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海外競馬情報
2015年04月20日  - No.4 - 1

窮地に立たされたテキサス州のサラブレッド産業(アメリカ)【開催・運営】


 テキサスのサラブレッド産業にとって、これ以上悪いニュースはないだろう。セリ会社のファシグ・ティプトン社(Fasig-Tipton)は、テキサス州で18年間続けてきたセリ開催の中止を発表した。ケンタッキーを拠点とする同社は、テキサス州でセリを年3回開催してきたが、4年前に年2回に減らしていた。

 ロンスターパーク競馬場に隣接するセリ施設で開催された直近(3月31日)の2歳トレーニングセールは、テキサスの競馬カレンダーにおける希望の光であった。しかし、最後まで売上げは期待を裏切り続けた。この2歳セールの最高価格馬は7万5,000ドル(約900万円)に過ぎず、最高価格馬が6桁(10万ドル)を切ったのは2003年以来であった。平均価格は22.6%減の1万7,605ドル(約211万円)、中間価格は13.3%減の1万3,000ドル(約156万円)、主取り率は33%を超えた。

 ファシグ・ティプトン社のマーケティング担当理事であるテレンス・コリア(Terence Collier)氏は、次のように語った。「テキサス州でのセリ開催に思い入れがあったので、苦渋の決断でした。セリ会社にとって、市場で存在感を示しながら、利益が出なくても事態の好転を待つことは難しいことではありません。しかし、テキサスの弊社スタッフは、トンネルの向こうに光を見出せませんでした。競馬界が踏ん張れるように、州議会に対して多くの働きかけを実施しましたが、良好な結果は得られませんでした」。

 テキサス州とケンタッキー州には、共通点が存在する。周辺の州と異なり、両州では競馬場がゲーミング賭事収入で賞金額を引き上げることができない。ケンタッキー州が、“インスタントレーシング”を用いて公平な競争条件を必死で確保しはじめたのは、つい最近のことである。“インスタントレーシング”とは、電子式のパリミューチュエルゲームであり、その賭事の勝ち負けには過去のレース結果が利用される。この“インスタントレーシング”の導入は、ある程度の安堵をもたらしたが、いまだスロットマシンほどの資金源とはなっていない。

 インスタントレーシングは、ビデオポーカーやスロットマシンなどの電子ゲーミングが快く受け入れられなかったオークローンパーク競馬場(アーカンソー州)で開発された。昨年、テキサス州もインスタントレーシングの開始に動き出したが、11月、地方裁判所の裁判官がその道を閉ざした。すなわち、トラヴィス郡裁判所の裁判官ローラ・リヴィングストン(Lora Livingston)氏は、テキサス州競馬委員会(Texas Racing Commission)が競馬場とドッグレース場にインスタントレーシング機器の設置を承認したことは、“越権行為”であるとの判決を下したのである。

 この判決は控訴されたが、テキサス州サラブレッド協会(Texas Thoroughbred Association: TTA)の専務理事であるメアリー・ルイル(Mary Ruyle)氏は、すぐに進展するとは考えていない。

 同氏は、「裁判では何を決定するにも長時間を要します。公平な競争条件を確保するために州議会に働きかけても、常に“ゲーミング賭事は不要”と言われてきました」と語った。

 しかし、TTAはマーケットでの負けを認めるつもりはない。TTAは1歳セール(8月24日予定)と2歳トレーニングセール(2016年予定)を開催する新しいセリ会社を、4月中旬に発表する予定である。

 ルイル氏は、次のように語った。「これでも、以前の状況や我々の目指す姿には至っていません。しかし、州の生産者協会として州産馬を販売するため、生産者に販路を確保するよう力を尽くしています。市場には、まだ将来性が残っていると感じています」。

 地平線上にかすかに輝く光は、州議会で審議未了になっている2つの法案である。これらの法案により、テキサス州の競馬場は、税金還付を通じて得られた追加的資金を賞金に拠出できるかもしれない。この法案の主な支持者は、ロベルト・アロンゾ(Roberto Alonzo)下院議員(民主党・ダラス選出)とケル・セリジャー(Kel Seliger)上院議員(共和党・アマリロ選出)である。

 テキサスほど競馬産業に密接に関与している州はわずかである。このため、1987年にパリミューチュエル賭事が再度導入された際の期待は、当然高いものであった。しかし、テキサス州における競馬産業が苦戦し、繁栄できる環境にありながら地盤を失いつつある状況を目前にすれば、酔いも覚める。さらなる不安は、土地管理・農業・雇用への競馬産業の重要な貢献に対し、州のリーダーたちの認識が確実に欠如していることである。

 このような無関心の積み重ねこそが、最悪のニュースである。

By Eric Mitchell
(1ドル=約120円)

[bloodhorse.com 2015年4月7日「What's Going On Here−Star-Crossed State」]


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