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TOPページ > 海外競馬情報 > 1歳馬セール価格と競走成績に影響を与える仔馬の大きさ(アメリカ)【生産】
海外競馬情報
2009年11月13日  - No.22 - 4

1歳馬セール価格と競走成績に影響を与える仔馬の大きさ(アメリカ)【生産】


 仔馬(当歳馬と1歳馬)の大きさ、すなわち体重・体高[身長:地面か ら背骨の頂点(き甲)までの高さ]は、セリ価格および競走能力に影響するか。これは馬主と生産者からよく受ける質問である。仮に馬は大きいほど良いとした 場合、大きい1歳馬を所有することにマイナス面はないのだろうか。

 過去20年にわたり、ケンタッキー州馬研究所(Kentucky Equine Research: KER)は、レキシントンのホールウェイ・フィーズ社(Hallway Feeds: HF)と協力して、数千頭のサラブレッド当歳馬の発育と成長を調査した結果、上記の質問に対する答えを得た。

 1990年代の初頭から、HFは顧客である生産牧場の当歳馬の計測調査を実施してきた。当歳馬は毎月、体重と体高を測定される。当歳馬の体脂肪も身体状 態評点法[body condition scoring system:1980年代の初めにテキサスA&M大学のドン・ヘネッケ(Don Henneke)博士が開発したシステムを応用したもの]に基づいて評価される。この評点法は、栄養状態をカテゴリー1(極端に痩せている)からカテゴ リー9(極端に太っている)まで9つのカテゴリーに分ける。若いサラブレッドは一般に、年齢と栄養レベルに応じてカテゴリー4から6までの身体状態に分か れる。

 各測定値は、KERが開発したグロ‐トラック(Gro‐Trac)というソフトウェア・プログラムに記録された。生産者はこのプログラムを使って、当歳 馬の成長率を追跡し、それを品種、年齢、性および地理的場所を同じくする当歳馬の成長率と比較することができる。当歳馬の成長率は、標準成長曲線ともにグ ラフで表示される。KERは、世界中の1万3,000頭を超える当歳馬のデータに基づいた標準成長曲線を保有している(※1)。

 遺伝的に同じであっても、サラブレッドの成長率は育成された地理的場所の影響を受ける。例えば、米国産サラブレッドは、月齢6ヵ月、12ヵ月および 18ヵ月で英国産サラブレッドより体重が重く、月齢15ヵ月から18ヵ月までは豪州産サラブレッドとニュージーランド産サラブレッドより体高が低いという 傾向が見られる。


骨格系疾患

 確かに、大きい当歳馬と1歳馬が一定の骨格系疾患にかかりやすいと信じる理由はある。成長中の当歳馬がかかる骨格系疾患には、いくつかのタイプがある。 これらの疾患は、まとめて発育期整形外科疾患(developmental orthopedic disease: DOD 異常な骨形成に起因する発育障害)と呼ばれている。DODには、骨端炎、肢軸異常、関節拘縮、ウォブラー症候群(椎骨あるいは靱帯の変形により頸髄が 圧迫されることを原因とする後躯の運動失調)および離断性骨軟骨炎(osteochondritis dissecans: OCD)が含まれる。一般的には、過剰なエネルギー摂取が急速な成長と体脂肪の増加をもたらし、若馬をDODにかかりやすくすると理解されている。

 KERが行った実地調査は、仔馬の大きさが骨格系疾患に影響するという考えを裏づけている。ある調査では、ケンタッキー州中部にあるサラブレッド牧場の 当歳馬271頭の成長が4年間にわたってモニターされ(※2)、OCD手術の事例も記録された。それによれば、当歳馬の10%がOCDの手術を必要とし た。飛節と後膝にOCD疾患が発症した1歳馬の体重は、ケンタッキー州馬の平均と比べて、日齢25日で10ポンド(約4.5kg 約5%)重く、また日齢240日で30ポンド(約13.6kg 約5%)重かった。

 KERの別の調査によって、1歳馬の体重と身体状態評点(body condition score)がOCDの病因の1つとなる可能性があることが確認された。この調査では、ケンタッキー州中部の6ヵ所の牧場で218頭の離乳馬が、血糖反応 (glycemic response:血糖に対する体の反応)とOCDの発生の関係を評価するため、毎月1回体重と体高が計測された(※3)。

 この調査におけるOCDの全発生率は11.5%で、前述の調査と近似しているが、個々の牧場におけるOCD発生率はかなりばらつきがあった。血糖反応が 高い当歳馬はOCDの発生率が高く、血糖反応が低い当歳馬はOCDの発生率が低かった。当歳馬の飼料の血糖指数(glycemic index:摂食後の血糖上昇の指標)がこれらの相違の要因であった。加えて、体重と身体状態評点も要因であった。

 調査において、2つの牧場ではOCD発生率が非常に異なっていた。1つの牧場は、OCDが発生しなかったが、別の牧場は19頭の当歳馬のうち6頭が OCDの手術を必要とした。両牧場の当歳馬の体高は近似していたが、2つ目の牧場でOCDの手術を必要とした当歳馬は、体重がかなり重く、また他の当歳馬 よりも身体状態評点がかなり高かった。

 これらの調査結果と経験則は、大きい1歳馬は一定のOCDにかかる傾向が大きいことを示唆している。それでも大きい1歳馬を所有することに、潜在的なリ スクを上回る利益があるのだろうか。大きい1歳馬はセリにおいて必ず高額で売れるのだろうか。これは、マーケットブリーダー(生産馬を販売することを主目 的としている生産者)にとって確かに当を得た質問である。


調査対象となった1040頭の1歳馬

 1歳馬の大きさがセリにおいて重要視されるか否かを明らかにするため、KERはHFと協力して3年間にわたりキーンランド9月セリに上場された1040頭の1歳馬の大きさと価格の関係を調査・分析した(※4)。

 これらの1歳馬のうち、80%は購買されたが、20%は主取り(reserve not attained: RNA 販売希望価格非到達馬)としてリストに載せられた。1040頭のうち購買された馬の平均価格は10万4149ドル(約1041万4900円)、中 央値は3万5000ドル(約350万円)であり、セリ全日程における購買馬の平均と近似していた。この調査における1歳馬の平均日齢は、524日であっ た。牡馬の平均体重は1014ポンド(約460 kg)であり、これは牝馬の平均体重974ポンド(約442 kg)よりもかなり大きかった。牡馬はまた牝馬と比べて体高がかなり高かった。

 サラブレッド1歳馬のセリ価格に影響を与える要因は、血統、馬格、兄弟姉妹馬の競走成績など多様である。キーンランド協会(Keeneland Association)は1歳馬を血統と馬格に基づいて分別しており、これに基づいて長期間実施される大規模セリをセッション毎に振り分けて実施してい る。広範な差異があることを考慮して、データはまずセッション毎に分析された。RNAとなった1歳馬あるいはセッション価格の中央値を下回って購買された 1歳馬またはセッション価格の中央値を上回って購買された1歳馬の日齢に大きな差はなかった。

 しかし、体重には差があった。価格の中央値より高く購買された1歳馬は、セッション価格の中央値より安く購買された1歳馬、あるいはRNAとしてリスト に載せられた1歳馬よりかなり体重が重かった。セッション価格の中央値より高く購買された1歳馬はまた、かなり体高が高かった。

 KERは多数の馬の成長データを記録しているので、個々の当歳馬と1歳馬の体格は、全計測値の百分位数(percentiles:計測値の分布を小さい 方から並べて、ある個体の位置を全体のパーセントで表した数字)によって表示される。これは、日齢または性にかかわらず、個々の馬の大きさの程度を知る正 確な方法である。

 百分位数によるデータでも、上述の生の体重データに関する分析結果が再確認された。すなわち、セッション中央値を超えて購買された1歳馬は、体重がかなり重かったことが改めて証明された。

 百分位数が計算された後、1歳馬の体重と体高はさらに四分位に、すなわち全頭馬が4つの階級に分けられた。1040頭の上場1歳馬を4つに分けた結果、 各々の中央値に大きな差があることが明らかになった。すなわち、最も小柄な1歳馬の中間価格は、約2万2000ドル(約220万円)であった。中央値は階 級順に高くなり、4番目の階級の1歳馬の中央値は、ほぼ5万ドル(約500万円)であった(棒グラフ参照)。


競走成績

 データは、セリにおける価格が1歳馬の大きさに関係することを明確に示している。購買者は、より大きい1歳馬は優れた競走馬になると認識している。この 認識は、正しいのだろうか。この疑問に答えるため、KERは当歳馬および1歳馬の大きさと競走成績との相関を調べるために大規模な調査を実施した。

 競走成績データは、1996年から2002年の間に米国で育成された3734頭のサラブレッドから収集され、またさまざまな生育特性が競走馬としての成 功と相関があるかどうかを明らかにするために、それらの馬の生育記録が過去にさかのぼって調査された(※5)。これらの馬の体重と体高が、それぞれ、当歳 時、離乳時および1歳時に毎月1回測定された。これらの測定値は、米国で育成されたサラブレッドから収集された全頭データを用いて百分位数に転換された。

 2歳時に出走した馬は、2歳時に出走しなかった馬よりも体重がかなり軽く、かつ体高が低かった。興味深いことに、すべての年齢グループにおける最軽量馬 は、最重量馬より出走回数が著しく多かった。このことは、軽量馬が重量馬より健全であることを示しているのかもしれない。他方、ステークス競走勝馬および 重賞競走勝馬は、その他の馬よりも重く、かつ体高がかなり高い傾向があった。

 G1競走勝馬および収得賞金額100万ドル(約1億円)超の馬も、1歳時の体重と体高はかなり大きかった。収得賞金額が100万ドル(約1億円)超の 21頭の平均体高は、第78百分位数であった。これは、21頭の平均体高が、3734頭のサラブレッドの78%より高いことを意味している。

 我々は、馬の成長を調べることにより、馬がステークス競走勝馬になる可能性を予測できるだろうか。我々は、1歳馬がステークス競走勝馬になる可能性を予 測するため、さまざまな成長測定値および種牡馬アーニング・インデックス(種牡馬別の産駒収得賞金に関する指標)を多変量解析(観測値が複数の値からなる 多変量データを統計的に扱う手法の総称。互いに関連する多数のデータを統計的に分類し相互関連を分析する)に組み入れた。測定値には体重百分位数、体高百 分位数、種牡馬アーニング・インデックスおよび生まれ月が含まれている。当歳馬の場合、体高百分位数は、ステークス競走勝馬になる可能性をかなりの程度ま で推計できた統計(model)に含まれる唯一の変数であった。すなわち、体高百分位数が大きい当歳馬は、ステークス競走勝馬になる確率が高かった。

 一般的に、体重百分位数が極端に高い1歳馬や極端に低い1歳馬は、ステークス競走勝馬になる確率は低かったが、体高百分位数が高い1歳馬はステークス競 走勝馬になる確率が高かった。種牡馬アーニング・インデックスは、体重百分位数が低かった場合にのみ重要であった。したがって、ステークス競走勝馬になる 可能性が最も大きい1歳馬は、体高が高いが、体重があまり重くなく、しかも高い種牡馬アーニング・インデックスを持っていた。


結論

 これらの調査によって、大きい1歳馬を持つことのリスクと利点が判明した。すなわち、大きい1歳馬は骨格系疾病にかかるリスクが高いが、これらの馬は体高が高くて体重があまり重くない場合はセリにおいて高額で取引され、優れた競走馬になる。

 したがって、馬の過度な体重増加を防ぎつつ、骨格が安定的に成長していくよう、発育期と育成期に馬の体重と体高を測定することを推奨する。

 

1歳馬の大きさは、セリ価格および将来の競走成績と大きな相関が認められる。棒グラフは、体重および体高と中央値の関係を四分位数で示している。体重の重 い1歳馬は、競走馬生命が比較的長いかもしれない軽量馬より価格の点で顕著な優位性を有している。体高が高くて、体重があまり重くない1歳馬は、ステーク ス競走勝馬になる可能性が最も大きい。


参考文献

(※1) C.G. Brown-Douglas and J.D. Pagan。2006年。「アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドおよびインドで生産されたサラブレッドの体重、体高および成長率 (Body weight, wither height, and growth rates in Thoroughbreds raised in America, England, Australia, New Zealand, and India)」。2006年ケンタッキー州馬研究所主催馬栄養学術集会の講演集録(In: Proc. 2006 KER Equine Nutr. Confer)pp.15−22。

(※2) J.D. Pagan。1998年。「ケンタッキー州サラブレッド牧場における成長期整形外科疾患の発生率(The incidence of developmental orthopedic disease (DOD)on a Kentucky Thoroughbred farm)」。J.D. Pagan編「馬の栄養向上」。ノッティンガム大学出版部、英国ノッティンガム(In: Advances in Equine Nutrition. Nottingham University Press, Nottingham, U.K.)pp.469−475。

(※3) J.D. Pagan, R.J. Geor, S.E. Caddel, P.B. Pryor and K.E. Hoekstra。2001年。「サラブレッド離乳後当歳馬の血糖反応と離断性骨軟骨炎発生の関係:実地調査(The relationship between glycemic response and the incidence of OCD in Thoroughbred weanlings: A field study)」。全米臨床獣医師協会の講演集録(In: Proc. Amer. Assn. Equine Practnr.)47:322−325。

(※4) J.D. Pagan, A. Koch, S. Caddel and D. Nash。2005年。「キーンランドセリに上場されたサラブレッド1歳馬の体格がセリ価格に影響(Size of Thoroughbred yearlings presented for auction affects selling price)」。馬科学協会の講演集録(In: Proc. Amer. Equine Sci. Soc.)19:234−235。

(※5) C.G. Brown-Douglas, J.D. Pagan and A.J. Stromberg。2006年。「サラブレッドの成長および将来の競走成績(Thoroughbred growth and future racing performance)」。2006年ケンタッキー州馬研究所主催馬栄養学術集会の講演集録(In: Proc. 2006 KER Equine Nutr. Confer.)pp.125−139。

 引用された各調査の全文掲載版は、ケンタッキー州馬研究所のウェブサイト(http://ker.com)により無料で入手できる。本件に関するオンラインセミナーをはhttp://ker.com/webinar/TB sizeで閲覧できる。

 

By Joe D. Pagan, PH.D.
<(1ドル=約100円)


[Thoroughbred Times 2009年9月5日「Size matters at yearling sales」]


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