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海外競馬情報
2011年11月18日  - No.22 - 2

アガ・カーン殿下、より明瞭な薬物検査方針を要求(フランス)【獣医・診療】


 アガ・カーン殿下(Aga Khan)はIFHA(国際競馬統轄機関連盟)に対して、何が容認され何が容認されないのかを完全に明確にした透明性のある競走当日の一般薬物検査方針を確立し、それに従うこととするよう求めた。

 パリで開催されたIFHAの年次会議において世界中から集まった主要競馬国の役員に向けて、アガ・カーン殿下は、薬物ゼロの競馬とゼロ・トレランス主義(ゼロ以外はすべて陽性)を強く支持していることを強調した。

 しかし同殿下は、「明確に定義され、全体に認識され、公平に実施される基準なしでは、薬物検査手続きはその信頼性と有効性を失います」と述べた。

 そしてこう付け足した。「競馬統轄機関の研究所が、これまでの古い研究方法から、ずっと低いレベルの薬物でも特定できる感度の良い新しい器具あるいは洗練された手法に置き換えるときには問題が生じるものです。実際にはこれらの新たに検出されることとなる薬物のレベルは、馬の成績に何の影響も与えないかもしれません」。

「競馬産業にこれらの変更を公表せず、調教師や獣医師が新しい判定基準を認識することができないならば、問題はこじれます」。

 殿下は所有していた1989年フランスオークス一着馬アリイサ(Aliysa)が薬物検査で失格になったことで、自身の英国での競馬人としての活動がどのように中断されたかを説明した。その中には、競馬を規制する立場にある研究所から、競馬の善良な施行ルールに反する科学的に最もずさんなやり方をされたことが含まれている。[訳注:アリイサは競走から約1年半後に失格が確定し、これが、アガ・カーン殿下がイギリス競馬から一時撤退する原因となった]。

 同殿下は10月3日、「私たちの産業においては、厳格で信頼できる的確な科学的コントロールがあまりにも欠如しているため、競馬をクリーンにするためにその技術を結集させるべきはずの馬主、調教師および獣医師を非倫理的な方向に走らせるという事態を招いています。」と語った。

 現時点で特に懸念していることは、“競馬関係者と統轄機関の研究所との間で大きな隔たりが浮き彫りとなった”フランスにおける抗炎症薬物ベータメタゾン(betamethason)に対する相次ぐ陽性反応であると同殿下は述べた。

 アガ・カーン殿下は次のように説明した。「私の知っている限りでは、これまでベータメタゾンの使用の安全期間(薬物の最長検出時間)につい競馬産業に助言した研究所はありません。従って、獣医師たちは常に14日以上経てば絶対安全であると信じ切っています」。

 同殿下は、名前を明かさなかったが、ある獣医師が14日間の安全期間を尊重しながら10年間にわたって3000回以上球節へ注射しても陽性反応は現われなかったと打ち明けたと述べた。

 そして、「現在ベータメタゾンの陽性反応はますます一般的になっています」と述べ、フランスでの科学的慣習を推測した上で自身の分析による手順書を作り、フランス側に検討を依頼したことを明らかにした。

 研究所の回答は、ベータメタゾン使用の安全期間を確立するにはより多くの検査が必要であるが、もしゼロ・トレランス主義を成り立たせるのであれば18日間でも安全ではないだろうというものであった。

 アガ・カーン殿下は、「獣医師と調教師を不明瞭な科学環境下で活動させ、その結果の後始末を彼らと馬主にさせることは受け入れられません」と付言した。

By Howard Wright

[Racing Post 2011年10月4日「Aga Khan in call for more clarity over drug-testing policy」]


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