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海外競馬情報
2007年08月24日  - No.16 - 5

ブレスケス氏、競馬のグローバル化を目指す(香港)【その他】


 今年、ウィンフライド・エンゲルブレヒト=ブレスケス(Winfried Engelbrecht-Bresges)氏は、香港ジョッキークラブ(Hong Kong Jockey Club: HKJC)の最高経営責任者、アジア競馬連盟(Asian Racing Federation: ARF)の会長、国際競馬統轄機関連盟(International Federation of Horseracing Authorities: IFHA)の副会長と続けざまに要職に就任したことで、世界で最も影響力のある競馬責任者となった。同氏は、ほぼ同時に自ら世界を変革するつむじ風のような力となる意思を表明した。そして、自身がからかうように、多くの人々にはドイツ出身である同氏のファミリーネームの綴り・発音が困難であるため、自ら“E. B.”と名乗る彼は、次第に香港から世界に知られるようになった。

 ブレスケス氏は、「私は仕事上の要求の水準が非常に高いですし、また口ばかりで実行に移さない人には我慢できません」と笑いながら自身の性格を説明し、「私は競馬商品をより競争力のあるものにするため、自らのすべてのポストをフルに活用するつもりです。HKJCの望みは世界の競馬界のリーダーになることであり、そのために海外市場に事業を拡大します。その際我々はグローバル化するビジョンを持ち、他の競馬統轄機関との提携を図ります」と続けた。

 52歳のブレスケス氏の事業拡大の対象は、当然ながら未開拓の中国本土市場であり、すでに中国本土に食い込みつつある。また北米も重要な端緒となる可能性がある。同氏は米国を拠点とする馬券発売会社の買収を検討中であり、HKJCの買収資金は30億〜40億ドル(約3,600億〜4,800億円)あり、野望を実現する財政力があると打ち明けた。

 ブレスケス氏はこれまでにない国際合弁事業の構想を持っている。同氏は、HKJCが米国の馬券発売会社を買収した場合のパートナー候補としてチャーチルダウンズ社(Churchill Downs Inc.)を挙げた。ほかにも、ニューヨーク競馬協会(New York Racing Association: NYRA)が非営利法人であり続けるのであれば、おそらく有力なパートナー候補となるだろうと述べた。ニューヨーク州の競馬運営権をめぐり政策的混乱が生じるより前に、すでにNYRAのスティーヴン・ダンカー(Steven Duncker)会長にこの考えを提案していた。

 しかしブレスケス氏によると、HKJCの前最高経営責任者ラリー・ウォン(Larry Won)氏は、それに興味を示していなかった。「もし私が1〜2年前に現職に就いていたなら、NYRAとの戦略的提携を提案していたでしょう」と同氏は述べた。3月に同氏はNYRAの最高執行責任者のビル・ネーダー氏ならアメリカとの関係を緊密化できると期待して、自身の前職であるHKJCの競馬担当理事を引き継いでもらう形で抜擢した。

 夜遅くまでしばしば働き、気晴らしに10 kmを走る活発なブレスケス氏は、アジア競馬会議(Asian Racing Conference)開催中の宴席でブリーダーズカップ社(Breeders’ Cup)のグレッグ・アヴィオリ(Greg Avioli)会長と、香港チャンピオンマイル(HK-1)の勝馬に自動的にブリーダーズカップマイル(G1)の出走権を付与する約束を取り付けた。

 さらに同氏は、大きな利益となり得る賭金の国際コミングリング(合同化)の熱心な提唱者でもある。ただし成功するまでには時間を要すると注意喚起する。アジアでは国境を越えた賭事に対して慎重な考え方が強いことは知りつつ、同氏は香港競馬をより多く海外に放映するため、香港においても海外のレースを受信し、その馬券を発売することをさらに認めるように香港政府に要請した。

 多くの競馬統轄機関の幹部とは異なり、ブレスケス氏は賭事技術、テレビ商品、特に競馬が必要としている若いファン獲得につながる競馬コンピュータゲームのようなエンターテイメントの開発にまで資金投入を決意している。

 同氏は、「私たちはこの分野においては、大変遅れています。インターネットは優先事項です」と明言した。

 ヴァーチャルリアリティーサイトのセカンドライフ(Second Life 訳注:欧米で急成長しているネット上の3D仮想世界)や主要競馬イベントを配信するグローバルウェブ(global Web)の構想は、競馬の魅力を広める最良の好機である。HKJCはセカンドライフ型アプリケーションを開発中であり、それを使用すれば、利用者は競走馬に騎乗してレースに出走するサイバー空間を体験することができる。

 ブレスケス氏は、「しかし結局のところ、競馬が他のレジャーやエンターテイメント、カジノと異なっているのは馬が主役であることですので、競馬場に人々を連れてこなければなりません。馬をヒーローに仕立て上げ、馬に対する親近感を感じてもらうようにしなければなりません」と述べた。

 ドイツの家族がツォッペンブロイヒ牧場(Gestut Zoppenbroich)を所有し、自身も馬主・生産者であり、同氏は馬のことを話すときいっそう熱を帯びる。

 彼は薬物使用に対して断固たる姿勢をとっており、薬物を使用してレースに出走した馬が世界サラブレッドランキングに選ばれた場合はそれが明記されるべきであるという提案を支持している。この考え方をとると、北米の競走馬の多くが影響を受けることとなろう。

 ドイツ競馬を統轄するサラブレッド生産及び競走管理委員会(Direktorium fur Vollblutzucht und Rennen)の筆頭理事であったブレスケス氏によれば、他の国々の競馬は賭事とライブ競馬が分離され、ライブ競馬は必ずしも必要でなくなってきている。この状況は、到来するグローバル化時代における香港には好都合である。

 同氏は、「最終的には、大きな競馬商品は5〜7種類にとどまるでしょう。ごく僅かの競馬統轄機関しかグローバル化戦略を実行できません。私たちは世界クラスの商品を持っており、フルに活用したいと思っています」と述べた。

By Michele MacDonald

[The Blood-Horse 2007年7月7日「Instrument of Change」]


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