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2015年12月20日  - No.12 - 1

オンタリオ州から得た教訓(カナダ)【開催・運営】


 オンタリオ州の競馬コミュニティーが受けた試練は、米国競馬界にいくつかの教訓を与える。もし政界および競馬産業のリーダーが注意を払えばの話だが。

 “オンタリオ州ではすべてがバラ色だ”と言うと誇張になる。しかし、“オンタリオ州は競馬界と生産界の道を閉ざす政治的な嵐から抜け出し、健全な上昇軌道に乗ったようだ”と言えば適切である。

 オンタリオ州政府が2012年に、1998年開始の競馬場内スロットマシン提供計画を終了すると発表した時、混乱は始まった。オンタリオ・ロッタリー&ゲーミング社(Ontario Lottery and Gaming Corp.: OLG)は、ゲーミング産業を近代化し、政府の諮問機関が言うところの“秩序の乱れ”を是正する決定を下した。これは生産界に即時に影響し、2013年において種付け牝馬頭数は前年の1,357頭から37%減少して901頭となり、種牡馬頭数は前年の85頭から60頭に減少した。ジョッキークラブの統計によれば、その2年前にはオンタリオ州で100頭以上の種牡馬が供用され、1,490頭の牝馬に種付けを行っていた。

 競馬産業のリーダーたちは、生産・競馬プログラムの弱体化は州全体に悪影響を与えると強調し、州政府のリーダーたちに説得を繰り返した。世界中で実施されている調査では、馬に関連する全ての産業を考慮すれば馬1頭は雇用1件に相当するとされており、最近オンタリオ州で実施された調査でも再確認された。この等式は競馬界において一層重要性を持ち、馬1頭は雇用1.7〜2.2件につながっている。すなわち、3万〜3万5,000件の雇用が危機に晒されていた。

 政府職員のラーニングカーブ(学習曲線)は、競馬場や牧場の閉鎖が相次ぐ中で、期待よりも緩やかにしか上昇しなかったが、最終的にメッセージは伝わった。

 ウッドバイン・エンターテインメントグループ(Woodbine Entertainment Group)のCEOジム・ローソン(Jim Lawson)氏は次のように語った。「2012年に州政府が競馬産業が受ける経済的影響について深い熟慮も協議もなく決定を下したと、認識されていました。説得は徐々にしか受け入れてもらえないことは常に理解していますが、今では州政府は、装蹄師や獣医師が熟練を要する労働を提供しており、これらの職種の人々は他の職探しが困難であることを認識しています。現在、私たちは州政府とパートナーとして取り組めています」。

 OLGがこの夏ウッドバイン競馬場(トロント郊外)での事業拡大を承認したことが、支援が厚くなってきた証拠である。これにより、テーブルゲームと、最多で5,000台のスロットマシンが追加される予定である。追加分のゲーム機は、年間6億5,000万ドル(約780億円)のスロットマシン収入を生み出している既存のグランドスタンドとカジノに統合される新施設に設置される。総工費5億〜15億ドル(約600億〜1,800億円)と見積もられるこの計画は、第三者のゲーミング会社によって建設および運営が行われ、レストランや小売店に支えられるエンターテインメントセンターを含む。オンタリオ州のサラブレッド産業は、OLGとの長期的合意と、今後2〜3年内のスロットマシン事業の拡大で新たに相当な収入を得られるという約束により強化され、馬主が競走と生産に長期投資を行うために是非とも必要な安定性を手に入れた。

 ローソン氏は次のように付言した。「オンタリオ州は北米の他の地域と同様に多くの製造業を失い、サービス業が主流となって来ました。私たちはここで、接客業、飲食店、不動産業、建設業を通じて多くの雇用を創出することができます。今や政府はこのことを認識しています」。

 イリノイ州、フロリダ州、ペンシルヴァニア州、テキサス州、ウエストヴァーニジア州の政治リーダーたちは、この件について注意を払っているのだろうか?

By Eric Mitchell
(1ドル=約120円)

(関連記事)海外競馬ニュース 2012年No.31「ウッドバイン競馬場、スロットマシン収入が得られず閉場の可能性(カナダ)

[bloodhorse.com 2015年12月8日「What’s Going On Here―Lessons from Ontario」]


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