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TOPページ > 海外競馬情報 > 北米リーディングサイアーのタピット(アメリカ)【生産】
海外競馬情報
2015年02月20日  - No.2 - 1

北米リーディングサイアーのタピット(アメリカ)【生産】


 10年前にゲインズウェイ牧場(Gainesway Farm)で供用する種牡馬を購買しようとしているとき、競走成績にムラはあるが、血統が良く胴が長い芦毛の若い牡馬にアントニー・ベック(Antony Beck)氏の心は奪われていた。あれこれ考え、その競走経験の浅さに戸惑っていた。しかし二の足を踏まず、ベック氏はタピット(Tapit)の所有権50%を購買する契約をウィンチェルサラブレッド社(Winchell Thoroughbreds)と結んだ。

 それから10年後、ベック氏の牧場には2014年に断トツのリーディングサイアーとなったタピットがいる。2015年は、ストームキャット(Storm Cat)やエーピーインディ(A.P. Indy)の全盛期以来のアメリカ大陸最高の種付料30万ドル(約3,600万円)で供用される。この価格がタピットのもとに繁殖牝馬を送ることを待ち望んでいる生産者をたじろがせることは全くないだろう。
2014年の産駒獲得賞金が1,680万7,001ドル(約20億1,684万円)のタピットは、2位でその産駒が1,267万8,720ドル(約15億2,145万円)を稼いだジャイアンツコーズウェイ(Giant’s Causeway)を大きく引き離した。ちなみに、2013年にキャリア最高年を過ごしリーディングサイアーとなったキトゥンズジョイ(Kitten’s Joy)のその年の産駒獲得賞金は1,133万908ドル(約13億5,971万円)であった。

 2014年末に、タピットはステークス勝利数でも北米拠点の種牡馬のトップに立ち(36勝)、重賞勝馬数では2位(12頭)、G1勝馬数では2位タイ(3頭)、ステークス勝馬数では6位(17頭)、勝馬数では3位(156頭)となった。

 BCディスタフ(G1)で優勝しエクリプス賞最優秀3歳牝馬に選出されたアンタパブル(Untapable)は、2014年に最高額を稼いだタピット産駒となった。2014年にコティリオンS(G1)・マザーグースS(G1)・ケンタッキーオークス(G1)・フェアグラウンズオークス(G2)・レイチェルアレクサンドラS(G3)も制して、アンタパブルの獲得賞金は280万8,600ドル(約3億3,703万円)に上った。2位はトーナリスト(Tonalist 馬主ロバート・エヴァンス氏)で、ベルモントS(G1)・ジョッキークラブゴールドカップ(G1)を制して194万8,250ドル(約2億3,379万円)を獲得した。そしてタピチャー(Tapiture)は、ウエストヴァージニアダービー(G2)・マットウィンS(G3)・サウスウェストS(G3)を制して124万7,222ドル(約1億4,967万円)を獲得し、2014年に100万ドル以上を稼いだ3頭目のタピット産駒となった。馬主がウィンチェルサラブレッド社のアンタパブルとタピチャーは4歳シーズンも現役を続けて、また1年タピット物語を繰り広げることになる。

この上位3頭以外に、2014年に重賞勝利を収めたタピット産駒は以下の通りである。

・コンスティチューション(Constitution)―フロリダダービー(G1)
・バンドボックス(Bandbox)―ジェネラルジョージH(G3)
・カサット(Cassatt)―モンマスオークス(G3)
・クードグレイス(Coup de Grace)―アムステルダムS(G2)・ベイショアS(G3)
・リングウィークエンド(Ring Weekend)―タンパベイダービー(G2)サラナクS(G3 芝)・ヒルプリンスS(G3芝)
・スノーベル(Snowbell)―カムリーS(G3)
・ティーンポーリーン(Teen Pauline)―トップフライトH(G2)
・ウエストコーストベル(West Coast Belle)―ゴールデンロッドS(G2)

 タピット(父プルピット、母タップユアヒールズ、母父アンブライドルド)はおそらく大成功する遺伝子を持って生まれたのだろう。ウィスコンシン州の実業家ウェイン・C・オルデンバーグ(Wayne C. Oldenburg)氏は、2000年キーンランド11月ミックスセールでタピットが腹にいるタップユアヒールズを75万ドル(約9,000万円)で購買した。そしてオルデンバーグ牧場(Oldenburg Farms)は、ミスタープロスペクター(Mr. Prospector)3×4でニジンスキー II(Nijinsky II)5×3のタピットの生産者となった。プルピットの母はミスタープロスペクターの牝馬プリーチ(Preach)であり、父は年度代表馬エーピーインディである。

 2002年キーンランド9月1歳セールにおいて、カリフォルニアのオーナーブリーダーであるヴァーン&ロン・ウィンチェル(Verne and Ron Winchell)親子は、レーシングマネージャー兼牧場長のデヴィッド・フィスク(David Fiske)氏、マイケル・ディキンソン(Michael Dickinson)調教師、デヴィッド・ランバート博士(Dr. David Lambert)とともに購買を行っていた。そして誰もがこのプルピット牡駒を気に入った。

 「ヴァーンは価格表示板を眺め続け、『我々の付け値か?』と聞いてきました」とセリを担当するフィスク氏は語った。価格が上がるにつれ交互に「はい」「いいえ」と答えながら、フィスク氏はついにウィンチェル氏のほうを向き「あなたが絶対にやめろと言うまで値を付け続けます」と言った。62万5,000ドル(約7,500万円)でハンマーが鳴った時、ウィンチェル氏はもう1度「我々の付け値か?」と聞き、フィスク氏は「はい」と答えた。

 タピットは2歳シーズン後半に2回出走して、10月のデラウェアパーク競馬場の1マイル(約1600m)の競走を7馬身3/4差で制し、その1ヵ月後に1マイル1/16(約1700m)のローレルフューチュリティ(G2)を4馬身3/4差で制した。しかし、3歳への移行は順調ではなかった。タピットは前肢管部の問題のために数週間の調教をふいにしたが、シーズン初戦として果敢にもフロリダダービー(G3)に登録した。そこで精彩のない6着に終わったことは、同馬の問題の始まりに過ぎなかった。肺感染症と蹄の膿瘍のため途中で競走をやめていたのだ。その後のウッドメモリアルS(G1)では、同馬を管理するディキンソン調教師は「タピットはこの競走で勝つほど好調ではない」とレース1週間前に語っていたが、タピットは最終コーナーを内の5頭を見ながら回り半馬身差の勝利を収め、同師が間違っていたことを証明した。続くケンタッキーダービー(G1)で同馬は着外となり、4ヵ月の休養後に最後の競走となるペンシルヴァニアダービー(G2)に出走したがそこでも見せ場が無かった。そして通算6戦3勝の成績と獲得賞金55万7,300ドル(約6,688万円)で引退した。

 2002年に父ヴァーンの死去を受け、タピットがケンタッキーの種馬場に送られるときにはロン・ウィンチェル氏が采配を振るっていた。ウィンチェル氏は2003年フューチュリティS(G1)勝馬キュヴェ(Cuvee)がまだ現役のときに所有権の50%を売却する契約を結んだことがあり、タピットにも同じビジネスモデルを適用することを決心して2004年後半の競走引退後にゲインズウェイ牧場に所有権の半分を売却した。

 「1頭の種牡馬がいれば、種付を助けてくれる人の手に50%を渡したくなります。種牡馬の全所有権を持っていれば、あまり多くの繁殖牝馬を交配させようとしないでしょう」とウィンチェル氏は語った。

その一方でベック氏はこの幸運を喜んでいる。

 「現在のところ、種牡馬入りしたタピットには目立つライバルがおらず、心底驚いています。タピットは将来性のある馬として2歳シーズン後半に最も話題になった馬の1頭でした」とベック氏は述べた。

 タピットの浮き沈みの激しい競走生活について、ベック氏は次のように語った。「将来性のある種牡馬に関するかぎり、競走成績の平均ではなく最高のパフォーマンスに目を向けようとつねに思っています。タピットの最高のパフォーマンスは非常に素晴らしいものです。そして彼は母系に競走成績以上の活躍をした種牡馬が含まれる素晴らしい血統を持っています。彼のことが大変気に入りました。とても魅力的な馬です」。

 ファーストクロップが出走し始めてからタピットは一段と魅力的に見えた。この世代の産駒には最優秀2歳牝馬となったスターダムバウンド(Stardom Bound)やG1馬であるララー(Laragh)・ケアレスジュエル(Careless Jewel)・テスタマッタが含まれる。2005年と2006年にタピットはそれぞれ1万5,000ドル(約180万円)と1万2,500ドル(約150万円)の種付料で供用された。その当時の同馬の種付予約はステークス勝利牝馬で埋まっていたわけではない。

 フィスク氏は「ワラから黄金を紡ぐことができることをタピットは示しました」と語った。

 そしてその現象はタピットの種付料に反映されるようになり、2009年は3万5,000ドル(約420万円)、翌年には5万ドル(約600万円)に跳ね上がった。上昇は続きその勢いは衰えなかった。2011年には8万ドル(約960万円)、2012年と2013年には12万5,000ドル(約1,500万円)、そして2014年には15万ドル(約1,800万円)で供用された。

 ベック氏は次のように語った。「30万ドル(約3,600万円)にまで種付料を釣り上げた主な理由は、過剰な種付予約を受付けず、また、あまりに多数の申し出を断るようなことにならないようにするためです。しかし、30万ドルでも多くの人々の申し出を断っています。すべてのサイアーラインがタピットと結果を出すことは驚くべきことです。プレザントコロニー(Pleasant Colony)系牝馬はタピットと非常に相性が良く、ワイルドアゲイン(Wild Again)系は大半の系統よりも上手くいっているように見えます。しかし、タピットは特別な種牡馬なので、あらゆる系統と上手くいきます。繁殖牝馬がどのようなタイプであろうと、タピットは素晴らしい動きと傑出した有酸素運動能力を持つ競走向きの馬を作り出します。とはいえ、タピットと最高に相性が良い母系の繁殖牝馬を持つのはウィンチェル一族です。これはまぎれもない事実です」。

 タピチャーの母はオリンピオ(Olympio)の牝馬フリースピン(Free Spin)である。オリンピオはヴァーン・ウィンチェル氏が所有した中で最も立派な馬であろう。アンタパブルの母ファンハウス(Fun House)の2代母は、ヴァーン・ウィンチェル氏が「よく分からないが、いくらかスピードがありそうだ」と言ってクレーミング競走で譲渡要求したキャロルスクリスマス(Carols Christmas)である。フィスク氏によればキャロルスクリスマスは背中が落ち込み、両前膝がオフセットニー(訳注:前腕の軸と管部の軸がずれている不良構造)で両前肢の球節が曲がっていた。同馬とその娘、さらには孫娘が送り出した仔によって、ウィンチェルサラブレッド社はステークス競走40勝を挙げている。キャロルスクリスマスはサラブレッド産業において譲渡要求された中でも最高の馬の1頭である。

 ロン・ウィンチェル氏は2014年に次のように語った。「ダービーやオークスのようなレースに所有馬を出走させることができ、ビジネスに熱中できる年でした。タピットのおかげでこのようなG1競走が施行される競馬場へ向かう機会に恵まれました。私たちはタピットに非常に感謝しています」。

 もちろんタピットの種牡馬としての成功は、競馬場だけにとどまらず、セリのリングでも光を放った。2014年に上場された当歳産駒8頭の平均価格は82万625ドル(約9,848万円)でタピットにとって過去最高だった前年の倍以上となり、そのうち当歳牝駒4頭の平均価格は118万1,250ドル(約1億4,175万円)であった。1歳産駒42頭も2014年に高額の平均価格59万4,155ドル(約7,130万円)を記録した。そのうち1歳牡駒19頭の平均価格は65万5,550ドル(約7,867万円)で、33頭の平均価格が43万7,891ドル(約5,255万円)だった2013年を軽々と上回った。また1歳牝駒23頭の平均価格は54万3,479ドル(約6,522万円)で、16頭の平均価格が31万6,080ドル(約3,793万円)だった2013年を上回った。2014年の2歳産駒15頭の平均価格は39万4,667ドル(約4,736万円)で、18頭の平均価格が41万2,139ドル(約4,946万円)だった2008年以来の最高額であった。

 タピットの勢いはとどまらないため、その産駒の種牡馬としての需要は高まった。ゲインズウェイ牧場はBCダートマイル(G1)で勝利を収めたタピザー(Tapizar)を、ヒルンデール牧場(Hill ‘n’ Dale Farms)はコンコードポイント(Concord Point)とフラッシュバック(Flashback)を、クレイボーン牧場(Claibourne)はトラップショット(Trappe Shot)を供用している。以下のように、競走であまり良い成績を収めなかった産駒も需要が高く、様々な地域で供用される。

・ヒズハドイナフ(He’s Had Enough)―フロリダ州
・ラトルスネークブリッジ(Rattlesnake Bridge)―フロリダ州
・バンドボックス―メリーランド州
・トライタップ(Tritap)―メリーランド州
・オナラブルディロン(Honorable Dillon)―ニューヨーク州
・タイダルボリューム(Tidal Volume)―オハイオ州
・ジェントルタップ(Gentle Tap)―オクラホマ州
・ウィンチル(Winchill)―ペンシルヴェニア州
・モロタップ(Moro Tap)―テキサス州
・ランニングタップ(Running Tap)―ワシントン州

 ベック氏はタピットの種付頭数は135頭に抑えていると語った。これにより適切な数の産駒を競馬場に送り出すことができ、1歳市場に産駒を溢れかえらせることはない。また同馬は生殖能力が高いので、この頭数がストレスを与えることもない。

 ベック氏は次のように続けた。「タピットはゲインズウェイ牧場にとって信じられないほど素晴らしい馬です。創立100年以上になるこの牧場は、ピーターパン(Peter Pan)やエクイポイズ(Equipoise)に始まりトムフール(Tom Fool)やリファール(Lyphard)そしてブラッシンググルーム(Blushing Groom)にいたるまで本当に偉大な種牡馬を繋養してきました。しかしどの馬も今のタピットにはかなわないでしょう。種牡馬は牧場の核であり、私たちの印象を良くします。だから2014年に私たちは非常にスマートに見えたでしょうし、2015年もそうなることを望んでいます」。

 

北米リーディングサイアー(1994年〜2014年)
種 牡 馬 産駒獲得賞金 種 牡 馬 産駒獲得賞金
1994 ブロードブラッシュ
(Broad Brush)
$540万  326
(6億4,804万円)
2005 セイントバラード
(Saint Ballado)
$925万7,095
(11億1,085万円)
1995 パレスミュージック
(Palace Music)
$533万3,576
(6億4,003万円)
2006 エーピーインディ $972万4,198
(11億6,690万円)
1996 コジーン
(Cozzene)
$517万3,595
(6億2,083万円)
2007 スマートストライク
(Smart Strike)
$1,435万8,570
(17億2,303万円)
1997 デピュティミニスター
(Deputy Minister)
$858万8,905
(10億3,067万円)
2008 スマートストライク $1,241万3,093
(14億8,957万円)
1998 デピュティミニスター $856万7,723
(10億2,813万円)
2009 ジャイアンツコーズウェイ $1,107万8,843
(13億2,946万円)
1999 ストームキャット $1,035万5,446
(12億4,265万円)
2010 ジャイアンツコーズウェイ $882万1,737
(10億5,861万円)
2000 ストームキャット $927万  333
(11億1,244万円)
2011 ディストーテッドヒューマー(Distorted Humor) $1,037万1,534
(12億4,458万円)
2001 サンダーガルチ
(Thunder Gulch)
$790万5,539
(9億4,866万円)
2012 ジャイアンツコーズウェイ $1,010万1,591
(12億1,219万円)
2002 エルプラード
(El Prado)
$696万6,265
(8億3,595万円)
2013 キトゥンズジョイ $1,133万  908
(13億5,971万円)
2003 エーピーインディ $910万  912
(10億9,211万円)
2014 タピット $1,680万7,001
(20億1,684万円)
2004 イルーシヴクオリティ
(Elusive Quality)
$1,075万6,659
(12億9,080万円)
 

 

By Lenny Shulman
(1ドル=約120円)

[The Blood-Horse 2015年1月10日「Tapit to the Top」]
 


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