EnglishKorean
中文Francais
Japanese Stud Book


世界の競馬
海外競馬ニュース(毎週更新)
海外競馬情報
海外競馬場・日程
海外競走登録・遠征情報
世界の競馬および生産統計 アジア競馬会議・競馬連盟
軽種馬登録情報
軽種馬登録ニュース
統計データベース
軽種馬の登録の仕組み
登録のあゆみ
ユビキタス関連
マイクロチップについて
申請書類ダウンロード

モバイルサイト
TOPページ > 海外競馬情報 > 馬の外来疾病侵入の可能性・前半(アメリカ)【獣医・診療】
海外競馬情報
2007年11月02日  - No.21 - 6

馬の外来疾病侵入の可能性・前半(アメリカ)【獣医・診療】


 動物の外来疾病が近隣地域に侵入してきた場合、獣医師は次の2つの方法のいずれかで有名になることができる。1つはその疾病を診断すること、もう1つはそれを見逃すことである。

 これは、ジョサイア・メグズ賞(Josiah Meigs Award)を受賞したジョージア大学(University of Georgia)の著名な教育専門教授コーリー・ブラウン(Corrie Brown)獣医学博士が、特定の疾病に関する教科書の説明にまったく一致しない症状について馬開業獣医師に説明する際に強調するメッセージである。同博士が伝えようとする点は、獣医師は馬に異常な徴候を見つけた場合には用心することが必要であり、また外来疾病がアメリカに浸入している可能性を排除すべきでないということである。

 西ナイルウイルス(West Nile virus: WNV)は、この種の疾病の好例である。アメリカでWNVに感染した最初の馬は、馬原虫性脊髄脳炎(equine protozoal myeloencephalitis: EPM)に感染していると当初考えられた。EPMは、馬がオポッサム(有袋類動物の一種)から感染する脳神経疾患の一種である。しかし、ジョン・アンドレセン(John Andresen)獣医学博士(ロングアイランドにある同博士の診療所は、WNVによって影響を受けた最初の診療所である)は、同博士が目にしていた症状がEPMとは異なり、症状がはるかに急速に進行することから、この不可解な疾病の発生を米国疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)に報告した。同センターは、病原菌を特定するために直ちに行動を開始した。

 試験の結果、この致命的な疾病は西ナイル脳炎(West Nile encephalitis)であることが判明した。北アメリカで過去に一度も発見されたことのないウイルスで、近代の馬疾病のうちで最悪の疾病の1つである。1999年8月〜2007年8月14日に、約2万5,000頭の馬がWNVに感染し、これらの馬の3分の1が死亡したと報告されている。WNVが最も多く発生した2002年には、1万5,000頭を超える馬がWNVに感染したが、この数字は報告された症例のみを反映しており、実際の数字はおそらくはるかに多かったと考えられる。


外来疾病が再び侵入する可能性はあるか?

 ブラウン博士にどの外来疾病がアメリカを襲う可能性があるかと尋ねれば、「それは、アフリカ馬疫(African horse sickness: AHS)です。AHSは、“発生するかどうか”の問題でなく、“いつ発生するか”の問題です」と直ちに答えるであろう。

 AHSは、ユスリ蚊によって馬から馬へと伝染する。ユスリ蚊は、大部分が夜明けと日没にえさを食べる蚊科の小さな飛行性昆虫である。AHSは強い伝染性を有するが、動物どうしでは伝染せずに、感染馬から吸血したユスリ蚊が次に犠牲となる馬にAHSを運んだ場合にのみ伝染する。

 AHS感染馬の50〜90%が死亡する。AHSは、3つの型で発生する。すなわち、呼吸器型、心臓型およびそれらの混合型である。AHSは非常に恐ろしい疾病であるため、感染した動物の写真はしばしば悲惨すぎて公表することができない程である。

 呼吸器型のAHS感染馬は、最高華氏106度(摂氏41度強)にもなる高熱を出し、肺と鼻孔から多量の泡状の分泌液を流し、この分泌液は肺と鼻孔の呼吸を妨げ窒息死させる。感染馬は突然死に至り、死亡率は90%である。

 心臓型のAHSは最初、熱を伴う。発熱のあとで馬の頭部が膨らみ、馬はえさを飲み込むことができなくなる。疝痛が起きることがしばしばある。口と目の細胞膜に出る点状出血は、死が差し迫っていることを示す。

 この型のAHSにかかった馬の半数は、発熱してから1週間以内に死亡する。

 ブラウン博士は、AHSに関して「馬に関するアメリカの検疫措置は、感染馬の入国を防ぐことを意図しています。したがって、AHSの最も可能性のある侵入経路は、航空機で入ってくる感染昆虫によるものと思われます」と述べている。

 同博士は、これらの小さなユスリ蚊は航空機の頭上の手荷物収納庫に置かれる上着によって容易に運ばれるか、または機内持込かばんの中に入り込む可能性があると述べている。

 同博士は、「AHSはそのような経路で浸入する可能性があり、AHSウイルスが蚊に入り込んだ場合、その蚊を根絶するのは困難です」と付け加えている。アメリカ全土にはさまざまな種類の蚊がおり、フロリダ州だけで47種類の蚊がいることが知られている。

 1999年にアメリカの馬産業を襲ったWNVと異なり、現在はAHSが国内に入ってきた場合に馬を守るためのワクチンが存在する。


馬伝染性子宮炎

 ケンタッキー大学(University of Kentucky)のマクスウェル・H・グルック馬研究センター(Maxwell H. Gluck Equine Research Center: 馬研究センター)の理事で、伝染病の世界的な権威であるピーター・ティモニー(Peter Timoney)獣医学博士は、再び馬伝染性子宮炎(Contagious equine metritis: CEM)がアメリカに持ち込まれることを懸念している。CEMは、1978年にケンタッキー州中部のサラブレッド牧場において初めて確認され、その後2年間でアメリカから徹底的に根絶された。

 CEMは、感染した繁殖牝馬に一時的不妊症または自然流産を引き起こすことのある性病で、感染繁殖牝馬はCEMを無症状のまま保有していることがある。種牡馬は通常、CEMを引き起こす細菌を生殖器に保有しても、臨床的徴候を示すことは一般的にはない。

 CEMの概況報告書において、連邦農務省(U.S. Department of Agriculture: USDA)はアメリカ馬産業へのCEMの再侵入は、莫大な経済的損失を引き起こすであろうと述べている。

 ティモニー博士は、「私たちはCEMに関して危機一髪的状況を経験してきたため、CEMは非常に現実に危険な状態であると言えます。具体的に言えば、私たちは10年以上にわたり輸入検疫で保菌輸入温血馬(種牡馬と繁殖牝馬であるが、主として種牡馬)を水際で摘発してきました。しかし、いずれ近いうちに防護壁は破られ、CEMが繁殖馬に拡がり、CEMに再感染することになるでしょう」と述べている。

 同博士は、ウィスコンシン州で供用されていたリピッツァー種(Lippizaner)の2頭の輸入種牡馬がCEM保菌馬であることが判明した2006年の事例を引き合いに出している。これらの種牡馬がアメリカに輸入されてから2年たった後の繁殖適性検査で、CEMに感染していることが分かったが、幸いなことに、種付所でCEMを伝染させる前であった。

 ティモニー博士は、温血馬がCEMをサラブレッド産業へ再侵入させる可能性があると見なしている。というのは、乗用馬を生産するためにサラブレッドを温血馬と異品種交配することが頻繁になっているためである。同博士は、温血馬と交配したことのある繁殖馬を供用しているサラブレッド生産者に対し、交配前に当該馬がCEMに感染していない旨の報告を行うよう強く求めている。

 同博士はまた、国境の南で活動している蚊媒介ウイルス病のベネズエラ馬脊髄脳炎(Venezuelan equine encephalomyelitis: VEE)が発生する可能性を懸念している。幸いにも、VEEに有効なワクチンは存在する。

 同博士は、「VEEの母体は、ベネズエラとコロンビアの国境のベネズエラ側に存在し、脳炎はここから時折発生してきます。私たちは、VEEの再発生要因が何であるかは正確にはわかりません。また、鼻疽(glanders)もそれほど遠くで発生するわけではありません。この伝染病は、ブラジルで発生しています」と述べている。

 鼻疽は、馬から馬へ伝染する細菌病である。この細菌は、血流に入り込んで内臓の膿瘍、肺、口および鼻腔の病変ならびに皮膚の潰瘍を引き起こす。鼻疽は、飼い葉桶や水桶を共用する動物によって口から伝染する。鼻疽はまた、細菌を吸い込むことや、病変した皮膚と接触することによって伝染することがある。

 鼻疽には抗生物質が効くが、細菌を根絶することはできず、時には数年間も休眠させることがある。したがって、鼻疽にかかった馬は通常、安楽死させられる。鼻疽に効くワクチンは存在しない。

 ブラウン博士は、鼻疽に関するさらなる懸念は、テロリストが鼻疽を細菌兵器にすることであると付言している。

 ティモニー博士が懸念するに値すると確信しているその他の疾病は、WNVと密接な関係がある日本脳炎(Japanese encephalitis)、およびアフリカ、アジア、南東ヨーロッパおよび南アメリカで流行する馬の性病で、神経症状としばしば死を招く媾疫(dourine)である。媾疫に効くワクチンは存在しない。

By Denise Steffanus

後半は次号(22号)へ続く

〔Thoroughbred Times 2007年9月15日「Disease Watch」〕


上に戻る