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TOPページ > 海外競馬情報 > 若手騎手が競馬学校に戻り、有意義な講習を体験(イギリス)【その他】
海外競馬情報
2018年03月20日  - No.3 - 4

若手騎手が競馬学校に戻り、有意義な講習を体験(イギリス)【その他】


 1月30日朝、競馬界の最も有望な若手騎手のうち10名は、ニューマーケットの英国競馬学校(British Racing School)に学びに来た。騎乗以外のことについて勉強不足な者もいる。

 現代の騎手にとって、長くて順調なキャリアを確実なものとするには騎乗能力だけではなく、他の多くの要素が必要である。また、騎乗しているとき以外の行いも極めて重要である。

 BHA(英国競馬統轄機構)、騎手協会(Professional Jockeys Association:PJA)、全国調教師連合(National Trainer Federation)および騎手教育・訓練計画(JETS)は理念を新たにし、一丸となってより効果的に騎手を教育しようとしている。

 昨年、新人騎手を減らすという方針が発表された。この措置は、騎手課程の修了者の30%は勝利を挙げておらず、 88%は自力で減量特典をとっていないという憂慮すべき統計を基にしていた。

 キアラン・ゲシングス(Ciaran Gethings)騎手は1月27日、ドンカスター競馬場で75勝目を達成し、ついに減量特典がとれた。彼はその3日後、減量特典3ポンドの騎手を対象としたこの講習会に出席していた。 受講者には、自力で減量特典をとることを目標にしている者も、ゲシングス騎手のようにそれを達成したばかりの者もいた(訳注:英国の障害騎手は20勝まで7ポンド、40勝まで5ポンド、75勝まで3ポンドの減量特典が与えられる)。彼ら全員がジョッキーコーチを利用している。減量ゾーンから一度抜け出すと、このようなトレーニングの費用は自ら負担しなければならないが、ゲシングス騎手はこの個別レッスンをやめるつもりはない。

 今年の騎手教育研修の担当者たちは、この講習会で取り上げる幅広いテーマが騎手の現実の問題と一致していることを望んでいる。そのテーマとは、「健康と安全」「コミュニケーションとメディア」「キャリアと個人財務」、「ライフスタイル」、「精神と心理」、「栄養」、「身体」、「戦術と技術」である。

 すべての受講者には、騎手教育研修フォルダーに加えて個人能力開発計画が渡された。フォルダーの序文には、受講者に向けてこう記されている。「このカリキュラムは、騎手として潜在能力を最大限に発揮させるために必要な分野を扱うように作成されています。活躍している騎手は、勝利を挙げるために戦術的・技術的スキルの向上にだけ頼っているのではありません。さらなるトレーニングを行い、技能向上を図ることが一流アスリートを支えています。それにより、最高の状態で騎乗し、騎手として、また第2の人生を計画する上で、しっかりとした将来を築き上げることができます」。

 若手騎手たちは、始まったばかりのキャリアのことで頭がいっぱいになっている。そのため、講習会が目を向けさせるリスクからたった1日で立ち直ろうと意気込んでいる。

 英国競馬学校の上席騎手であるリチャード・パーハム(Richard Perham)氏は、彼らの難しい表情を和らげることが必要だと感じ、すぐにその手の内を明かした。

 「今日ここに来たことで騎乗を休み1勝を逃してしまったとしたら、大変気の毒に思います。ですが、もっと多くの勝利を挙げてキャリアの次の段階に進むのに十分なことを、この講習から皆さんが学ぶよう望んでいます」。

 受講者の半分はその後すぐに、リディア・ヒズロップ(Lydia Hislop)氏によるメディア研修を受けた。残り半分は、レジリエンス・トレーニングについての授業を受けた(訳注:レジリエンスとは、挫折・困難な状況からの回復力のこと)。講師は、優れたスポーツ心理学者マイケル・コーフィールド(Michael Caulfield)氏と36勝を挙げた元障害騎手でPJAのパフォーマンスコンサルタントであるエイガン・コンロン(Aodhagan Conlon)氏。

 長年PJAのCEOを務めたコーフィールド氏も騎手だったが、初めて競馬用の鐙に足を入れたのは、コンロン氏よりも大分前のことだった。

 コーフィールド氏は、「私は身長が高すぎ、体重が重すぎました。さらに厄介なことに、どうしようもない騎手でした」と言い、コンロン氏のサポートを得ながら105分間、聴衆を虜にした。午前8時30分に彼が話し始めたときには、あまり良い反応はなかった。しかし、コーフィールド氏が独自の方法で騎手の気持ちについて話し始めると、ムードはがらりと変わった。

 同氏は、サー・アンソニー・マッコイ元騎手が「誰も私の狂気に気付いていない」と言ったときの様子について話した。そして、障害リーディングジョッキーに20回も輝いたマッコイ氏を、それまで会った中で「合法的精神病質者に最も近い人物」と表現した。コーフィールド氏はこう説明した。「私たちは皆、目の前に危険が迫ったときに本来備わった攻撃・逃避反応装置を作動させる進化した類人猿です。それが問題なのです。脳は安全を保つように働きますが、時代遅れのハードウェアです。とっさのとき私たちの本能は、常識ある戦略的計画を圧倒してしまいます。スポーツにおいて、その本能は悪影響を及ぼすかもしれません」。

 コーフィールド氏は、競馬界の著名人のビデオ・インタビュー集『チャンピオンの心の中(Inside the Mind of Champions)』のいくつかの場面を再生し、インタビューの内容について分析した。明快に語るのは講師のコーフィールド氏だけではない。この日の受講者たちは、同氏の気高い口調に、様々な反応を見せた。

 コンロン氏はこう語った。「私はとても控えめな障害騎手だったので、異なる取組み方をしました。レースで他馬に負かされる前に、頭の中で自分自身を負かしていたのです。君たちには、毎週15分間、これまでに騎乗した最高の勝馬3頭を思い返すように勧めたいと思います。自分自身を人間として信じれば信じるほど、そして本来備わった本能を信じれば信じるほど、能力を発揮することができるでしょう。また、制御できることは制御してください」。

 5人の受講者は明らかに、教室に入ってきたときよりも熱意にあふれて出て行った。

 一方、アナウンサーで競馬ジャーナリストのヒズロップ氏は、騎手が直面しそうなメディア対応のさまざまな形態について論じた後、5人に一対一の面接を実施した。受講者は積極的に参加していた。

 脚光を浴びている騎手もいた。たとえばリジー・ケリー(Lizzie Kelly)騎手はすでに、BBCラジオ5のチェルトナムフェスティバル中継に実況チームの1人として出演したことがあった(訳注:ケリー騎手は2015年に女性騎手として初めて英国の障害G1を制した)。しかし誰にとっても、授けられたアドバイスは有益なものになり得る。

 その後の個人財務についての授業で明らかになったことは、「若手騎手たちは金銭のことに関して、何らかの支援が必要となるだろう」ということだ。

 会計士のジェンマ・ウォーターハウス(Gemma Waterhouse)氏は、「競馬場外でのきちんとした生活が、騎乗成績を高めます」と述べ、10人のうち何人がエクセルをうまく使いこなせるかを尋ねた。教室は沈黙に包まれた。誰もこれまでエクセルを使ったことがないのだ。「本当に?」と信じられないように聞き返すウォーターハウス氏の声は、ほとんど悲愴だった。

 彼女はその後、「皆さんは自分を個人事業主として届け出たことがありますか?」と尋ねた。ようやく全員の手が挙がったが、確たる自信を持っている者はいなかった。続いて「所得税の申告をしたことがありますか?」と質問したが、それにはさらに自信のなさそうな反応だった。

 ウォーターハウス氏は心配している母親のような声で、「この教室にいる人は、所得税を申告する必要があります」と呼びかけ、その次に「年金計画を始めて、領収書を保存してください」と熱心に勧めた。

 ロウリー・ジレスピー(Lawrie Gillespie)氏は安全防護対策の授業で、十分な情報に基づいて判断を下すことをアドバイスした。「立ち止まって、正しい行動をしているかどうか自問するのであれば、"ノー、君は正しくない"というのが答えであるとほぼ言えます」。

 ジレスピー氏は数々の名文句を放った。しかし正直に言えば、騎手たちはこれまで実在した中で最も偉大な騎手に違いないマッコイ氏の話を聞くことを待ちわびていた。マッコイ氏はその日の基調講演者として、もう1人の引退騎手であるPJAのCEOデール・ギブソン(Dale Gibson)氏と一緒に現れた。

 マッコイ氏は、1時間ほどにわたりアドバイスを伝え続けた。「現実としては、トップジョッキーとして成功するのは君たちのうちたった1人です。君たちはまさに"知は力なり"という段階に居ます。君たちの知性とコミュニケーション能力こそが、騎乗能力と同じぐらい重要なのです」。

 マッコイ氏は、「人に親切であること」、「目標を立てること」、そして、「たとえ勝つ望みのない1頭の騎乗依頼しか受けていない状況だったとしても、いつも絶対に、騎乗責任を全うすること」を強調し、「レースに現れない騎手がいると知ったときは、度肝を抜かれました」と付け足した。

 その後、素質を十分発揮するための実証済みの手段を明らかにした。「君たちがただ何かを守り続けようとするだけなら、それは人々に追いつくチャンスを与えるだけです。私はつねにより良く乗れるように努力してきました。それは減量がとれたときに、もっと重要になります。それを達成できるのは君たちだけです」。

 この講習会に参加した10人の騎手には、それを実現するチャンスがある。パーハム氏は彼らが教室を出て行く前に「これを君たちの最後の研修としないでください」と言った。

 若手騎手が学校を再訪する体験は、それが彼らにとってこの上ないアドバイスをもたらすことを示している。

By Lee Mottershead

(1ポンド=約150円)

[Racing Post 2018年2月11日「Wise advice as McCoy joins team changing the way jockeys train」]


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