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海外競馬情報
2008年03月07日  - No.5 - 6

カリフォルニアにおいて人工馬場に関する公開討論会開催(アメリカ)【その他】


 2月20日にサンタアニタ競馬場で、カリフォルニア州の人工馬場についての公開討論会が開催された。調教師たちの意見はまちまちだが、人工馬場は従来のダート馬場に比べ、出走頭数などの興行面と、命を救うことが困難な予後不良の事故率においては好ましいことが明らかになった。他方、同競馬場のロン・ チャールズ(Ron Charles)場長は討論会の席上で、問題となった人工馬場を開催終了後に取り替えると発表した。

 サンタアニタ競馬場では、1月5日から2月4日まで水はけ問題が続いたために、11日間開催が中止された。

 カリフォルニア州競馬委員会(California Horse Racing Board: CHRB)は、この問題のために1日がかりの会議を開くこととした。参加者は、騎手、人工馬場製造業者および専門家、調教師、獣医師、馬場管理者、競走役、馬主、ハンディキャッパー、競馬場理事などである。

 ちなみに、ハリウッドパーク競馬場は2006年秋開催の前に、カリフォルニアで初めてダート馬場に替わってクッショントラックの人工馬場を導入し、また、CHRBは州内のすべての主要競馬場に対して、2008年初めまでに人工馬場を敷設することを要求していた。

 カリフォルニア州サラブレッド馬主協会(Thoroughbred Owners of California)のドゥルー・コウトー(Drew Couto)会長は、馬券売上げ、賞金収入、出走頭数は、人工馬場を持つカリフォルニアの競馬場のあらゆる開催において増大していると述べた。コウトー会長は、サンタアニタ競馬場の今期開催で2007年夏に敷設したクッショントラックに多くの問題が起きたことには触れなかった。

 CHRBの馬医療担当理事であるリック・アーサー(Rick Arthur)博士は、カリフォルニア州内の人工馬場で施行された競馬を総括すれば、予後不良事故が以前のダート馬場に比べて60%減少したという統計を示した。

 調教師のなかで、ボブ・バファート(Bob Baffert)調教師、ジョン・シレッフス(John Shirreffs)調教師、ジュリオ・カナーニ(Julio Canani)調教師は人工馬場に対して頑なに反対している。

 最近、馬主のアハメド・ザヤド(Ahmed Zayat)氏は、サンタアニタ競馬場の人工馬場を不満として、カリフォルニアを拠点としている所有馬を州外に移動させた。このため、バファート調教師は前途有望な3歳馬を失った。同調教師は、「私たちは危機的状況にあります」と述べた。

 バファート調教師は、実際に利用するまでは人工馬場を支持していたが、人工馬場は朝と午後で状態が違うことを理由に、デルマー競馬場のポリトラック馬場(2007年夏に新設)に対する批判を口にした。

 バファート調教師は、「私は人工馬場の問題に巻き込まれました。現在、人工馬場は試験的段階にあるように思われます。私には人工馬場が競馬産業にダメージを与えているように思えます。私たちは人工馬場の製造業者に不良品を掴まされました。彼らは事前の商品説明と異なる馬場を売りつけました。人工馬場は、最良馬あるいは最速馬が勝つべきサラブレッド競走の根本を軽視するものです」と述べた。

 ロン・エリス(Ron Ellis)調教師は、バファート調教師を批判して、「あなたは全体ではなく、自分の厩舎しか見ていません」と語った。エリス調教師は、ダーレー牧場 (Darley Stable)やクールモア牧場(Coolmore)の馬がカリフォルニアに増えたことや、ハリウッド競馬場のトッド・プレッチャー(Todd Pletcher)調教師やH.グラハム・モーション(H. Graham Motion)調教師に馬が送られたことを引き合いに出した。

 バファート調教師はそれに対し、エリス調教師が2005年サンタアニタダービー(GI)の優勝馬ブザーズベイ(Buzzards Bay)をオークロンパーク競馬場のダート競走に出走させるために州から移動させようとしていると反論した。

 シレッフス調教師は、後肢の故障と肺出血がかなり増えたと語った。

 逆にデーヴィッド・ホフマンズ(David Hofmans)調教師は、自身の厩舎では人工馬場への変更によって、故障の割合が低くなったと述べた。

 ホフマンズ調教師は、「馬のキャリアを終わらせるような深刻な故障はなく、小さな故障を経験しただけで競走に戻すことができました。そのため、以前に比べると馬を入れ替える割合が少ないので管理馬が多すぎるという問題があります」と述べた。

 獣医師の委員会において、ジェフ・ブリー(Jeff Blea)医師は診察データから、人工馬場の敷設後、後肢と蹄部の故障が増えたものの、脛部の故障が減ったことに気がついたと語った。

 カリフォルニア大学デイヴィス校のグレッグ・フェラーロ(Greg Ferraro)氏は、人工馬場に関するデータを収集するために全国委員会(期間5年)を立ち上げることを提案した。

 騎手委員会(メンバーは、ギャレット・ゴメスGarrett Gomez、デーヴィッド・フロレスDavid Flores、ゲイリー・スティーブンスGary Stevens)は、人工馬場を強く支持している。ゴメス騎手とフロレス騎手は、人工馬場での競走は押圧されたダート馬場と比べて乗りやすいと語った。

 6時間におよぶ討議の終了まぎわに、ハリウッド競馬場のユール・ワイアット(Eual Wyatt Jr.)場長は、次のように語った。「おそらく満場一致ではありませんが、私が本日うかがったところでは、人工馬場は以前の馬場よりも良いと考えられています。CHRBが人工馬場を敷設することを命じた理由は、より良い馬場を持つことであったと思います。私はひところ、この要求は時期尚早と思いましたが、今ではむしろタイムリーであったと思います」。

 同場長は、「私たちはプラス思考で計画を進め、人工馬場敷設のために掛かった経費4,000万〜5,000万ドル(約48億〜60億円)を取り戻すために、技術を駆使しなければなりません。私たちは団結してそれを行う必要があります」と付言した。

By Jeff Lowe
(1ドル=約120円)

[thoroughbredtimes.com 2008年2月21日「Forum shows business upside, trainer contention over synthetic surfaces」]


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