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TOPページ > 海外競馬情報 > 世界の競走馬調教法(連載第5回)(香港)【その他】
海外競馬情報
2008年06月20日  - No.12 - 4

世界の競走馬調教法(連載第5回)(香港)【その他】


 香港の国際競走に対する関心が高まっている。香港は狭隘で、中国の南東の隅に小さな点のように存在している。香港には牧場も放牧地もなく、したがって競走馬生産も存在しない。しかし、世界の金融センターである香港は、数ある競馬先進国に伍して1998年に初めて世界に認められる馬を出し、それ以降も世界 的な一流馬を輩出している。

 アイヴァン・アラン(Ivan Allan)調教師の管理馬インディジェナス(Indigenous)は、1998年12月の香港国際競走で香港ヴァーズ(香港GII)に優勝し、翌年ジャパンカップで2着に入り、またロイヤルアスコット開催のキングジョージ6&クイーンエリザベス・ダイアモンドSで6着になった。目覚めはこの程度であったが、これによりトップレベルの競走への関心が一気に高まり、現在までに香港調教馬は海外のG1競走で6回優勝を果たしている。

 2000年にフェアリーキングプローン(Fairy King Prawn)の安田記念(G1)の勝利をさきがけとして香港馬の優勝の連鎖が始まった。ケープオブグッドホープ(Cape of Good Hope)が2005年にオーストラリアとイギリスのG1競走に優勝し、また香港で同馬を常に圧倒していたサイレントウィットネス(Silent Witness)が同年10月に中山競馬場で行われたスプリンターズS(G1)で日本の最強短距離馬に圧勝した。次にブリッシュラック(Bullish Luck)が2006年の安田記念に優勝し、2007年にはヴェンジェエンスオブレイン(Vengeance Of Rain)がドバイで開催されたドバイシーマクラシック(G2:2,400 m)に優勝した。

 香港は2003年以降、世界レベルの芝短距離馬を毎年出しており、セイクリッドキングダム(Sacred Kingdom)の現在の活躍ぶりから考えると、香港馬が2008年にも国際競走で優勝する可能性が高い。

 これらの成果がすべて1,200頭に満たない馬から生まれているのは、信じがたいことである。これらの馬は輸入馬であり、大多数(約70%)はオーストラリアとニュージランドから輸入されたものである。

 香港馬が国際競走においてこのような非常に優れた実績を残している主な理由の1つは、香港調教師の質である。最近の数字によると、香港にはわずか24人の調教師しかいないが、彼らはエリート調教師の中でも世界的なリーダーの集まりである。

 シンガポール人のアラン調教師[1990年代初めに香港に移籍する前、マラヤン競馬協会(Malayan Racing Association、マレーシアとシンガポールの競馬を対象とする)の最優秀調教師に7回輝いた]は、すでに引退しており、またオーストラリア調教師 界の第一人者デイヴィッド・へイズ(David Hayes)調教師は、香港で10年間活躍し、2回最優秀調教師になってオーストラリアに帰国した。

 しかし、これら2人の調教師が去ったからといって香港の優秀な調教師の層が薄くなったわけではない。最近、香港に移籍してきた外国人調教師として、アンドレアス・シュッツ(Andreas Schutz)調教師とポール・オサリヴァン(Paul O’Sullivan)調教師がいる。シュッツ調教師は、ドイツのチャンピオン調教師で、2007年12月に香港マイルをグッドババ(Good Ba Ba)で優勝し、大レースに強いという評判を裏付けた。また、オサリヴァン調教師はニュージランドで11回最優秀調教師に輝いた実績がある。

 キャスパー・フォーンズ(Casper Fownes)調教師は現在、リーディングのトップを走っている。同調教師(40歳)は、調教師として成功を収めたイギリス生まれのローリー・フォーンズ (Lawrie Fownes)氏の息子であり、父が2003年に65歳で引退しその厩舎を引き継ぐまで、長い間そこで見習い調教師をしていた。フォーンズ調教師は、ハリ ウッドパーク競馬場でニール・ドライスデール(Neil Drysdale)調教師に教育を受け、かなり長期間を米国本土で過ごしたので、香港とアメリカの調教技術の根本的な違いについて述べる資格があるだろう。

 同調教師は、「アメリカの調教法と我々が香港で行っている調教法の大きな相違は、スピード調教の量に差があることです。これには多くの理由がありますが、第一の理由は気候です。香港のような湿気の多い環境において、たとえば、ロサンゼルスで行うのと同じように香港で馬に対しきつく、かつ頻繁にギャロップを行わせると、馬を疲労させることになります。このような調教から勝馬が出ることは決してありません」と述べている。

 フォーンズ調教師は、60頭の管理馬のそれぞれに何が必要かを判断する自身の能力を誇りにしている。60頭という頭数は、香港ジョッキークラブ(Hong Kong Jockey Club)が設けている1調教師当たりの管理頭数の上限である。

 同調教師は、さらに次のように述べている。「私の第1の武器は馬に対する目と直感です。少しの間でも馬の周りにいて、馬に親近感を持つと、体調が余りよくないとき、100%満足していないとき、普段に比べて心地よくないとき、そして順調なのかあるいはあまりそうでないのか分かるようになります」。

 「私の目標は、馬を心地よくし、苦痛をなくし、そしてストレスをなくすることです。幸せで健康な馬は、馬主のために走りたいと思うものです。自分の主な仕事は馬の幸せと健康を保つことであると考えています。それが達成できれば、馬は勝つ機会を自分で見つけるものです」。

 フォーンズ調教師がザデューク(The Duke、せん馬、父デインヒル)で達成した2006年の香港マイルのような最高の勝利を回顧するのも結構だが、同調教師は個人的には、どの競走に勝利しても偉業と言えるような普通以下の能力の馬で競走に勝つことに大きな満足感を見出している。

 同調教師は、2つの異なる調教計画を立てる。1つは、競走に向けて馬を仕上げるための計画であり、もう1つは競走後に馬の体調を維持するための計画である。

 同調教師は、「競走自体が馬の体調を望ましい水準に維持しますので、私は競走と競走の間は最小限度の調教を行うようにしています。その際、馬に対する自分の目と感覚が頼りです。馬に発馬機発走につづく調教を行う必要があると考えた場合、それを行います。その際、本番さながらのスピード調教を行うときもあり、また非常に弱めの調教を行うときもあります。また、レースにかなり近い段階で行うこともあります。しかし、発馬機発走につづく調教には型にはまったことや定型的なことは一切ありません。調教は、馬の個々の必要性、すなわち馬にとって最もふさわしいものは何かということを考えて行います」。

 香港の競走馬の調教法に対しておそらく最も大きな影響を与えた調教師は、おそらくジョン・サイズ(John Size)調教師と思われる。同調教師は、2001年に香港に移籍したが、ライバル調教師を圧倒し、デビューしたシーズンに予想外に、アラン調教師の4回 目のタイトルの夢を打ち砕いた。

 サイズ調教師は、そのすばらしい実績、最初の3年間連続チャンピオン調教師のタイトル獲得そして最初の5年間でのタイトル4回獲得により、すべての人々から賞賛を得た。同調教師は現在、リーディングの上位で、7年間で5つ目のタイトル獲得を目指しているが、フォーンズ調教師はサイズ調教師のことを、最高のオーストラリア出身調教師であると考えている。

 フォーンズ調教師は、「サイズ調教師が競走馬の調教に関する考え方をおそらく他のだれよりも大きく変えたことは疑いがありません。同調教師は、偉大なホースマンでかつ優れた調教師であり、独自の調教方法を考え出しました。しかし、サイズ調教師の調教法は真似るのは難しいため、それを取り入れる際には注意が必要です。デイビッド・へイズ調教師がサイズ調教師の調教法を実験するために管理馬の中の12頭をサイズ調教師の調教スタイルと100%同じであると考えた方法で調教したのを覚えています。しかし、結果は惨憺たるものでした。勝馬を1頭も出すことができなかったのです」と述べている。

 それでは、何がそれほどまでにサイズ調教師を特別な存在にしているのであろうか。自身は、そのことに関してあまり話したがらないが、このことは何にもまして同調教師の比較的控えめな性格を物語っている。ただ、同調教師は自分が調教に関する基礎的知識を得ることができたのは、ブリスベン競馬場(オーストラリア)の最優秀調教師に5回輝いたヘンリー・デーヴィス(Henry Davis)調教師のおかげによるところが大きいと述べている。

 サイズ調教師は、「デーヴィス調教師は、管理馬を大きく、丈夫にそして強く育てたいと考えていました。競走に向けた全力のギャロップ走行は、競走の5日前に行われ、馬はその週の残りの日はのんびりと過ごし、軽めの調教や水泳調教を受け、それから競走に出て全力で走るのです。多くの人々は、同調教師の管理馬は十分な調教を受けていないと考えていましたが、デーヴィス調教師は自身の行っていることを知っており、調教にきわめて優れた能力を持っていました」と説明している。

 サイズ調教師は、基本的に毎日すべての管理馬をプールで泳がせ、ほかの調教師よりも馬がプールにいる時間を長くしている。同調教師は、プール調教は馬にストレスを与えず、馬を気分よくさせると述べている。

 同調教師の調教方法に秘訣のようなものがあるとすれば、それは定型的な調教を完全に排除することである。同調教師の管理馬が強いキャンターで調教走路を2周することや、ハロン18秒台で長距離を走ることを見ることは決してない。

 同調教師の管理馬は、プールで泳ぎ、そして可能な限りゆっくりとしたキャンターで調教走路を2周する。これらの調教は時間をかけて行われ、しっかりとした基礎体力を養う。ギャロップ走行は通常、400メートルか600メートルと短く、常に馬にハミを取らせて行われ、200メートルのギャロップで13秒を切ることはめったにない。

 管理馬の適応訓練と調教は、サイズ調教師が頻繁に利用する発馬機発走につづく調教によって効果が高められる。同調教師は、一連のきついギャロップ走行で馬を鍛えるより、理想的な競走用または調教用馬場でこのような効果の高い調教を行うほうを好んでいる。

 同調教師は、管理馬の大部分は1回目か2回目の競走によって劇的に良化することを認めている。しかし、その後は十分な筋肉と体躯を維持する強い基礎体力を約4ヵ月の調教で作り上げているのである。いったんこの段階に達すると、サイズ調教師の馬はすばらしい回復力を示して、ほとんど疲れ知らずで出走し続け、大多数のライバル馬よりも多く競走に出て、能力を発揮することができる。

 ほかの成功物語と同じく、サイズ調教師をけなし、あるいは中傷する者がいる。しかし、当初の“サイズ調教師は、馬に何かを投与している”という噂は、かなり前に消えた。これは、香港ほどクリーンでかつ薬物が厳しく規制されている地域はほとんどないからである。香港では、出走馬は禁止薬物とステロイド(筋肉増強剤)をまったく投与されていない状態で出走しなければならず、許容閾値は設けられていない。

By Murray Bell

[The Blood-Horse 2008年3月1日「In Hong Kong, most runners get up to speed with series of long, slow works」]

次号(第13号)には「世界の競走馬調教法(オーストラリア・ニュージーランド)」を掲載


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