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2008年07月04日  - No.13 - 3

サラブレッド安全委員会、馬の安全基準の統一化を勧告(アメリカ) 【開催・運営】


 ケンタッキーダービー(G1)でのエイトベルズ(Eight Belles)の死亡事故をうけて、ジョッキークラブが設立したサラブレッド安全委員会(Thoroughbred Safety Committee: TSC)は、調教時と競走時のステロイド(筋肉増強剤)と前肢用鉄頭歯鉄(toe grab)の使用を禁止し、鞭の乱用を規制する第1段階の勧告を発表した。

 TSCは、北中米競馬委員会協会(Association of Racing Commissioners International: RCI)のメンバーである北米のすべての競馬統括機関が、アナボリック・ステロイドの使用を厳重に規制する模範ルールを直ちに採用するよう求めている。

 この模範ルールは、微量のスタノゾロール(stanozolol)、ナンドロロン(nandrolone)、テストステロン(testostelone)、ボルデノン(boldenone)以外のすべてのステロイドの使用を禁止する薬物規制標準化委員会(Racing Medication and Testing Consortium: RMTC)の勧告に基づいている。11州がこの模範ルールを採用し、さらに7州が採用する準備に着手している。TSCは、北米のすべての競馬統括機関が 2008年12月31日までに模範ルールを実施することを提案している。

 TSCの議長であるスチュアート・ジャニー(Stuart Janney III)氏は、「レース当日に馬の体内にステロイドがあるのは好ましくないことです。他のスポーツは、試合当日に選手の体内にステロイドがないことが前提で す。競馬も同様にすべきだと思います」と述べた。

 サラブレッド競馬における安全問題を検討する連邦議会小委員会は6月19日に競馬産業の12人以上の役員たちを招いて聴聞する予定であり、ステロイドに関する勧告はその2日前に発表された。

 TSCの蹄鉄と蹄の保護に関する勧告は次のとおりである。

 

 

  1. 2ミリの鋼片(wear plate 蹄鉄の接地面に埋め込まれた滑走防止の鋼片)以外の鉄頭歯鉄の禁止。
  2. いずれの馬場でも調教およびレースにおいて、サラブレッドの前肢に装着されるターンダウン(turn down 鉄尾をスパイクの様に接地方向に折り曲げた蹄鉄)、ジャーコーク(jar calk 蹄鉄に付けるスパイクの一種)、スティッカー(sticker 特に競走蹄鉄に使う鉄尾部分に装着する鋭い鉄臍)およびその他の滑走防止装置の使用禁止。

 TSCはRCIと北米のすべての競馬統括機関に、2008年12月31日までに模範ルールによる禁止を採用するように要求し、各競馬場にはその間にあっても“内規(house rule)”によりそれを早急に採用することを考慮するように要求している。

 ジャニー氏は、「前肢への平坦蹄鉄の使用を義務付ければ、最新の滑走防止装置を使用して優位な競走能力を得ようと考える調教師はいなくなるでしょう。模範ルールは簡略なもので、実行するのは簡単でしょうし、結果的には実行されるでしょう。TSCはこの問題を議論し、多くの研究成果を検討した結果、平坦蹄鉄以外の蹄鉄を使うと前肢へのダメージが大きくなりさらには故障リスクが高まると確信しました」と述べた。

 鞭の使用については、TSCは騎手組合(Jockeys’ Guild)と協議して、RCIの模範ルール委員会が承認する衝撃吸収型鞭のみを許容するよう勧告した。また、TSCは鞭の使用法についても、いくつかの規格と新たなルールを模索しており、それには鞭を肩よりも上に挙げて打つことを禁止することが含まれている。

 ジャニー氏は、「競馬産業にとって、鞭の問題は馬への思いやりとファンに与える印象の問題です。TSCは、パッド入りの短かくした鞭の使用を義務づけることと、騎手が腕を肩より上から振り上げて鞭を入れることの禁止、裁決委員と獣医師による監視の強化などの措置は、騎手、調教師そして競馬ファンに歓迎さ れると信じています」と述べた。

 ジャニー氏は、競馬ファンに与える印象の問題が、TSCの審議において大いに考慮されたことを認め、「TSCにとってはごく当然な懸念であると思いま す。TSCの責務は、(1) 馬と騎手の保護に必要な対策を講じるだけではなく、(2) 競馬産業において、競馬を成長および繁栄させ、一般の競馬ファンにも魅力あるものにすることにつながる状況や慣習を作り出すことです。TSCが探求しているのはこれらの2つの基準を満たす方策と勧告であり、本日の提案はこれらの基準を満たすと考えます」と語った。

 TSCはこれらの勧告について、以下の団体からの支持を得ている。全米サラブレッド競馬協会(National Thoroughbred Racing Association)、ブリーダーズカップ社(Breeders' Cup Ltd.)、全米ホースマン共済協会(National Horsemen's Benevolent and Protective Association)、サラブレッド馬主・生産者協会(Thoroughbred Owners and Breeders Association)、サラブレッド・ホースメンズ協会(Thoroughbred Horsemen's Association)、RCI、全米馬臨床獣医師協会(American Association of Equine Practitioners)およびRMTC。

 TSCは今後2ヵ月間さらに議論を重ね、次に掲げるような諸問題について勧告を検討する。(!) 治療薬物の使用、(2) 禁止薬物と禁止行為、(3) 重要ルールの侵害に対する罰則の強化(終身競馬関与停止を含む)、(4) 薬物検査機関のあるべき姿と認証基準、(5) 全ての競走馬場(ダート、人工、芝)の安全に関するさらなる研究、(6) サラブレッドの生産と調教。

 8月17日ニューヨーク州サラトガスプリングスでジョッキークラブの第56回年次円卓会議が開催され、競馬の諸問題が議論される。TSCは最新の活動状況、調査・検討結果と勧告について発表する予定である。

 ジャニー氏に加え、ジョン・バー(John Barr)氏、ジミー・ベル(Jimmy Bell)氏、ラリー・ブラムレッジ(Larry Bramlage, D.V.M.)博士、ドナルド・ディズニー(Donald Dizney)氏、デル・ハンコック(Dell Hancock)氏、ヒラム・ポーク(Hiram Polk Jr.)氏がTSCのメンバーであり、彼らはジョッキークラブのメンバーでもある。

By Jeff Lowe

[thoroughbredtimes.com 2008年6月17日「Safety committee recommends uniform adoption of steroid ban」]


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