27%を生み出した。

 クロスセリングを成功させるには、賭事を行うときに生じる煩わしさを最小限にすることが効果的だ。つまりそれは、(1) オンラインスポーツ賭事客に対して、同時に競馬賭事も提供すること(ユーザーインターフェースにおいて競馬を"タブ(見出し)"として表示する)、(2) 賭事を行うために同一アカウントが利用できてその開設のための登録方法はすべて同じであること。また、スポーツ賭事客が簡単に競馬賭事を行い、直感的に対応できるように、アプリやウェブサイトへのナビゲーション・専門用語・レイアウトはスポーツ賭事を行う際のものと同様にすべきである。

 英国では、賭事委員会(Gambling Commission)がスポーツと競馬の両方のオンライン賭事を取り締まっている。しかし米国では、各州はスポーツ賭事への規制監督を競馬から切り離すと見られている。たとえばペンシルベニアでは、ゲーミングコントロール委員会(Gaming Control Board)がスポーツ賭事を取り締まり、競馬賭事は引き続き競馬委員会の監督下で運営される。デラウェアでは、州営宝くじがスポーツ賭事を運営し、サラブレッド競馬委員会とは分離する。

 監督機関が分けられることで、競馬賭事のクロスセリングには以下のようないくつかの障害が生じるかもしれない。

・ 登録要件の不一致:年齢証明、納税者番号など。

・ 賭事運営上の要件の不一致:サーバーの場所、不正防止の仕様、自己排除プログラムなど。

・ マーケティングに関するルールの不一致。

 スポーツ賭事と競馬賭事の間で互換性が欠けることにより、オペレーターが同一プラットフォーム(基盤)で両方の賭事を提供することは、実行不可能あるいは違法となるかもしれない。それゆえ、オペレーターはスポーツ賭事客に対して競馬賭事アプリ(オンライン投票など)を推奨するかもしれないが、もう1つのアカウントを作るという手間を掛けさせることは、クロスセリングのチャンスを著しく減らすだろう。スポーツ賭事と競馬賭事のそれぞれの基盤の間で一貫性を持たせ相互運用を確かにすることは、競馬場とホースマンにとって最優先となるはずだ。



スポーツチャンネルでの放映のチャンス

 多くの州がスポーツ賭事を解禁すれば、有線スポーツチャンネルは"今夜何に賭けるか"についての帯番組をスタートさせるだろう。競馬がその話題から外されるわけにはいかない。ただでさえ、競馬が複雑で断片的であるために、競馬に精通するテレビ解説者は減少している。

 競馬産業は、ビッグレース・馬にまつわる物語・競馬界を代表する人々に、テレビ解説者の目を向けさせる必要がある。またスポーツチャンネルに競馬を取り上げてもらうために、高画質ビデオパッケージ(見どころ・プロフィール・インタビューなど)を制作して提供しなければならない。スポーツチャンネルは視聴者を賭事番組に誘導するために、午後2時~5時(東部標準時間)に、質の高いレースを放映することに興味を示すだろう。その際には、NFL専門チャンネルのレッドゾーン(RedZone)が用いているような映像技術(ファルコン4Kカメラや360度FreeDリプレイ)が求められるだろう。競馬場はこのチャンスを手にするために、競馬開催日程を調整して高額賞金レースを早い時間帯に移すことを検討しなければならない。



競馬賭事のリニューアル

 英国のスポーツ賭事において、売上げの半分はすでに競技中賭事によるものとなっている。競技前賭事(通常の賭事)と比較すれば利益は少ないが、大量の賭けが行われ、その量は増加している。ブックメーカーは競技中賭事のおかげで、賭事客を賭事に参加させ続け、1人当たりの支出額を高めることができる。

 英国のブックメーカーは競馬への大量の賭けを行い続けてもらうために、ボーナス・現金払い・レース中賭事を提供することにより、競馬賭事を刷新した。また、初心者を頻繁に的中させるために4着以内に払戻しのある馬券も発売した。さらにグランドナショナルのようなビッグレースでは、6着以内までに払戻しのある複勝馬券もある。

 米国でスポーツ賭事が解禁されることで、競馬産業は新しい馬券や混合プールに投資を行い、顧客の満足度を高めるために以前よりも迅速に競馬賭事をリニューアルしなければならない。



固定オッズ賭事を再考

 パリミューチュエル賭事と固定オッズ賭事は、オッズの確定方法に大きな違いがある。固定オッズは賭事客が賭事を行うときにオッズを確定し、パリミューチュエルはレース発走時にオッズが確定される。米国では今後、オペレーターが固定オッズでスポーツ賭事を提供することになる。またもしかすると、賭事客と賭事客が互いにオッズを確定できるエクスチェンジ賭事を提供するかもしれない。私たちは、競馬賭事を固定オッズへ転換することによってその賭事の魅力をスポーツ賭事客に最大限にアピールできるかどうか再考しなければならない。

 英国では、スポーツのエクスチェンジ賭事が若い顧客を引き付け、ほぼ間違いなく客層を拡大した。固定オッズもしくはエクスチェンジ賭事は、現代の競馬ファンが発走後のオッズの変化やエキゾチック馬券(3連単など高額配当が見込める馬券)のオッズの見通しの欠如に対して抱く懸念に対応するだろう。

 豪州や英国のような競馬国では、パリミューチュエル賭事と固定オッズ賭事は平行して提供されているが、発売金を着々と伸ばしているのは固定オッズ賭事である。たとえば、豪州のタブコープ社(Tabcorp)においては、競馬賭事の発売金総額のうち固定オッズによるものは2013年にわずか14%だったが、今や39%を占める。豪州において固定オッズ賭事による発売金は2013年から1年当たりの平均で25%増加した一方、パリミューチュエルの発売金は5%減少した。

 英国ではエクスチェンジ賭事の手数料は2~5%にすぎない。一方、米国においては、パリミューチュエル賭事が現在競馬場に支払っているのに匹敵するホスト料を競馬場に支出するために、エクスチェンジ賭事の手数料を10%以上に定めている。固定オッズ賭事に関しては、発売金から使用料あるいはホスト料が支払われる。

 英国のブックメーカーは固定オッズ賭事を提供することで、損失を出すかもしれないというリスクを負っている。それゆえ、スポーツ賭事の発売金を制限し、リスクを分析・管理するためにシステムとスタッフを洗練させてきた。米国競馬に関しては、オペレーターがこの種のスキルを向上させるか、取引/リスクの管理機能を外部委託することが必要となるだろう。

 オペレーターは1つ1つのレースの賭事を固定オッズで提供し、数百万ドルの高額配当が出ることもある複数のレースを対象とした賭事("WIN5"のような賭事)をパリミューチュエルで提供できる。

 固定オッズ賭事では、馬が負ける方に賭けやすくなるので、競馬の公正確保へのリスクを高める可能性がある。それゆえ、固定オッズ賭事への転換により、薬物検査・監視・施行規程の厳格化が求められるだろう。

 スポーツ賭事の解禁は、競馬産業が行動を起こすきっかけとなるはずだ。競馬産業が固定オッズ賭事/エクスチェンジ賭事に有利になるように行動するかどうかは別として、新しいファンを獲得して賭事基盤をリニューアルするという明るい将来は、市場のカニバリゼーション(奪合い)のリスクを大きく凌駕する。

(1ドル=約110円)

[bloodhorse.com 2018年5月14日「Sports Betting Provides Plenty of Upside for Racing」]


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