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2011年11月18日  - No.22 - 3

ロマネ会長、薬物検査に関するアガ・カーン殿下の主張に反論(フランス)【獣医・診療】


 競走当日の一般薬物検査方針の確立と順守をしていないとアガ・カーン殿下(Aga Khan)から批判されたIFHA(国際競馬統轄機関連盟)を、そのトップであるルイ・ロマネ(Louis Romanet)氏が擁護した。

 IFHAのロマネ会長は10月5日に次のように語った。「私たちはまさにアガ・カーン殿下が要求していることを実行しています。つまり透明性を確保し、獣医師たちにできる限り科学的な情報を提供するよう努めています」。

 50年もの間英国とフランスで一流のオーナーブリーダーとして君臨しているアガ・カーン殿下は、パリで開催されたIFHAの年次会議において各国の代表者たちに、「競馬統轄機関の研究所が、これまでの古い検査方法から、ずっと低いレベルの薬物でも特定できる感度の良い新しい器具に置き換える際には問題が生じるものです。しかも検査方法の変更が競馬産業には開示されていません」と語った。

 同殿下はまた、現在の懸念は薬物使用の安全期間(薬物の最長検出時間)の問題であり、具体的にはフランスにおける抗炎症剤ベータメタゾンへの陽性反応についてであると語った。同殿下の所有する牝馬は、この薬物が馬体内に残留していたために2010年に失格となっている。

 ロマネ会長は、エド・ホートン(Ed Houghton)教授が議長を務めるIFHAの諮問委員会がいくつかの薬物使用の安全期間のリストを作ったが、ベータメタゾンはその中には含まれていないことを事実と認めた。

 しかし同会長は次のように続けた。「科学専門家は20の薬物について薬物使用の推奨安全期間をまとめたところであり、ベータメタゾンを含む他の薬物については現在取り組んでいるところです。今年末までに第2のリストを作る見込みです」。

 ロマネ会長は、たとえ科学者が薬物投与のタイミングで意見が一致してもそれは競走当日薬物検査に対する保証にはならないことを強調した。

 同会長は、「アガ・カーン殿下がベータメタゾンの検出期間は10日ないし18日までであると述べたとしても、それぞれの馬の代謝作用はさまざまです」と述べた。

 そして、次のように続けた。「すべての主要競馬国が馬主と調教師に、統轄機関が厳格な条件で実施し通常24時間以内に回答する“自発的薬物検査”を依頼する権利を与えているのはそのためです」。

「それはブラインドテストではありませんが、薬物が与えられているか、また薬物が馬体内に残留しているかを特定するには有効です」。

「多くの調教師が、厩舎に新しい馬を迎え入れる時にこれらのテストを利用しますが、馬主と調教師は何らかの理由で競走の前に利用するのは好まないようなので、リスクを負うことになります」。

「薬物使用の安全期間は、正直な人々が治療薬物を使用するケースの99%において役立つため重要です。しかし獣医師は競馬統轄機関の取締り対象ではないので、責任はいつも調教師にあります」。

 またロマネ会長は、アガ・カーン殿下のもう一つの非難である透明性の問題への回答として、今年合意したベータメタゾンを含む13の薬物の国際的なスクリ−ニングリミット(screening limits 訳注)が2012年にIFHAのホームページで発表される予定であると述べた。しかし薬物使用の安全期間は引き続き獣医師だけに公開されるだろう(訳注:スクリーニングリミットとは分析技術の進歩および検査機器の高性能化により、薬理的に意味の無い薬物の痕跡まで検出されてしまう問題を解決するため、理化学検査(出走馬の禁止薬物に関する検査)のスクリーニング検査時に適用される感度限界)。

 スクリ−ニングリミットは発表されるが、いくつかの国は自国の競馬ルールに組み入れることに反対すると思われる。

 英国、アイルランドおよびフランスを含む大半の欧州諸国が発表に反対している一方、アジアの競馬統轄機関は概ね賛成しており、薬物ルールへのスタンスは国により異なる。

 ロマネ会長は、「私はどの国も2〜3年以内にはスクリーニングリミットを発表すると思います。競馬統轄機関としては、発表の是非について法律専門家が異議申立てを行うだろうと認識しています」と語った。

By Howard Wright

[Racing Post 2011年10月6日「Romanet hits back at Aga’s drug test claims」]


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