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海外競馬情報
2009年01月23日  - No.2 - 3

大手海外ブックメーカー、今後アメリカのレースを提供せず(アメリカ)【開催・運営】


 大手海外ブックメーカー、ピナクルスポーツ社(Pinnacle Sports)が北米競馬の賭事を提供することを止める決定をした。たとえその理由が明らかではなくとも、この決定は重要な意味をもつ。

 自らを“インターネット上の大手スポーツベッティングサイト”と称するピナクルスポーツ・ドットコム(Pinnaclesports.com)は、12月15日にアメリカのレースに関する賭事の提供を止めることを発表した際にその理由をほとんど説明しなかった。

 同サイトは、「顧客の北米競馬に対する関心が薄れつつあることに加えて、競馬産業に様々な変化が生じたので、我が社は満足できるレベルで賭事を提供するのが難しい状況にあります」と述べている。

 この決定はアメリカが法的な圧力を強めた結果である可能性もある。電信法(Wire Act)違反を根拠として、司法省はいくつかの海外賭事サイト業者の幹部を逮捕した。また、違法インターネット賭博禁止法(Unlawful Internet Gambling Enforcement Act 2006年制定)の施行規則は、銀行などの金融機関に対して、賭事客と違法インターネット賭事サイト間の取引(送金)を停止することを要求してい るが、この施行規則がまもなく実施される。

 海外金融調査の専門家であるビル・キスビー(Bill Kisby)氏は、ますます多くの海外賭事サイトがアメリカの顧客に対するサービスを停止していると述べた。同氏によると、これらのサイトは取引額と法的なリスクを秤にかけていると言う。

 アメリカは免許を取得した電話投票(advance-deposit wagering: ADW)サイトを利用してのパリミューチュエル賭事は認めているが、賭けを受け付ける海外サイトにおける賭事は歓迎していない。その理由は、海外ブック メーカーへ賭けられた賭金はパリミューチュエルのプールに入らないので、競馬場やホースマンの収入につながらないからである。

 2008年度の北米サラブレッド競馬におけるパリミューチュエルの賭金は10億ドル(約1000億円)減少し、1998年以来始めて140億ドル(1兆4000億円)を下回るだろう。

 賭金の7%をリベートとして支払うピナクルスポーツ社やそれに類似するサイトは顧客にとって魅力的である。2008年は、ADW運営業者への競馬映像配 信をめぐる紛争が、全ての映像情報を提供する海外ブックメーカーに顧客が流れた一因ともなった。例を挙げると、免許を取得したADWサイトを利用している 顧客は、2008年チャーチルダウンズ競馬場やコールダー競馬場でのレースに賭けることが出来なかったが、ピナクルスポーツ社はこの両者のレースを提供し ていた。

 免許を取得しているADW運営業者のプレミア・ターフクラブ社(Premier Turf Club)は海外賭事サイトの顧客を取り戻そうと試みていた。同社の最高経営責任者イアン・メヤーズ(Ian Meyers)氏にとって、ピナクルスポーツ社の今回の決定は歓迎すべきものであった。

 メヤーズ氏に確信はないが、他のサイトもピナクルスポーツ社の動きに続くであろう。

 メヤーズ氏は、「しかし、海外ブックメーカーは依然としてあちこちに多数存在するので、ピナクルスポーツ社の動きが当面アメリカの競馬場の助けになるとは思いません」と述べた。

 オバマ政権がインターネット賭事の問題にどのように取り組むか、今後数ヵ月は様子を見る必要がある。

 

By Frank Angst
(1ドル=約100円)


[Thoroughbred Times 2008年12月20日「Leading offshore bookmaker no longer offering North American races」]


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