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TOPページ > 海外競馬情報 > 競馬に関わる仕事:種馬場経営者(イギリス)【その他】
海外競馬情報
2016年08月20日  - No.8 - 4

競馬に関わる仕事:種馬場経営者(イギリス)【その他】


 クールモア牧場やダーレー牧場のような大規模な種馬場は容易に事業を営んでいるように見えるが、種牡馬を供用するにはどのような困難が伴うのだろうか?小規模な種馬場を営むことは、もはや収入を得る有効な手段になりえないのだろうか?我々は匿名を条件に、この職業の落とし穴について、種馬場経営者(スタリオンマスター)A氏の話を聞いた。

 顧客である生産者を引き付ける種牡馬を所有することが、この職業の出発点である。しかし、将来有望な種牡馬を手に入れることを心配する前に、馬の世話をするスタッフが必要となる。

 A氏はこう説明した。「サラブレッドビジネスの経験が豊富なスタッフの確保は困難です。種牡馬、1歳や2歳の若駒は、通常の成馬より行動が予想しにくく、扱うのが厄介です。スポーツ・レジャー馬産業で働くのに対し、商業的な種馬場で必要とされる技能がどれだけ異なるかを、人々は理解していません」。

 何とか優秀なスタッフを確保できれば、今度は種牡馬の入手を心配し始める。そして、高いリスクを伴う選択作業に着手する。

 馬が種馬場に到着する前から財務面のリスクはすでにある。なぜなら、種牡馬は安く手に入らず、商業的に成功することを証明するものはほとんどないからである。

 A氏は、「最終的に利益を出す優れた種牡馬をよく目にしますが、挫折する種牡馬のほうがはるかに多いのです。優れた種牡馬を所有することの最大の利点は、成功しなかった種牡馬が出した損失の埋め合わせができることにあります」と述べた。

 もう1つの大きな問題は生殖能力である。素質ある産駒を送り出せないことは、有望視されていた種牡馬にとって災いとなる。

 A氏は、「購買を検討している種牡馬が年間100頭以上の牝馬を受胎させると思い込みがちですが、不妊や受胎率の低い馬は毎年見られます」と語った。

 また、"資金を確保して若くて生殖能力のある種牡馬を探し出せば心配ない"と考えることも間違いである。

 A氏はこう続けた。「種牡馬の安全上のリスクもあります。安全に種付を実施させるために出来る限りのことはしますが、非の打ちどころのない安全な方法などありません。種牡馬が種付所に入る時はいつでもリスクがあります。種付所に入ってきた牝馬を上手く誘導できずに暴れさせてしまうと、種牡馬に危険が及びます。その種牡馬購買時の借金が残っている場合などは、本当にぞっとします」。

 種牡馬が供用されて、種馬場の人馬を対象とした多くの安全要件を満たせば、次のハードルは種付権利の販売である。生産界で良好な評判を得ながら、このビジネスを軌道に乗せるのは、至難の業である。

 A氏はこう語った。「これまで種牡馬を供用したことのない牧場が種牡馬を入手し、ゼロからビジネスを開始することがいかに困難であるかは、想像を絶します。あらゆる場面で正しい決定を下すことはできますが、生産者の信頼を得られなければ、ビジネスは無に帰します」。

 「優れた種牡馬の種付権利は簡単に売れますが、成績が芳しくない種牡馬の種付権利はなかなか売れません」。

 また、あるシーズンに優秀な種牡馬を手に入れたからといって、ビジネスが順調に回ることにはならない。かなりの割合で勝馬を出す種牡馬を供用していても、種付権利の需要が高まる保証はない。

 A氏はこう続けた。「生産者は皆、種牡馬の選択となると、山ほどの要素を検討します。したがって、供用する種牡馬が傑出した勝馬を送り出した翌日に、突然電話が20回も鳴るようなことにはなりません。生産者は、種牡馬決定にかなりの時間をかけるのです」。

 「変化の早いビジネスで、流行は目まぐるしく変わります。したがって、供用する種牡馬が人気を博すかどうかを予言するには、水晶玉が必要です。運の要素が大きく、確たる保証はありません。少々恐ろしいことですが、それがかえってこのビジネスを面白いものにしています」。

 幸運にも優良種牡馬を確保して良い顧客に恵まれたとしても、状況が急に悪化して当然手に入ると思われたものがほとんど手に入らなくなることがある。A氏はこう説明する。「このビジネスが非常に難しいことは、過去30年間における英国とアイルランドの種馬場の衰退を見れば分かります」。

 「毎年利益を出すことはできず、不振の年もあります。この状況から逃れることはできません。あらゆることが上手く行かない年もあります。最有力2歳馬に問題が生じることも、当てにしていた種牡馬が思っていたほどの成績を上げないこともあります」。

 しかしさまざまなリスクがあるにせよ、A氏は種馬場経営という職業に対して前向きである。そしてこう付言した。「私たちは、この職業がいかに興味深く楽しいかを伝えるのが上手くないようです」。

 「最も満足感を覚えるのは、私たちを信じた生産者が成功を収め、私たちのビジネスが機能していることを目にする時です。生産者が私たちの種牡馬を使って成功しているのを見ることは、大きな原動力となります。種牡馬市場は競争が激化していますが、だからこそ成功したときの見返りは一層大きくなります」。

 「もう1つ重要なことはライフスタイルです。種馬場の多くは田園地域、あるいは世界でも有数の風光明媚な地域にあります」。

 したがって、このビジネスを始める資金を持ち、大きなリスクを取ることや実を結びそうもない投資をすることを恐れない人、そして贅沢な環境の中で暮らし、馬の生産の将来を形作る機会を手にしたい人であれば、種馬場経営者の職業はうってつけのものになるだろう。

種馬場経営者という職業の概要

必要なもの:種牡馬購買、種馬場のインフラ整備、スタッフ雇用に要する十分な資金。

収入:有能な種牡馬を獲得すれば莫大な富を手にする可能性はあるが、大半の種牡馬は失敗し、破産の危機に直面する可能性あり。

長所:次世代を担う種牡馬を見つけ出す感動。何世代にもわたり成果を得ること。

短所:多大なリスクを伴うこと。

By James Thomas

[Racing Post 2016年7月18日「'Most satisfying thing is success for your clients'」]


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