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TOPページ > 海外競馬情報 > 全米の薬物ルールを監督する独立機関の設立(アメリカ)【獣医・診療】
海外競馬情報
2015年08月20日  - No.8 - 3

全米の薬物ルールを監督する独立機関の設立(アメリカ)【獣医・診療】


 7月15日、米国反ドーピング機関(United States Anti-Doping Agency: USADA)に対し、競馬界の薬物ルールの独立監督機関を設立する権限を付与する連邦法が、議会に提出された。これを受け、いくつかの議論と疑問が浮上している。

 この連邦法“サラブレッド競馬公正法(Thoroughbred Horseracing Integrity Act)”の目的は、単一の監督機関の下で、一連の薬物ルールを全米レベルで実行することである。USADAが設立する機関は、“サラブレッド競馬反ドーピング機構(Thoroughbred Horseracing Anti-Doping Authority: THADA)”と称される。薬物ルールを確実に遵守させるため、この連邦法はTHADAのプログラムを、州間サイマルキャスト賭事を許可する1978年州間競馬法(Interstate Horseracing Act)と関連させている。現在、競馬賭事総額の85%は、州間サイマルキャスト賭事を通じている。サラブレッド競馬公正法は全競馬開催州に対し、州間サイマルキャスト賭事の継続を望むのであれば、THADAのルールと規制を適用するよう求めている。この法案は、アンディ・バー(Andy Barr)下院議員(ケンタッキー選出・共和党)とポール・トンコ(Paul Tonko)下院議員(ニューヨーク選出・民主党)の共同提案である。

 サイマルキャスト賭事運営のためにTHADAのルール遵守を求められることは、米国の二大ホースメングループにとって大問題である。この2団体、すなわち全米ホースメン共済協会(National Horsemen's Benevolent and Protective Association: NHBPA)とホースメン協会(Thoroughbred Horsemen's Association: THA)は、いずれもこの連邦法に反対している。

 NHBPAのCEOエリック・ハメルバック(Eric Hamelback)氏は、次のように語った。「この連邦法は、サイマルキャスト賭事に関して、州当局を全面排除しようとしているように思えます。THADAの判断のみで、サイマルキャスト賭事を提供できなくなる事態を避ける十分な保証がありません。連邦法が成立することで州当局より優位に立つ時は、いつも、このような問題が生じます」。

 これらのホースメングループは、全競馬開催州に広がりつつある全米統一薬物プログラム(National Uniform Medication Program:NUMP)を、引き続き適用することを支持している。NUMPの規制治療薬スケジュールと多重薬物違反罰則制度は、それぞれ15州と9州で適用されている(7月7日現在)。基本的に、NUMP支持者は、薬物ルールの管理とサイマルキャスト賭事の権限は、州に属すべきと主張している。

 しかし、この姿勢にはいくつかの矛盾がある。

 実際には、競馬界のすべての者が、薬物ルール、罰則および執行において統一性が必要であることに賛同している。NUMPは進展しつつあるが、各州は依然として都合に合わせてルールを微調整している。さらに、州の支出額によって左右される検査施設基準に関しても、問題がある。最近、インディアナ州は7サンプルにおいて、第1類薬物のメチルフェニデート(methylphenidate 商品名リタリン)などの州指定禁止薬物の陽性判定ができなかったとして、トルースデール研究所(Truesdail Laboratories)との契約を解除した。

 統一化には、まだ程遠い。

 サラブレッド競馬公正法が成立すれば、その後、THADAがすべての薬物ルール、薬物検査手続き、検査施設の認定、法令遵守、執行を担当し、必要な研究プロジェクトを特定する。非営利団体であるTHADAは、競馬産業の様々な分野(生産者、馬主、調教師、競馬場オーナー、獣医師、騎手など)を代表する5名から構成される委員会により、運営される。

 州間競馬法が付与する権限については、サラブレッド競馬公正法によって変更されることはない。現在、州間競馬法は、サイマルキャスト賭事の運営にあたり、三者間[州当局・競馬協会(競馬場)・ホースマン代表]の契約締結を求めている。三者は、サラブレッド競馬公正法の下、それぞれの権利を引き続き保有する。THADAのルールは満たすべきもう1つの条件となるが、それはNUMPの下ですでに遵守されてきた薬物ルールと全く相違がない。このことにより、州レベルでのルールの実施はなくなり、この独立機関(THADA)によって競馬開催州のすべてが例外なく、公正な競争条件の下に置かれることになる。

 ホースマンは、以前から薬物ルールを遵守する義務がある。競馬場は、パリミューチュエル賭事の運営免許を受け続けるため、薬物ルールを遵守しなければならない。殆どの競馬開催州は、より良い、一貫性のあるルールを適用する意欲を見せるだろう。NUMPの制度の適用に向け、取組まない州はごく僅かであろう。

 米国ジョッキークラブの上席副理事長兼専務理事であるマット・ユリアノ(Matt Iuliano)氏は、次のように語った。「競馬ファンは、州毎に異なる薬物ルール下でレースが施行されていることを知りながら、賭事を行っています。私たちは、施行される全レースを、公平な条件下に置こうとしているのです」。

 州レベルで薬物ルールを定め実行し続けることは、矛盾を永続させることになる。薬物ルールの統一化を真の目標とするのであれば、今こそ、信頼のおける単一機関にその役目を委ねる時である。

By Eric Mitchell

(関連記事)海外競馬情報 2015年No.7「全米統一薬物プログラムを適用する州が著しく増加(アメリカ)

[bloodhorse.com 2015年7月28日「What’s Going On Here―Steps Toward Integrity」]


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