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TOPページ > 海外競馬情報 > 仔馬の適切な蘇生法(アメリカ)【生産】
海外競馬情報
2008年02月22日  - No.4 - 2

仔馬の適切な蘇生法(アメリカ)【生産】


 馬の治療において心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation:CPR)が必要となる状況は、頻繁に起きることではないが、実際に必要となるのはきわめて深刻なときである。CPRは最近、 心肺脳蘇生(cardiopulmonary cerebral resuscitation: CPCR)と呼ばれている。CPCRは、脳への十分な酸素供給を確保する自発的な血液循環(心臓拍動)および正常な呼吸数の回復を意味する。

 異常分娩、すなわち難産は、病弱な仔馬、心臓疾患か呼吸困難のある仔馬あるいは両方を持つ仔馬をもたらすことがしばしばある。心臓疾患と呼吸困難は、獣 医師や飼主がCPCRを必要とするもっともありふれた事態である。これらの事態はしばしば起きることがないため、CPCRの実施方法はあまり普及していな い。しかし、仔馬の生存はすばやい意思決定およびCPCRの迅速な実施によって左右されるため、必要となる前にCPCRの正しい実施法を学ぶことが重要で ある。


状況の認識

 レキシントンにあるヘイガード馬医療研究所(Haygard Equine Medical Institute)の内科専門医であるネイサン・スロヴィス(Nathan Slovis)獣医学博士は、仔馬におけるCPCRに関して獣医師と飼主に講義を行う際に5つのP(Prior Planning Prevents Poor Performance)、すなわち“事前計画が不十分な結果を防ぐこと”を強調している。

 事前計画の1つは、どのような事態がCPCRを必要とするかを知ることである。

 スロヴィス博士は、異常分娩が病弱な仔馬または疾患のある仔馬を産む共通の事態であると考えている。仔馬が産道を通る際に生じる問題は、仔馬の向きが悪 いことや胎児の大きさと母馬の骨盤との不釣合い、あるいは母馬の十分な子宮筋肉の収縮を妨げる状況から起きることがある。

 このような状況にある胎児は、呼吸することのできない産道で、母馬から十分な血液(酸素)供給を受けずに長い時間を過ごす可能性がある。そうした分娩で虚弱な仔馬が生まれたり、もっと悪い事態が生じることがある。

 異常分娩をしたことのある母馬、問題のある母馬または問題のある仔馬を産む可能性が非常に高い母馬など、危険度の高い母馬は、病弱なまたは疾患のある仔 馬を産まないよう注意深く監視されるべきである。敗血症にかかっている仔馬、重度の細菌感染症をもって生まれた仔馬またはその他の臓器系疾患を持って産ま れた仔馬もCPCRを要する可能性がある。

 正常に発育している新生仔馬と病弱でストレスを受けている新生仔馬をすばやく見分けることが重要である。新生仔馬の健康を測定するひとつの方法は、アプ ガー採点法(Apgar score)である。これは、小児科医であるバージニア・アプガー(Virginia Apgar)医学博士によって開発されたもので、新生仔馬の身体評価に用いられる。この採点法に基づいて、仔馬の心拍数、呼吸数、筋緊張度および神経感覚 /神経反応が評価される。その評価の観点は以下のとおりである。

 

  1. 正常な仔馬は、出生後直ちに呼吸を開始し、その呼吸は力強くかつ規則正しい。タオルや麦わらで仔馬をこすると、呼吸数が増加する。
  2. 仔馬の出産中の心拍数は、1分間当たり40回であるが、正常の仔馬の心拍数は、出生直後には1分間最低60回に増える。遅くて弱い心拍は、問題がある徴候である。
  3. 仔馬は、産まれて最初の5分以内に体を丸くして、うつぶせに寝ることができるようになり、耳を触られると頭を振り動かし、鼻腔粘膜組織を麦わらで触れられたり、刺激されたりすればくしゃみをするか鼻を鳴らす。

これらの明確な反応を示さない仔馬は、虚弱でストレスを受けていると考えられ、注意深く観察する必要がある。仔馬の心拍数、呼吸数および神経反応が低下し続ける場合は、ある時点でCPCRが必要となることがある。


基本原則

 スロヴィス博士は、「新生仔馬に呼吸努力がない場合、呼吸が不十分な場合、あるいは呼吸努力は十分でも仔馬に十分な酸素が供給されていない場合は何らかの換気方法が開始されるべきです」と述べている。

 蘇生の基本原則における最初の処置、すなわち“第1番目の処置”は、“仔馬の気道の確保”である。最初に気道を確保しなければ、十分な換気または酸素供給を行うことは不可能である。

 気道を確保するためには、まず仔馬の鼻孔から粘液、胎盤およびその他の流動物を取り除く必要がある。飼主の多くは、仔馬の頭を下にして持ち上げ、引力に よって鼻孔から流動物を排出させるか、気道から流動物を取り除くために頭を下にした状態で仔馬を振り動かすのが一般的である。仔馬の鼻孔から粘液や流動物 を取り除くため、ターキー・バスター(スポイトの一種)または鼻腔洗浄器を使用することもある。

 口の洗浄は必要ない。これは馬が絶対的鼻呼吸動物、すなわち口で呼吸することができないためである。

 気道から流動物を取り除いたら、蘇生の“第2番目の処置”である“呼吸の確保”を開始する。

 呼吸は、仔馬の蘇生にとって最も重要な要素であると考えられている。カリフォルニア大学デービス校(University of California at Davis)の内科専門医であるジョン・マディガン(John Madigan)獣医学博士は、その著書『新生仔馬医学マニュアル(Manual of Equine Neonatal Medicine)』において、「“最初の呼吸”を開始させることが、呼吸を確保するために必要なすべてのことである」と書いている。

 呼吸を開始させるための補助呼吸法には多くの方法がある。最も迅速でかつ最も容易な方法は、“口対鼻呼吸法”である。この蘇生法の手順は以下のとおりである。

 

  1. 仔馬の鼻孔から流動物やその他のものをふき取るか、または取り除く。
  2. 仔馬の頭と首の側面を地面と平行にして、頭と首を十分に伸ばす。
  3. “下側”の 鼻孔の最下部を手で押すか、つまむか、手を当てて塞ぐ。
  4. “上側”の 鼻孔に口を当て、胸部が徐々に膨れるようになるまで鼻孔に力強く息を吹き込む。これによって、およそ500〜1,000 ml.の空気が肺に送られる。この量の空気は、過度のふくらみによる損傷を肺に起こさずに肺を十分に膨らませる。

 この補助呼吸は、1分間に30〜60回の割合で行われるべきである。スロヴィス博士は、仔馬が自発的に呼吸しているかどうかを確認するため、30〜60 秒に1回、仔馬をチェックするよう勧めているが、このチェックの時間は10秒を超えるべきでないと警告している。10秒以上酸素なしでいることは、すでに ストレスを受けている仔馬に悪影響を与える可能性があるからだ。

 その他、アンビューバッグ(救急蘇生バッグ)や鼻マスク(人工呼吸マスク)を使用する方法がある。バッグまたはマスク全体が仔馬の鼻孔と口にかけられ、 アンビューバッグでは、圧縮されていた空気が肺に強制的に送られる。これらの方法を用いる場合、空気が胃にも強制的に送られないように注意しなければなら ない。これは、胃が膨張すると、肺を膨らませるのがいっそう困難になる可能性があるためである。

 空気が正しく肺に送られると、胸部は膨らむが、そうでない場合は、胸部の膨らみは少ない。胃に入った空気は、胸部を広げまたは膨張させることにつながる が、呼気にともなうべき胸部の収縮はない。過剰な空気が仔馬の胃に入っていく場合は、仔馬の姿勢を変えるか、別の補助呼吸法が用いられなければならない。

 酸素タンクにつないだフェイスマスクまたは鼻孔チューブも用いることができる。獣医師は通常、仔馬に経口または経鼻の気管内チューブを挿入して、それを酸素供給タンクにつなげる。

 蘇生の基本原則における最終処置、すなわち“第3番目の処置”は“血流の確保”である。そのための手順として、胸部の圧迫が用いられる。スロヴィス博士 は、胸部の圧迫は胸郭ポンプ理論に従って行われると述べている。すなわち、胸部の圧迫は、胸郭内の圧力を高める。この胸郭内の圧力の高まりは、心臓および 胸部の大血管から血液を送り出し、血管の一方弁が血液の流れを導く。

 心臓の圧迫は、人の場合には容易である。これは人の背部が比較的平らで心臓の圧迫が容易であることから、良好な血流をもたらしやすいからである。仔馬 (および動物一般)の胸はビヤ樽のような形で、圧迫は機械的に効率がよくないため、はるかに弱い心臓の圧迫しかもたらされない。

 胸部の形の相違およびその結果として起こる圧縮血流の差異は、CPCRが人よりも動物の場合のほうがはるかに非効率である主な理由のひとつである。スロ ヴィス博士によると、人の場合におけるCPCRの成功率は、10〜15%であるが、獣医学における成功率は10%に満たない。

 仔馬の胸部の過大な圧迫は、よく起こる問題である。肋骨の骨折および肺と心臓の損傷は、胸部の過大な圧迫に伴う厄介な問題であり、仔馬の位置の調整およ び適切な胸部の圧迫法がこの損傷を軽減するのに役立つ。ジョージア大学(University of Georgia)の動物医学の研修医であるケルシー・ハート(Kelsey Hart)獣医学博士は、胸部の圧迫を適切に行うための方法を次のように説明している。

  1. 胸部の“下側”の接触面を増やすために、胸骨に沿って仔馬の胸部の下に丸めたタオルまたは他の支えを入れ、圧迫した時に仔馬が転がる可能性を少なくする。
  2. 仔馬にまたがるか、または仔馬の胸部と肩の上に自分の上半身の重心をもってくる。
  3. 一方の手の掌を仔馬のひじの後ろの胸部に置き、他方の掌を下の手の甲に重ねる。
  4. 短く力強く胸部を圧迫する。

 人の場合の胸部の圧迫は、1分間に100〜120回の割合で行われるが、仔馬の場合には1分間に100回の胸部の圧迫が推奨される。

 心拍数と脈拍を定期的にチェックすべきであるが、スロヴィス博士は弱い心拍が始まった場合にあっても、早い段階で胸部の圧迫をやめないよう警告している。

 同博士は、「反復的な心拍停止と呼吸停止は、これらの仔馬によく起きることであり、不断の監視が必要です」と述べている。


2人による分業

 1分間に100回の胸部の圧迫を行う傍ら、2〜10分間、口対鼻呼吸法を1人で実施することは想像以上に困難である。

 蘇生が成功するためには十分に酸素を含む血液が脳に送られる必要があるため、補助呼吸と胸部圧迫は同時に行われなければならない。これは通常、2人で行 う作業である。すなわち、1人が気道から流動物を取り除き、もう1人は胸部の圧迫を行う。蘇生を行う者が1人しかいない場合は、胸部を圧迫したうえで、鼻 孔に息を吹き込んで胸部を膨らませるために、きわめて短い間だけ胸部の圧迫をやめることは可能であるが、1分間に100回の胸部の圧迫と30回の呼吸を行 うすばやい周期的反復が必要である。

 1人でCPCRを行う場合は、1分間当たりの胸部の圧迫を減らすよりも1分間当たりの補助呼吸を減らすほうが無難である。2人で蘇生を行う場合は、人の CPR訓練で教えられるように、補助呼吸と胸部の圧迫を厳密に調和させる必要はない。各人は、補助呼吸と圧迫の周期を維持しさえすればよい。


価値ある試み

 蘇生の成功率はさほど高くないものの、新生仔馬と若い仔馬の世話に携わっている獣医師は、飼主にCPCRの実施方法を学んで、必要なときに試みるように 勧めている。仔馬が蘇生したという報告は数多くあるが、実際のところ、気道確保、補助呼吸及び胸部圧迫の開始までの経過時間と成功率の関係について述べる ことは困難である。

 仔馬の蘇生はまさに、救急医療に関する言い習わしが当てはまる領域の1つである。すなわち、絶対に行われなければならない数少ない事柄を完全に理解し、それらが機能することを信じることである。


CPCRは、成馬にはそれほど有効でない

 動物病院以外で、成馬に対して十分な補助呼吸を行うことは、ほとんど不可能である。成馬の肺を膨らませるのに必要な大量の空気は、人工呼吸器や補助器具なしに生み出すことはできず、これらの器具は実際の緊急時に入手することは不可能である。

 したがって、成馬にCPCRが試みられることはめったになく、また成功することはまれである。

 胸部の圧迫は、成馬に試みられる場合、ひじの真後ろにある馬の胸部に加えられる屈位または立位からの“ニードロップ”による胸部の圧迫によって行われ る。数分間以上にわたり60回(1秒当たり1回)のニードロップ圧迫を成馬に加えることは、物理的に大変な労力を要し、ニードロップ圧迫でも生命を維持す ることが可能な血圧に達し得ないことが調査によって判明している。しかし、ニードロップ圧迫の努力は、心臓蘇生薬を使用する迄の間、生命を引き伸ばせるこ とがあるため、試みる価値がある。

 蘇生に成功した馬に関する若干の事例報告があるが(750ポンド[約340 kg]を超える馬についてはない)、これらのすべて馬は気管内チューブの挿入や人工呼吸器使用が直ちに可能であった臨床環境または研究環境で処置されたものだけである。

By Kenneth L. Marcella, D.V.M.

[Thoroughbred Times 2007年12月1日「ABCs of foal resuscitation」]


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