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海外競馬情報
2009年09月18日  - No.18 - 5

競馬界は何よりもブックメーカーへの法的措置を望んでいる(イギリス)【開催・運営】


 ラドブロークス社(Ladbrokes)やウィリアムヒル社 (William Hill’s)が海外に拠点を移すことは、政府にオンライン賭事税の減税を迫る圧力となる。しかし財務省(Treasury)はブックメーカーにニンジン を与えるより、むしろ鞭を振るう気になるだろう。

 8年前、ウィリアムヒル社の当時の会長ジョン・ブラウン(John Brown)氏によるキャンペーンを受けて、政府は大手ブックメーカーが海外事業を英国に戻すことを条件に、賭事税を従来の売上げ課税からブックメーカー に有利な粗利益課税に切り替えた。賭事税が変更された2001年10月に、英国賭事店協会(British Betting Offices Association)のウォリック・バートレット(Warwick Bartlett)会長は、「英国の賭事産業は今や、世界の賭事センターになることができます」と述べた。

 ブラウン氏は2002年末、「過去最高益を上げたことに満足しています。新たな賭事税によって、ブックメーカーが英国で運営した賭事事業への課税額が顕著に減少しました」と報告した。

 ラドブロークス社の最高運営責任者クリス・ベル(Chris Bell)氏もまた、新たな賭事税を“成長の賦活剤”と表現し最高益を報告し、同社を所有するヒルトン・グループの最高経営責任者デヴィッド・ミッチェル ズ(David Michels)氏は“賭事企業が政府から受けた前例のない好機である”と認めた。

 ブックメーカーが政府から獲得したものには、新たな賭事税だけではなく、規制の撤廃もある。規制の撤廃によってゲーム機(固定オッズ発売端末Fixed Odds Betting Terminals)事業が大当たりし、これが賭事市場で競馬のシェアが低下傾向をたどる原因の1つとなった。現在、ウィリアムヒル社はゲーム機8700 台以上を運営しており、一方ラドブロークス社は約8000台を運営している。ゲーム機は現在、ウィリアムヒル社の売上げの41%を占めており、ラドブロー クス社の売上げの38%を占めている。

 ウィリアムヒル社の最高経営責任者ラルフ・トッピング(Ralph Topping)氏は、2006年から課税されている娯楽機免許税(Amusement Machine Licence Duty)は2001年に賭事税を変更した際の経緯からみて問題であると糾弾する挑発的な声明を出した。 2001年の賭事税変更のあとに規制の撤廃があり、これを受けて固定オッズ発売端末の事業が展開し、いまや金の卵となっている。

 ウィリアムヒル社とラドブロークス社は現在、他の賭事業者と同様に、とりわけインターネット賭事に注力している。ラドブロークス社のオンラインによるe ゲーミング(eGaming)事業においては、カジノ、ポーカーおよびビンゴはスポーツ賭事よりもずっと重要である。ラドブロークス社では2009年上半 期に、インターネット賭事売上げに占めるスポーツ(競馬を含む)賭事の売上げは36%に過ぎなかった。

 政府は、トッピング氏の“政府はブックメーカーの成長を望んでいない”という非難を認めるつもりはなく、賭事税(粗利益に対する15%課税)の問題はブックメーカーが海外に拠点を移す原因となるという主張も容易に認めない。

 ウィリアムヒル社とラドブロークス社の2009年上半期の業績を見ると、オンラインでもオフラインでも、好況期に比べると業況が悪化している。ただし、 ラドブロークス社は、“賭事会員が9.4%増加し、ビンゴなどで持続的成長が期待されているeゲーミング部門は順調な成長を見せた”と報告している。

 税制だけを問題にしているのではない。例えばラドブロークス社はポーカーのサイトでは米国居住者から賭事を受付けているが換金手続きに不利があると不満 を述べている。不況下でも、ウィリアムヒル社のインターネット事業は、新規顧客が30%増加し、純収益(見込み)が12%増加した。

 政府はどのような法的措置を取るのだろうか?すでに政府は英国を本拠とする賭事業者を救済する方法を鋭意検討している。財務省は、現行の取り決めから ゲーム機も粗利益課税に移行するための事前協議を始めている。このことはレベニューニュートラル(訳注:増税による税収の増加と減税による税収の減少が同 額で、全体としての税収が変化しないこと。増減税同額)のレベルで税率を設定する計画であることが示されているが、税収入の減少に直面してさらに制度変更 をせざるを得なくなる可能性もある。

 ブラウン氏は2000年当初に粗利益を基にした20%の賭事税を提案していた。財務省は、ウィリアムヒル社とラドブロークス社がジブラルタルに移転した 場合に生じる税収減を埋め合わせるため、現行の賭事税率を15%から引き上げるかもしれない。あるいは競馬賭事賦課金の率の引上げ提案を支持することも辞 さないだろう。そうすれば賭事税収入と賦課金収入は急増するだろう。

 競馬賭事賦課公社(Levy Board: 賦課公社)は、海外ブックメーカーに対して協力金の支払いを要求し、賭事客、競馬場およびメディアに対して法令を遵守していない企業との取引をしないよう 要請し、またスポンサーシップを取り止めるよう要請する。しかし、政府が法的措置を講じてくれる方が競馬界にはより望ましい。とはいえ、それは賦課公社を 退職しようとしているロブ・ヒューズ(Rob Hughes)会長の希望的観測にすぎない。

 ヒューズ会長の後任は弁護士のポール・リー(Paul Lee)氏である。リー氏は、海外ブックメーカーも賦課金を支払う法的義務があるというヒューズ会長の考えを受け継ぐだろう。

 ブックメーカーが海外に拠点を移すと、競馬界が依存してきた賦課金の収入が減少するので、それを補完するための法的措置が一層重要になる。

 

By David Ashforth


[Racing Post 2009年8月7日「Government action offers the best hope for racing」]


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