TOPページ > 海外競馬情報 > 発走後投票の防止などを目指すトート安全システムが発足へ(アメリカ)【開催・運営】
海外競馬情報
2011年02月25日  - No.4 - 2

発走後投票の防止などを目指すトート安全システムが発足へ(アメリカ)【開催・運営】


 パリミューチュエル賭事に関するリアルタイムのデータ送信のセキュリティについて野心的な構想が提案されているが、公正確保に関する懸念に的を絞った合理化案が幅広く取り入れられる絶好のチャンスとなるかもしれない。

 北米の41の競馬場を代表するサラブレッド競馬場協会(Thoroughbred Racing Associations:TRA)は、“トート安全システム(Tote Security System)”を運用するため、サラブレッド競馬保安協会(Thoroughbred Racing Protective Bureau:TRPB)の子会社が作成した実施計画を全会一致で承認した。競馬産業が、発走後投票の問題、締切直前のオッズの激しい変化、および不認可の場外馬券発売所による賭事受付を標的としている中で、このシステムは、重要なデータを勝馬投票者、競馬場、そして競馬統轄機関に提供すると同時に、賭事を停止する命令を発することができる。

 このシステムは当初、2007年以降広く報道されている発走後も投票が継続された事件が何件かあったのを受けて、賭事を停止する手順をシステムの中に追加することを目指していた。プログラマーたちはその計画を進めていく中で公正性に関する別の重要な問題にも対処できることに気が付いた、とTRPBのフランク・ファビアン(Frank Fabian)会長は述べた。現在、約25人のプログラマーがそのシステムに取り組んでおり、TRPBは18ヵ月のうちに試験的なシステムを、そして2013年には完全なシステムを立ち上げたいと考えている。

 ケンタッキー州競馬委員会(Kentucky Horse Racing Commission)の賭事の安全性に関する委員会に参加しているマイク・マロニー(Mike Maloney)氏をはじめとする大口馬券購入者たちは、発走後投票などの問題は現実に起こっているものであれ認識上のものであれ、賭事客の信頼を低下させ勝馬投票を減少させる原因になっている、と述べた。

 勝馬投票者の観点から見ると、このシステムは参加する競馬場に対し、2秒毎にリアルタイムの10進法表示のオッズを更新し、ビデオ表示によって顧客に示すことを可能にする。10進法オッズでは2.60対1のオッズが実際に2.60対1と表示されるが、現在、オッズが2.60対1の馬は5対2と(端数を切り捨てて)表示されている。もしその馬のオッズが下がって2.40対1になると、現在の方式では2対1として表示されている。つまり、現在のオッズの表示方法は、実際よりも劇的にオッズが変化するような感覚を生み出してしまうのである。新たな安全システムでは、まず、単勝のオッズに焦点が当てられるが、他の種類のオッズも追加する計画が作成されることになるだろう。

 競馬場の観点から見ると、このシステムに参加すれば、自らのトート・システムの外にある場外馬券発売所からの賭事を調査し、誰が賭事プールに賭事を行なっているのかを確認することが可能となる。

 従来のシステムに対する支持が不足していた一因は、経費である。ファビアン会長は、新しいトート安全システムは手頃な経費で導入できると考えている。というのは、新しいシステムは、経費という最大の問題に対処し、現在のシステムとは別に機能できるとともに、競馬場ばかりでなく賭事を受付ける馬券発売所にもサービス料金を請求することによって、広範囲から経費を拠出させるからである。

 ファビアン会長は、「私たちの目標は、常に公正なサービスとセキュリティを提供することにありました。だから私たちは、“効果的に取り組む方法を考え出し、公言はせずにその2つの問題への対処を試みてみよう”と思ったのです。その2つの課題は、成長に向けてのアキレス腱なのです。」と語った。

 TRAの上級副会長のクリス・シェルフ(Chris Scherf)氏は、トートのセキュリティ問題は、2002年のブリーダーズカップの後に、6重勝のような複数のレースを賭事の対象とする計画が発表されて以来大きな懸念材料となっていたと述べた。

 シェルフ氏は、「何を行なう必要があるか、そして何を行なうことができるかに焦点が当たるようになり、そのことが解決策につながりました」と語った。

 トート安全システムは、追加費用が生じる可能性のあるトート・システムの増強を行なわなくとも、非常に豊富なネットワークとなる。すべてのパリミューチュエル賭事業者は、そのシステムに参加することに同意し、その開発に貢献している。

 参加している競馬場からの信号の受取りを希望する場外馬券発売所は、トート安全システムを支援し、その料金を支払う必要があるだろう。トート安全システムは、コンテンツを制作する競馬場にも賭事受付業者にも恩恵をもたらすことから、幅広く採用されることをTRAは期待している。競馬場が受ける恩恵には、どの発売所が賭金を入れてくるのかが分かるとともに、顧客に最初の賭事プールの情報を提供できるようになることが含まれる。賭事停止の機能は、発走ゲートが開いたときに賭事停止の合図を音声と映像によって示すことにより、競馬場と場外馬券発売所に恩恵を与えることになる。そして、すでに発走しているレースを対象とした賭事を発売所が受け付けることはなくなるだろう。

 北中米競馬委員会協会(Association of Racing Commissioners International:RCI)のエド・マーチン(Ed Martin)会長は、システムの開発を賞賛するとともに、統轄機関が競馬産業と連携することを望んでいると述べた。

 RCIは、このシステムについてより多くの話合いを行うために、3月23日−26日にニューオーリンズで開かれる年次会議にTRPBの代表者を招待している。マーチン会長は、いくつかのリアルタイムのシステムが開発されあるいは使用されることになるので、馬の薬物問題と検査に焦点を当てている薬物規制標準化委員会(Racing Medication and Testing Consortium)のように、官民のパートナーシップを発展させることが可能になるだろうと述べた。

By Frank Angst

[Thoroughbred Times 2011年1月15日「Tote security system targets past-posting, odds shifts」]
 


上に戻る