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海外競馬情報
2013年02月20日  - No.2 - 3

米国のブラックタイプ、スピード指数を組み合わせる新基準適用へ(アメリカ)【生産】


 米国のセリカタログは、国際的な顧客にとって分かりにくくなるかもしれない。これまでカタログのページには通常たくさんのブラックタイプ(訳注参照)が記載されており、このことは、どの馬が重要でどの馬がそうでないのかを解釈するという点で全く素晴らしいことである。

(訳注:ブラックタイプとは、セリカタログの血統紹介欄に記載される馬名について、当該馬がブラックタイプ競走に優勝または入着した実績を識別できるよう、活字の太さ、大文字、小文字の使い分け等により区別して表記すること)

 それはなぜか?2011年に北米で施行されたステークス競走1,825レースのうちの56%は、非リステッドのブラックタイプ競走で、言い換えれば総賞金が5万〜7万4,999ドル(約450万〜675万円)のオープンステークス競走であった。限定競走として施行されることの多いこれらのレースは、全米における実入りの良い州産馬競走の基盤となっているとともに、レベルの高い他のレースと同様にこれらのレースの1〜3着馬にブラックタイプが提供されている。

 しかし、北米国際カタログ基準委員会(North American International Catalogue Standards Committee: NAICSC)が行なった最近の発表によって、米国のブラックタイプ制度が激変するおそれが出ている。

 NAICSCは2014年1月から、スピード指数に基づく新基準を満たす場合に限り非リステッドにブラックタイプのステータスを与える予定である。そして見込まれる新基準によれば、北米のステークス競走の半数以上がブラックタイプに該当するかどうかについて精査されることになる。米国に関する限りこれは新しい方向であり、いくつかのレースがブラックタイプのステータスを失う可能性がある。

 競走にブラックタイプのステータスを与えるに当たって、賞金額を基準とする代わりに、各競走の1着〜4着馬のエクイベース(Equibase)の平均値、デイリーレーシングフォーム(Daily Racing Form)のベイヤー指数(Beyer 訳注参照)、ブラッドストック・リサーチ・インフォメーション・システムズ(Bloodstock Research Information Systems)およびソロ-グラフ(Thoro-Graph)のスピード指数を利用して、年間の“レース・クオリティー・スコア(Race Quality Score: RQS)”を算出することになる。

(訳注:ベイヤー指数とは、1970年前半にワシントンポスト紙の競馬コラムニストのアンドリュー・ベイヤー(Andrew Beyer)氏が考案したサラブレッドの能力を示すスピード指数のこと)

 同様に、過去3年の競走の平均スコアが“ブラックタイプ”のRQSの作成に使われることになり、ブラックタイプとなるためにはある一定のレベルに到達しなければならない。そのレベルに到達しない場合は、その競走はブラックタイプのステータスを奪われ、再度ステークス競走として検討されるためには、2年連続で“ブラックタイプ”のRQSに到達しなければならない。

 当然、この措置はまだ広範囲の承認を得られていない。おそらく大半の米国の馬購買者は、セリに上場されるブラックタイプのさまざまな馬の本質を見抜くほど十分に熟練しているのだろうが、州産馬限定競走に頼っている米国の生産者は必ず打撃を受けることになるだろう。

 非リステッドのブラックタイプ競走は、欧州のブラックタイプ制度とは別ものである。しかし欧州のヨーロッパ・パターン競走委員会(European Pattern Committee)によれば、欧州パターン競走は、重賞競走のステータスを獲得するための基準レーティング、つまり“レースの3年間における各年のレーティングの平均値”を満たされねばならないとされている。

 全体的に見れば欧州のステークス制度は能力を認めるのに健全な方法であるが、有効に利用されるには欠点がある。

 牝馬ミーオーマイ(Meohmy)を例に取ってみよう。未勝利でレーティング46であった同馬は2009年2月に、リングフィールド競馬場のリステッド競走で3頭立ての3着(最下位)だったにもかかわらず、サラブレッド全体の中でブラックタイプ出走馬のエリートグループの仲間入りを果たした。しかし一方で、ハラベック(Hala Bek)のような馬は、2006年英ダービー4着で114のレーティングが付けられたものの、その後の出走実績が少なくステークス競走で3着以内に入ったことが無いためセリカタログにはブラックタイプで掲載されていない。

 適切かどうかは別にして、欧州のいくつかのセリ会社は現在G1競走で4着となった馬はカタログにおいてブラックタイプとしている。しかしそのことによって欧州には、セリカタログにおいて能力を特定する手段としてブラックタイプではなくレーティングの組み入れを米国よりも先行して開始する余地があると分かるのではないだろうか?

 その答えは、過去にいろいろな場で示されたように、自動的に馬にブラックタイプを与える公式レーティングの導入であることがますますはっきりしつつある。

 米国において、NAICSCがそのステークス制度にスピード指数の利用を実行する必要性を感じていることは注目に値する。そして、そのことで期待どおりにブラックタイプ制度が厳しくなるのであれば、たぶん今後世界各国の購買者は米国のサラブレッドによりいっそう信頼を寄せ始めるだろう。

By Nancy Sexton
(1ドル=約90円)

[Racing Post 2013年1月11日「Black type had its day? Announcement by US standards committee threatens upheaval」]


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