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海外競馬情報
2009年03月19日  - No.6 - 1

低単価のスーパーフェクタ馬券、売上げ好調(アメリカ)【開催・運営】


 サム・ヒューストン競馬場は4年前に、サラブレッド競馬で初めてスーパーフェクタ(4連単馬券)の発売単価を10セント(約10円)に引き下げ、馬券発売単価低額化の先駆けとなった。

 発売単価の低額化が流行する一方で、発売単価の引下げが売上げ増に寄与するか否かについて掘り下げた研究はほとんど行われていない。サラブレッド競馬協 会(Thoroughbred Racing Associations)の副会長クリス・シャーフ(Chris Scherf)氏は、緻密な調査を望んでいる。

 調査項目は、スーパーフェクタの売上高の変化率と他の馬券の売上高の変化率の比較、売上総額に占めるスーパーフェクタの売上高シェアおよび同馬券の購買 顧客数である。低額単価の馬券が売上総額を増加させるか、それとも他の馬券の売上げを食い売上総額の増加につながらないか、この調査の結果によって判明す るだろう。

 シャーフ氏は、「この調査の是非について議論はあります。しかし、競馬ファンたちはこの馬券を支持しています。それを指摘するのは私だけではありません。調査結果が楽しみです」と述べた。

 グレイハウンド競走で始まった10セント単価賭事は、瞬く間にサラブレッド競馬場でスーパーフェクタの標準的な発売単価となった。スーパーフェクタは、 特定のレースにおいて4着までを着順どおり的中させる馬券である。発売単価の引下げによって、賭事客はより多くの組合せで賭けることができるようになる。 1通りの組合せが1ドルであったときには24通りの組合せで購入金額が24ドル(約2400円)であったのに対し、現在では少額馬券購入者でも2.4ドル (約240円)で同数の組合せに賭けることができる。

 サム・ヒューストン競馬場の競走役であるエリック・ジョンストン(Eric Johnston)氏は、同競馬場が2005年2年17日に初めて10セント馬券を発売したことに誇りを持っていると述べた。

 同氏は、「私たちはそれを大変誇りに思っています。しかし面白いことに、激しい非難も受けました。多くの競馬場の役員たちは10セント単価馬券は売上げを減らすことになると言っていましたが、その後考えを改めました」と述べた。

 サム・ヒューストン競馬場は10セント単価スーパーフェクタの恩恵を受け、2006-07年には売上高が45%増加した。

 2007年秋、ニューヨーク競馬協会(New York Racing Association: NYRA)はスーパーフェクタの最低単価を10セントに変更し、その効果に注目した。

 初めてすべての開催で10セント単価のスーパーフェクタを発売したアケダクト競馬場の2007-08年冬春開催では、同馬券の売上高は30.6%増加し、同様にベルモントパーク競馬場の2008年春開催では28.3%増加した。

 NYRAのチャールズ・ヘイワード(Charles Hayward)会長は、「10セント単価のスーパーフェクタで売上げが飛躍しました。これに尽きます。これまでの商品ラインの展開の中で、この馬券は秀逸です」と述べた。

 2008年のサラトガ開催最終週および同年のベルモントパーク秋開催第1週の延べ2週間にわたり、NYRAは10セント単価のスーパーフェクタ馬券の売 上げの内訳を調査した。発売されたスーパーフェクタ馬券の72%は10セント単価であり、それはスーパーフェクタの総売上げの36%を占めた。スーパー フェクタ馬券の28%は1ドル単価で賭けられており、それは総売上高の64%を占めていた。

 ヘイワード会長は、「発売単価の引き下げは、より多くの賭事客にスーパーフェクタへの挑戦意欲と潜在的に払戻金を得る可能性を与えました。10セント単 価のスーパーフェクタ馬券の購入者は一般的に、1ドル単価の購入者より、ボックスや流しを利用して多数の組合せを作り、馬券を楽しんでいます」と語った。

 小口の馬券購入者は10セント単価馬券で的中チャンスが増える。ジョンストン氏は、10セント単価馬券は初心者向け馬券の役目を果たしていると指摘した。

 その一方、10セント単価馬券を購入することで確定申告や税の天引きを回避できるので、大口馬券購入者にも多くのファンがいる。これらの賭事客は払戻金が確定申告レベルを下回るように、1枚の1ドル単価馬券を購入するよりも10枚の10セント単価馬券を購入する。

 競馬場関係者は依然として、賭事客が馬券購入金額を減らしたり、この馬券で他の馬券の売上げが食われるのではないかと懸念している。トライフェクタ (trifecta)の組合せに10ドル(約1000円)賭ける賭事客が現在ではスーパーフェクタの組合せに8ドル(約800円)しか賭けていないかもし れない。発売単価の引下げで、どの商品の売上げが食われるのか注目するのも重要だろう。

 ジョンストン氏は、「この馬券が他の馬券の売上げを食うことが懸念の1つです。しかし厳しい経営環境で、この馬券は私たちの商品の中では最大の控除率 25%が設定されているので、たとえ控除率17%の単勝、複勝あるいは3着払い複勝の売上げを食ったとしても、賞金と収益の面では良いことなのです」と 語った。

 また、賭事客は一般的にスーパーフェクタの多数の組合せを購入するのに時間が掛かり、時には発売窓口に長い行列ができる。

 それでもやはり、スーパーフェクタは賭事客には非常に人気がある。北米競馬賭事客協会(Horseplayers Association of North America)は、10セント単価のスーパーフェクタを提供する競馬場を高く評価をしている。そのことを念頭に置くと、低額単価馬券の人気は今後も高ま り続けるだろう。

 

(関連記事)海外競馬情報2007年No.20「馬券金額の引き下げがもたらす影響(アメリカ)」

By Frank Angst
(1ドル=約100円)


[thoroughbredtimes.com 2009年2月23日「Four years in, ten-cent superfecta going strong」]


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