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TOPページ > 海外競馬情報 > ドバイの経済問題は競馬に影響を与えるか?(ドバイ)【開催・運営】
海外競馬情報
2010年02月12日  - No.3 - 1

ドバイの経済問題は競馬に影響を与えるか?(ドバイ)【開催・運営】


 ドバイの経済および財政の問題は、英国の競馬産業がいかにドバイの首長モハメド殿下(Sheikh Mohammed)とその家族および関係者によって支えられ、依存しているかを勘案すれば、英国競馬産業にとって衝撃的な問題である。

 競馬の歴史において、モハメド殿下とその家族および関係者に比肩しうる投資はこれまでになく、今後二度とないだろう。さらに、これまでのような金額の投資が永久に続くこともないだろう。

 2009年11月末にドバイの投資複合企業ドバイワールド社(Dubai World)が莫大な債務返済問題を抱えていることが明らかになったとき、生計と将来的な野望をマクツーム一族の競馬およびサラブレッド生産に依存してい る者は肝を冷やした。同じように感じた者は英国だけではなく、アイルランド、フランス、豪州、米国、日本そしてドバイ国内にも大勢いた。全世界の競馬の将 来に突然暗雲が垂れ込めたのである。

 時間は慣れを根づかせる。モハメド殿下がニューマーケットのタタソールズ社(Tattersalls)の10月セールで初めて1歳馬を購買してから33 年の月日が流れた。もし英国競馬が同殿下からの莫大で絶え間ない投資を当然のこととして享受していなかったら、それが慣れとして根づくこともおそらくな かっただろう。

 1977年にブライトン競馬場でモハメド殿下の所有馬ハッタ(Hatta)が優勝し、1980年にレッドカー競馬場でハムダン殿下(Sheikh Hamdan)の所有馬マシュレフ(Mushref)が優勝した。このような小さいどんぐりから、巨大な森が生い茂り、今や世界的に展開された彼らの競馬 事業はその規模を正確に図ることができないほど膨大である。1985年以降最優秀馬主の地位は、マクツーム一族、つまりモハメド殿下、ハムダン殿下、ゴド ルフィン社(Godolphin)およびモハメド殿下の妻ハヤ王女(Princess Haya of Jordan)が占有してきた。ただし、2000年はアガ・カーン殿下(Aga Khan)、2001年はクールモア牧場(Coolmore)、2003年はカリド・アブドゥラ殿下(Khalid Abdullah)が最優秀馬主に輝いた。

 マクツーム一族のセリにおける購買、競馬事業、サラブレッド生産、施設改善計画と管理作業、スポンサーシップと慈善寄付で行なわれる投資は、“出費のエ ベレスト山”として表現されている。マクツーム一族は直接あるいは間接に膨大な数の労働力を雇用した。彼らの多くは、気前のよい条件で雇われ、マクツーム 一族は個人、企業、団体および経済活動を裕福にした。英国その他の国における競馬の質および競馬観戦の愉しみに与えた影響も言わずもがなである。

 1982年よりマクツーム一族とその関係者は、英国のクラシック競走を45回制しており、以下のスター馬を含む印象深い競馬歴史絵巻を形成している。そ れは、オーソーシャープ(Oh So Sharp)およびナシュワン(Nashwan)、ディミヌエンド(Diminuendo)およびインディアンスキマー(Indian Skimmer)、バランシーン(Balanchine)およびラムタラ(Lammtarra)、シングスピール(Singspiel)およびスウェイン (Swain)、デイラミ(Daylami)およびドバイミレニアム(Dubai Millennium)などである。

 1994年以降は世界中でドバイのためにゴドルフィン社のロイヤルブルーの勝負服を背に走った功労馬の名簿は続いていく。ドバイはとりわけ、1996年 にドバイワールドカップ、2004年にドバイ・インターナショナル・レーシング・カーニバルを創設したことで、競馬の国際化を促進してきた。

 後世に語り継がれるクールモア牧場との途方もないオークションでの勝負が展開されてきた。時には、白熱したセリの勝者が現実的に考えれば敗者であったこ ともある。それは1983年にモハメド殿下が1020万ドル(約10億2000万円)で購買したスナアフィダンサー(Snaafi Dancer)が一度も出走しなかったことや、2006年にクールモア牧場とその共同馬主たちが最終的には1600万ドル(約16億円)で購買したザグ リーンモンキー(The Green Monkey)が2006年のシーズンを未勝利に終わり結局引退したことなどである。

 そして、モハメド殿下は1980年代前半に英国のアストンアップソープ牧場(Aston Upthorpe Stud)とダルハムホール牧場(Dalham Hall Stud)および愛国のキルダンガン牧場(Kildangan Stud)を購買しサラブレッド生産の帝国を築いた。また、ハムダン殿下はニューマーケットのシャドウェル・エステーツ牧場(Shadwell Estates Stud)と愛国のデリンズタウン牧場(Derrinstown Stud)およびケンタッキーのシャドウェル牧場(Shadwell Farm)、そして故マクツーム殿下(Sheikh Maktoum)はニューマーケットのゲインズボロー牧場(Gainsborough Farm)、愛国のウッドパーク&バリーシーハン牧場(Woodpark and Ballysheehan Studs)そしてケンタッキーのゲインズボロー牧場(Gainsborough Farm)を購買した。

 モハメド殿下は1990年前半までには、主な拠点である英国と愛国だけではなく、フランス、米国およびドバイに合計2000頭の繁殖牝馬、種牡馬、仔馬 および現役馬を1人で所有していていた。ダーレー社の看板のもと、マクツーム一族のサラブレッド生産事業はケンタッキーに根を下ろし、それは豪州や日本に も及んだ。ダーレー・オーストラリア社(Darley Australia)は2001年に設立され、同年に種牡馬16頭を繋養していたケンタッキーのジョナベル牧場(Jonabell Farm)がダーレー社により購買された。


ドバイを襲う経済問題

 2007-08年冬に遡る世界的な不況の始まりは、国際的な金融制度の大混乱、悪夢のような金融恐慌および不動産関連市場の低迷が特徴的であった。金融市場に対する信頼は損なわれ、依然として脆弱である。

 モハメド殿下のカリスマ性のあるリーダーシップの下、ドバイの急速な発展は一流の建設計画、とりわけ7つ星の最高級ホテルであるブルジュ・アル・アラブ (Burj Al Arab)、人工のパームアイランド(Palm Islands)および世界一の高層建築物ブルジュ・ドバイ(Burj Dubai)に象徴される。エミレーツ航空(Emirates Airline)やゴドルフィン社を含む世界的な勢力を有する企業群は、その国土の小ささにも関わらずドバイへの注目度を向上させた。ドバイは石油埋蔵量 には限度があり先細りしているため、これに取って代わる産業として、国際的な経済低迷に影響を受ける建設、貿易、観光および金融サービスを発展させてき た。そのため2008年よりドバイの不動産価格は急降下し、建設計画は失速し、経済活動と雇用レベルは大きな落ち込みを見せた。

 商業活動と政治活動が混然とし、昔から取引が非公開であるため、非常に困難な状況においても強気の分析が行なわれてきた。しかし主要な投資計画を統一す るために2006年に設立されたドバイワールド社は、総額590億ドル(約5兆9000億円)の負債を積み重ねた。これはとりわけ、土地開発の子会社ナ キール社(Nakheel)に関連している。2009年12月14日までに35億ドル(約3500億円)、そしてその数ヵ月以内に90億ドル(約9000 億円)の返済が迫られたドバイ政府は、債権者に少なくとも2010年5月末まで返済を猶予するよう依頼し、国際金融市場を不安に陥れた。

 アラブ首長国連邦(7つの首長国からなる連邦国家)のリーダーである石油資源に恵まれたアブダビがドバイを助けて安定を確保させるために措置を取るだろ うが、それを即座に行わなかった事実を鑑みれば、隣国ドバイに保守的なアプローチをとるように望んでいることを示しているのかもしれない。ドバイは、国際 的な投資家の間で損なわれた信用を修復する必要があるだろう。


競馬に影響は及ぶか?

 アラブ首長国連邦の副大統領兼首相でありドバイの首長であるモハメド殿下は、ドバイの富の同義語となった。ドバイ政府はアラブ首長国連邦の商取引におい て主役を演じており、ドバイ経済の健全性に関する懸念が将来のマクツーム一族の競馬界での活動に疑問を投げかけることは必至である。

 モハメド殿下は世界の競馬産業からのドバイへの注目度を維持することに傾倒している。モハメド殿下の生産顧問であるジョン・ファーガソン(John Ferguson)氏は、殿下の個人財源はドバイワールド社と関係しておらず、競馬は殿下の私的な関心事であるので、ドバイの現在の経済問題は競馬および 生産事業には影響を与えないだろうと強調した。モハメド殿下とマクツーム一族の人々は一人一人が桁外れに裕福である。

 現在のところ、競馬事業縮小の兆候は確認されていない。ドバイはすでに2010年ドバイワールドカップを開催する総工費15億ポンド(約2550億円) の新競馬場メイダンを建設するのに専念していたが、モハメド殿下は2009年に、アンドレ・ファーブル(Andre Fabre)調教師がフランスのシャンティイで経営するロートシルト厩舎施設(Rothschild Stables)、豪州のウッドランズ牧場(Woodlands Stud)とその厩舎およびケンタッキー州のストーナーサイド牧場(Stonerside Stable)を購買した。

 豪州のウッドランズ牧場の購買には約1000頭の馬が含まれていると伝えられており、ストーナーサイド牧場には2000エーカー(800 ha)の土地と250頭の馬が繋養されており、これらは莫大な投資であった。2009年においても経費削減の兆候はなく、ドバイの首長は下落しているセリ 市場を下支えしていると評価されている。

 ビル・オッペンハイム(Bill Oppenheim)氏はサラブレッド・デイリー・ニュース紙上(Thoroughbred Daily News)において、2009年の欧州と北米の主要な1歳馬セールにおいて、マクツーム一族とその関係者は上場馬8690頭のうち376頭(4%)を購買 し、その購入額は総売上げ5億7100万ドル(約571億円)のうちの17%を占めたと述べている。それとは対照的に、クールモア牧場はたった42頭の上 場馬しか購買しなかった。近年の大規模なマクツーム一族の投資は1歳馬ばかりでなく、大レースを勝ちあがった種牡馬候補馬の見込み買いとしても行われた。

 もしマクツーム一族がセリ市場から退場したら、新たな資本の大規模な流入がなくなり、その影響は非常に大きなものとなるだろう。同じことが世界中の調教 や生産の事業にも当てはまる。特にこの25年間トップトレーナーの多くがマクツーム一族の支援の恩恵を受けてきたイギリスがそうである。ジョン・ダンロッ プ(John Dunlop)調教師はマクツーム一族のために30年以上調教活動を行っており、バリー・ヒルズ(Barry Hills)、マイケル・スタウト(Michael Stoute)、ジョン・ゴスデン(John Gosden)、クライヴ・ブリテン(Clive Brittain)およびマイケル・ジャーヴィス(Michael Jarvis)の各調教師もまた、マクツーム一族およびその関係者と非常に長きにわたる協力関係を結んでいる。

 マクツーム一族とその関係者の所有馬のうち少なくとも775頭が2009年、英国の平地競走に出走した。その数字は2008年の全出走馬頭数の7%に相 当する(2009年の全出走馬頭数はまだ確認されていない)。所有馬のうち500頭がニューマーケットに在厩しており、ゴドルフィン社の182頭がサイー ド・ビン・スルール(Saeed Bin Suroor)調教師、ハムダン殿下とハヤ王女の70頭がゴスデン調教師、主にサイード・マナナ(Saeed Manana)氏の61頭がブリテン調教師、そしてハムダン殿下とアフメド殿下(Sheikh Ahmed)の54頭がジャーヴィス調教師により管理されている。

 ミドルハムのマーク・ジョンストン(Mark Johnston)調教師は2009年、主にハムダン殿下、モハメド殿下の子息およびドバイの皇太子のために140頭ものマクツーム一族の所有馬を出走さ せた。ランボーン調教場ではマーカス・トレゴニング(Marcus Tregoning)調教師が主にハムダン殿下のために39頭、ヒルズ調教師が同じくハムダン殿下のために28頭を調教し、すぐ隣のウエストイルスリー調 教場ではミック・シャノン(Mick Channon)調教師がジャバー・アブドゥラ(Jaber Abdullah)氏とアフメド殿下の所有馬31頭を調教し、出走させた。

 2009年の競馬シーズンにおいて、同じくマクツーム一族が所有する馬のうち、これよりも多い数の現役馬が調教されたが出走しなかった。これらの競馬コ ミュニティーにおいて、マクツーム一族の所有馬の数が急落した時の社会的・経済的影響は明らかに相当なものとなるだろう。マクツーム一族は常に最高の調教 料を支払ってきたので、年間の合計額は莫大なものである。マクツーム一族の英国でのサラブレッド生産事業は言うまでもなく、セリに関連する支出を考慮しな ければ、年間2000万ポンド(約34億円)ほどの調教料が支払われている。直接的および間接的にマクツーム一族の競馬事業から利益を享受している者たち への大幅な事業縮小による連鎖反応は、切実なものとなるだろう。


死活的な問題?

 今後数ヵ月後および数年後に何が起きるか予測することは、ドバイの経済と政治の将来およびマクツーム一族の将来の展望に関わってくる。アブダビの介入の 範囲とその内容、ドバイの経済回復のスピードと将来の経済的成果、そしてモハメド殿下時代における需要の変化はすべて、マクツーム一族とその関係者の競馬 活動に影響を与えるかもしれない。

 マクツーム一族の富、とりわけ現在60歳のモハメド殿下および63歳の兄ハムダン殿下の富は、ドバイの経済問題に妨げられることなく彼らが競馬への情熱 を追い求めることを可能したとしても、ドバイの現状は英国競馬が1つの投資元だけから利益を享受していることに対する強力な注意喚起であり警告である。た とえ新たな皇太子が父親の競馬および馬に関する他の活動への情熱を受け継いだとしても、将来の投資は同じレベルで維持されることはないだろう。

 モハメド殿下は英国競馬と国際競馬に対して独特で膨大な貢献をした。殿下が今後もそれを長年続けることは望ましいが、モハメド殿下はたった1人しかいな い。英国には多くの裕福な人々がいるが、競走馬を有している人々はごくわずかである。競馬変革プロジェクト(Racing for Change)の目標の1つは、新たに富裕層に仲間入りした多くの人々を競馬に惹きつけ、競馬に投資してもらうことである。

By David Ashforth

モハメド殿下、莫大な負債についての騒動を鎮めるために乗り出す

 モハメド殿下は、問題に過剰反応するメディアと金融市場を非難し、ドバイの負債に関する懸念を消し去ろうと努めている。

 ドバイの複合企業であるドバイワールド社が11月末に360億ポンド(約6兆1200億円)の決済に関して6ヵ月の猶予期間を申請したことをうけての公 開の回答において、モハメド殿下は記者たちに、「ドバイワールド社は政府から独立した企業です。大げさなメディアの騒動は私たちの決定には影響を及ぼさな いでしょう。私たちがこのキャンペーンと大げさなメディアの騒動に同調しないことは当然です」と述べた。

 その後外国の株式市場に起った下落に関して、同殿下は、「彼らは何も理解していません。私たちは強靭であり、粘り強いです。これは石を投げる人の標的となった実りが多い木です」と語った。

 モハメド殿下は、アブダビの首長でありアラブ首長国連邦の大統領であるカリファ殿下(Sheikh Khalifa Bin Zayed Al Nahyan)に支持されている。カリファ殿下は、アラブ首長国連邦の経済について、良い状態にあり現在の国際経済の困難な状況に耐えていくことができる と表現した。

 モハメド殿下のコメントとドバイワールド社が負債のほぼ半分を再編成することを検討しているというニュースは、ロンドンの株式市場の際立った回復と重なった。

By Jon Lees


ドバイの指標となる数字

33年前:モハメド殿下の所有馬ハッタ(Hatta)がブライトン競馬場で優勝し、英国での1勝目を挙げる。
590億ドル(約5兆9000億円):投資複合企業ドバイワールド社が積み重ねた負債。
35億ドル(約3500億円):2009年12月14日までの決済予定だったが支払が延期された負債。
9500万ドル(約95億円):マクツーム一族とその関係者の欧州および北米の主要1歳馬セールでの支出。世界のすべての1歳馬セールの総売上げの17%を占める。
2000万ポンド(約34億円):英国におけるマクツーム一族所有馬の調教料の概算
15億ポンド(約2550億円):2010年1月28日開場のメイダン競馬場の総工費。

(1ドル=約100円、1ポンド=約170円)


[Racing Post 2009年12月4日「Racing taken so high by Dubai There’s a long way to fall」]
[Racing Post 2009年12月4日「Sheikh moves to calm storm over huge debt」]


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