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TOPページ > 海外競馬情報 > トレーニングセールにおけるタイム偏重の弊害(アメリカ)【生産】
海外競馬情報
2008年04月18日  - No.8 - 3

トレーニングセールにおけるタイム偏重の弊害(アメリカ)【生産】


 セリ上場馬へのステロイド(筋肉増強剤)投与を規制すべきであるという大合唱が鳴り響き、しだいに大きくなっている。しかし、ステロイド投与禁止を取りいれ、それを広めていくだけでは、競馬界は他の重要な問題に取り組む機会を逃すことになる。

 トレーニングセールに上場される2歳馬について、ステロイドは重要な治療手段として使用が認められてきた。2歳馬のコンサイナーは、年初には馬を展示走行させる状態に仕上げていなければならず、多少の治療薬物は、食欲を維持することと、調教の過酷さを克服することに大いに役立つと述べている。しかし、残念なことに、トレーニングセールで馬が仕上がっていることは、必ずしも競馬に出走できるように仕上がっていることを意味しない。

 展示走行で最後の200メートルを11秒で走る馬が評判を呼んだのは、それほど遠い昔ではない。現在では11秒のタイムを出しても、無視される可能性がある。なぜであろうか。それより速いタイムに皆の関心が移ったからだ。そこで問題なのは、コンマ何秒という差が不合理に重視されていることにある。

 2000年から2002年の間にトレーニングセールで売却された2歳馬に関して、ブラッドホース社のマーケットウォッチ(MarketWatch:ニュースレター)が2004年に行った調査の結果は以下のとおりである。

1  展示走行の際に200メートルを10秒で走った馬(Aグループ)の平均価格は47万8,273ドル(約5,260万円)で、10秒2/5で走った馬(Bグループ)の平均価格は17万1,846ドル(約1,890万円)であり、その差は、30万6,427ドル(約3,370万円)であった。
2  1歳時におけるこれら2つのグループの仕入価格の平均は、Aグループが8万7,947ドル(約967万7,100円)、Bグループが8万3,815ドル(約921万9,700円)であり、その差は、4,132ドル(約45万4,500円)に過ぎなかった。

 買い手が10秒を出した馬に対してそれほどの金額を支払うのなら、展示走行で9秒4/5で走る馬(3月9日フロリダ州オカラにおける展示走行でこのタイムを出した馬がいた)に対してどれほどの金額を支払うであろうか。おそらく、かなりの高額を支払うだろう。その場合、この金額はある日の午後における1回だけの展示走行で出たタイムであることを考えずに、またその馬は実際のレースでそのようなタイムを再び出す可能性は極めて少ないにもかかわらず支払われることになる。

 より大きな疑問は、若馬に厳しい調教を強いるのが長期的にみて賢明であるか否かということである。治療薬物は、問題の一面に過ぎない。あるサラブレッド売買仲介業者は、コンサイナーは厳しい日程という罠にかかっていると述べている。1歳馬セリで購買されて2歳の2月に売却するのであれば、1歳の12月後半までに追い切りをしなければならない。この間、購買からおよそ4ヵ月しかない。これは、自然の法則に反する仕組みだと言う人もいる。

 1歳馬市場からもある教訓を得ることができるだろう。キーンランド協会(Keeneland Association)は2002年以降、7月1歳馬特別セリを開催していない。このセリを復活させる場合の障害の1つは、キーンランド9月1歳馬特別セリの売上げが継続して伸びていることである[昨年9月の同セリの総売上げは、約1億4,540万ドル(約159億9,400万円)であった]。コンサイナーは、1歳馬を成長させるための時間に2ヵ月の余裕が出来たことを歓迎している。

 1歳馬は、2歳馬と同じような過酷な調教を受けることはないが、ステロイドの投与が1歳馬市場にも影を落としている。2歳馬と同じく、すべての条件を兼ね備えた1歳馬−すなわち馬格がよく、レントゲン写真で欠陥が見られず、内視鏡の検査の結果がよく、かつ超一流の血統を有する1歳馬−には高額な代金が支払われる。これらの条件のいずれかを欠く馬は、売却価格が著しく低下する。

 ただし、“資本主義のもとでは最良馬は高額な代金をもたらすはずである”と誤解してはいけない。現実には、価格が品質に対応していないことがしばしばある。このような状況において、かつ、過熱した1歳馬市場が落ち着きを見せ始めている中、馬が可能な限り人目を引くようにすることに売り手がいっそうの切迫感を抱くのはやむを得ないことである。一部の売り手にとって(人間のプロスポーツ選手のように)、この切迫感は治療薬物の助けを借りることを意味する。この場合のリスクは何であろうか。それは、(1) セリ時の馬体は堂々としているが、売却後に筋肉が“萎縮する”ことによって新規の客が離れること、(2) 若馬に投与されるステロイドの長期的影響について十分に分かっていないことである。

 解決策は複雑であるが、つまるところ売り手と買い手の双方にいっそうのホースマンシップが必要だということである。ステロイドを禁止したうえで、セリ上場馬のステロイド陽性反応に対して何らかの措置を講じることは、解決に向けた第一歩である。不正の輩は、いつの世にも存在するのだが、彼らは可能な限り大きな制裁を受けるべきである。他方、買い手とその代理人も何らかの責任を共有すべきである。

 買い手も許容範囲の欠点に拘泥せず、公正な市場価格を負担しよう。市場に売り手と買い手のバランス感覚が欠けると、連邦政府はステロイド問題を利用して誰も望まない規則を導入する可能性がある。

By Eric Mitchell
(1ドル=約110円)

[The Blood-Horse 2008年3月15日「What’s Going On Here−More Horsemanship」]


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