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海外競馬情報
2011年04月08日  - No.7 - 2

競馬産業、コルチコステロイドの研究に取り組む(アメリカ)【獣医・診療】


 競馬産業は、競走馬への治療薬投与の禁止期間を決定するために必要な情報の収集に取り組んできており、その取組みはコルチコステロイド(corticosteroids)の研究に取り掛かったことで大詰めの段階に入っている。

 薬物規制標準化委員会(Racing Medication and Testing Consortium: RMTC)の専務理事であるスコット・ウォーターマン(Scot Waterman)獣医学博士は、コルチコステロイドは調査されるべき治療薬物の中で最後に残されたグループである。資金問題がタイミングの観点で課題を投げかけるが、RMTCは1〜2年でこの研究が完了することを望んでいる。

 すでに大部分の競馬において禁止されているアナボリック・ステロイドと区別されるコルチコステロイドは、一般的に抗炎症剤として使用されている。

 ペンシルヴァニア大学は、すでにコルチコステロイドベタメタゾン(corticosteroids betamethasone)とデキサメタゾン(dexamethasone)を研究しており、カリフォルニア大学デーヴィス校はトリアムシノロン(triamcinolone)とメチルプレドニゾロン(methylprednisolone)を研究している。イソフルプレドン(isoflupredone)についてのデータは収集されているが、これについて分析はまだなされていない。また酢酸メチルプレドニゾロン(methylprednisolone acetate)、プレドニゾロン(prednisolone)およびフルメタゾン(flumethasone)についての徹底的な研究も必要とされている。

 いくつかのコルチコステロイドには、投与薬剤のさまざまな選択肢を含む複数の研究が要求される。

 ケンタッキー州競馬委員会(Kentucky Horse Racing Commission: KHRC)のケンタッキー州馬薬物調査評議会(Kentucky Equine Drug Research Council: KEDRC)は2月、KHRCの馬医療担当理事であるメアリー・スカレー(Mary Scollay)博士が残る4つのコルチコステロイドについて研究を推進するための入札の実施を承認した。KEDRCはKHRCに対し、研究計画のために資金を提供するよう提言した。資金はパリミューチュエル賭事の税金から拠出される。

 スカレー博士は研究の必要性を表明するに当たり、競馬産業はRMTCを通じて研究結果を共有していることを強調した。各州が治療薬の規制と投与禁止期間のガイドラインを具体化するために情報にアクセスすることができるので、研究結果の共有は余分な業務を省くことができる。

 KEDRCのジェリー・ヨン(Jerry Yon)会長は、「コルチコステロイドの研究のような計画に資金を提供することは、私たちが望んでいる方向です。これは私たちにとって必要とされている情報の空白を埋めるのに役立つ絶好の機会です」。

 ウォーターマン博士は、これらの協力的な考え方を国際レベルにまで高めたいと考えている。

 同博士は次のように述べた。「情報を共有する意欲と動機づけがあります。同じ研究をしようとするに当たって限られた情報源しかないことを誰もが認識しています。私たちがある1つの研究のために費用を拠出して、その6ヵ月後にヨーロッパでも同じ研究が行われているとしたら、それはばかげたことです。それは協力とは反対の方向に向かっています」。

 KEDRCのメンバーであるアンディ・ロバーツ(Andy Roberts)獣医学博士とネッド・ボニー(Ned Bonnie)氏は、競馬産業が他の抗炎症剤への規制を強化したことから、コルチコステロイドの更なる研究は必要であると述べた。注射で繰り返しコルチコステロイドを投与されている馬は、治療された関節の動きを失い、引退後のキャリアにおいて役に立たない状態になっている、と長年にわたり引退サラブレッドを受け入れているボニー氏は指摘した。

 ロバーツ博士は、濫用について認識しているものの、研究されている数種類のコルチコステロイドは競走馬に素晴らしい治療効果を与えていると述べた。

コルチコステロイドとは何か?

コルチコステロイドは、副腎皮質内で自然にまたは人工的に作られるホルモンである。このホルモンは抗炎症ホルモンあるいは身体の化学安定性(恒常性)を調整する機能を持っている。

By Frank Angst

(関連記事)海外競馬情報 2010年No.18「タタソールズ社、初めてのステロイド検査を実施予定(イギリス)」

[Thoroughbred Times 2011年2月19日「Industry moves forward on corticosteroid withdrawal times」]
 


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