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海外競馬情報
2008年08月01日  - No.15 - 4

欧州から見た世界の国際競走(連載4 香港)【その他】


 ヨーロッパ調教馬は近年、12月に開催される香港国際競馬で活躍している。香港ヴァースで最近5回優勝し、また最近5回の香港カップのうち4回で勝ち星を挙げている。香港国際競馬が近年、ディラントーマス(Dylan Thomas)、ウィジャボード(Ouija Board)およびプライド(Pride)といった優秀なヨーロッパ馬を呼び寄せることができたのは、おそらくこれらの開催が北半球における平地競走シーズンの終了後に行われ、世界で参戦できるほかの高額賞金競走と間隔があるためと思われる。また優勝馬に交付される高額な賞金[昨年の香港カップの優勝賞金は、1140万香港ドル(約1億5960万円)]もひとつの要因である。

 他方、共に4月下旬に開催されるクイーンエリザベスII世カップおよびチャンピオンズマイルは、ヨーロッパの最高馬を呼び寄せることに苦労している。これらの競走は地元の最高馬およびオーストラレーシア(オーストラリアおよび周辺諸島の総称)と南アフリカの非常に優れた馬によって競われている。フランスのカルロス・ラフォン=パリアス(Carlos Laffon-Parias)調教師の管理馬で、リステッド競走より上位の競走に一度も勝ったことがなく、またG3レベルより上の競走に一度も入着したことのなかったバリオス(Balius)が2008年のクイーンエリザベス2世カップで2着に入ることができた。このことは、ヨーロッパのほかの調教師が同馬と同じレベルまたはより高いレベルの馬を出走させれば、同競走の賞金[総額1400万香港ドル(約1億9600万円−6着まで交付)]を獲得できる見込みが十分にあることを示唆している。

 香港ジョッキークラブ(HKJC)は、広範囲な優待パッケージを提供して、招待馬の関係者が積極的に馬を参戦させるよう奨励している。馬主と調教師は、ビジネスクラスの往復航空券をそれぞれ2人分支給され、騎手は1人分支給される。また馬主、調教師および騎手のすべてに対して、豪華なグランド・ハイアットホテル(Grand Hyatt hotel)が宿泊場所として提供される。さらに、HKJCが馬の輸送手配を行い、その輸送費を支払い、また厩舎、寝藁、飼料およびその他の必需品を提供する。

香港関係者の見解

 HKJCの国際競馬・セールス・開発責任者、マーク・プレーヤー(Mark Player)氏は、次のように述べている。

 「私たちは、香港競馬への外国馬の参戦を奨励しています。それは、香港を世界クラスの競馬開催地とすることを希望しているからです。これを実現するためには、香港出走馬は外国出走馬と互角に戦う必要があるのです。また、香港を世界クラスのイベントの開催地としてその開催能力と、もてなしの心についてブランドの確立を目指しています。それは競馬ファンのためだけでなく、香港行政当局のためでもあります」。

 「香港で世界の最高馬の競い合いを観る機会を香港のファンに与えたいと切望しています。招待馬選考委員会は、どの馬を招待すべきかを慎重に検討します。第1に、G1優勝馬を審査対象とし、つぎに馬の格付けを考慮しますが、当該時期における馬の調子も非常に重要です。地理的分散も考慮します。したがって、国際レーティング115の2頭の馬がいて、1頭がヨーロッパ馬、他の1頭がオーストラリア馬で、両方を競走に出したい場合に、ヨーロッパ馬がすでに当該競走で多く選ばれているときは、おそらくオーストラリア馬のほうを選ぶと思います」。

 「HKJCは、海外の調教師および馬主と良好な関係を築いています。外国の競馬関係者はシャティン競馬場の良さをよく知っています。その良さとは、自分たちが温かく迎えられること、馬場が十分な芝で覆われていること、おそらく良馬場になること、出走頭数は最大14頭であること、香港は薬物を全く認めない競馬開催地であること、そして香港競馬の公正は非の打ち所がないことです。香港は、公平な競走の場であるため、それ自体が大きな関心を引くのです」。


馬主の見解

 レスターシャーにあるウィンターベック・マノー・スタッド(Winterbeck Manor Stud)の所有者、アンドルー・クリストウ(Andrew Christou)氏は、持ち馬のフェニックスリーチ(Phoenix Reach)が同氏の服色でカナダ、香港およびドバイのG1競走に優勝するのを観ながら世界中を旅している。

Q: フェニックスリーチを海外の競走に出走させる決定に影響を与えたのは何ですか。
A: 私は、同馬を購買する前に東方教会の星占い師に相談しました。星占い師の天宮図は、フェニックスリーチが年齢とともに良化し、国内の競走よりも海外遠征でよい成績を上げることを示していました。同馬はアイルランドで生産されましたので、アイルランドが同馬の故郷です。私は、同馬が競走に出る場所がアイルランドから離れていればいるほど、よい成績を上げるであろうと考えました。
Q: 海外の競走で交付される高額賞金も理由となりましたか。
A: そのとおりです。ある競走の賞金を知ったとき、“これは驚きだ”と思いました。ほかの馬主がなぜこれらの競走に出走させないのか理解できませんでした。英ダービーで70万ポンド強(約1億6800万円強)の1着賞金を狙って、最終出馬登録で7万5000ポンド(約1800万円)を支払う用意がある馬主がいる一方で、出馬登録料が安く、賞金が高い多くの国際競走にヨーロッパ馬の出馬登録が比較的少ないことが奇妙です。なぜ国際競走に関心が薄いのか実に不思議です。遠征補助金は、実際には決定に影響を与えません。正直なところ、初めて海外遠征するまで、補助金があることを知りませんでした。
Q: フェニックスリーチが海外遠征で活躍する理由は何であると思いますか。
A: 主な理由は、体質です。海外遠征をする馬は、食欲が旺盛でなければなりません。フェニックスリーチは、途方もない体力と意志力を持っているほかに、負傷と病気を克服する、驚くべき能力を持っています。アンドルー・ボールディング(Andrew Balding)調教師が診察を依頼していたサイモン・ナップ(Simon Knapp)獣医師によれば、同馬は負傷するたびに信じられないようなすばらしい回復力を示すそうです。また、同馬はすばらしい厩舎スタッフに恵まれ、世界のどこにいてもくつろぎました。同馬はまた、どこに行っても所定の日課をこなします。環境に慣れさせるために厩舎から競馬場内に入り、下見所の周りを歩かせます。香港に遠征した際、同馬が下見所にいると、地元の報道陣が同馬の写真を撮り始めました。同馬は、機転を利かして歩みを止めて、報道陣のためにポーズをとったのです。

(1香港ドル=約14円)、(1英ポンド=約240円)

[Pacemaker 2008年6月「Have horse, will travel」]

次号(16号)には「欧州から見た世界の国際競走(日本)(スカンジナビア)」を掲載


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