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2018年05月10日  - No.17 - 1

3歳デビューのジャスティファイがケンタッキーダービーで優勝(アメリカ)[その他]


 パラソルよりもレインコートが必要な今年のケンタッキーダービー(G1)において、欧州人たちはバリードイル(クールモア牧場の調教拠点)のメンデルスゾーン(Mendelssohn)が歴史的勝利を収めるという希望を持っていた。しかし、世間の注目を大いに集めていたジャスティファイ(Justify ボブ・バファート厩舎)の後ろで、同馬が完全に取り残されて最下位となったことで、その希望はぬかるみに沈んだ。

 力強く立派な馬体を持つ栗毛のジャスティファイは、単勝3.9倍の1番人気でこのレースに臨んだ。そして15万7,813人の大観衆の前で、極めてひどい馬場状態に挑み、迫力あるパフォーマンスで大々的な勝利を収めた。この日はルイビル市の所々で鉄砲水の警報が出ており、大観衆は1日中、チャーチルダウンズ競馬場のシンボルであるツインスパイアーズ(2つの尖塔)の下で土砂降りの雨に耐えていた。

 2月18日にデビューしたばかりのジャスティファイは、1882年のアポロ(Apollo)以来初めての3歳デビューのケンタッキーダービー馬となり、"アポロの呪い"を解いた。一方、もう1つの"欧州調教馬はケンタッキーダービーで勝てない"というジンクスは破られなかった。その意味で、大きな期待を背負ったメンデルスゾーン(父スキャットダディ)の大西洋を渡っての挑戦は、"苦い失望"に帰した。実のところ、エイダン・オブライエン厩舎のメンデルスゾーンはライアン・ムーア騎手を背に、勝馬ジャスティファイ(父スキャットダディ)と同様、すさまじい時間を耐え抜いた。ケンタッキーダービーは"スポーツ界において最も素晴らしい2分間"と宣伝されるが、バリードイルにとっては悪夢のような2分間だった。

 メンデルスゾーンは、144年のケンタッキーダービー史において欧州調教馬として初めて勝利を収める最大のチャンスがあると見られていたが、それを達成することはできなかった。それどころか完敗だった。ゆっくりとスタートを切った同馬は、他馬に徹底的に打ちのめされて全く見せ場がなく、20頭立ての最下位となった。

 ライアン・ムーア騎手はこう語った。「ゲートを出た直後にこてんぱんにやられ、第1コーナーに向かっているときに減速し、二度と好位置につけることができませんでした。それで、メンデルスゾーンのレースは終わってしまいました。馬場状態に苦しめられたのではなく、序盤でひどい目に遭ったのです」。

 UAEダービー(G2)で全てがうまくいったのであれば、今回は何もうまくいかなかったと言って良い。結果は、メイダン競馬場でのパフォーマンスが鮮烈だったのと同じ度合いで惨めだった。たぶん、バリードイルの関係者は誰も、このレースがどれほど厳しいものだったか思い出したくもないだろう。少なくとも、欧州に帰れば英2000ギニー(G1)を制したサクソンウォーリア(Saxon Warrior)がいる。

 オブライエン調教師は地元メディアに、メンデルスゾーンがBCクラシック(G1)に挑戦することを期待してもらって良いと述べ、こう語った。「メンデルスゾーンは、発走直後、そして第1コーナーに向かっているときに再度打ちのめされました。しかし、立ち直ることができるでしょう」。

 「メンデルスゾーンは、これほどのキックバック(土砂の跳ね上げ)を浴びたことがありませんでした。これまでとは全く異なる経験でしたので、私たちは落ち込んでいません。帰国後、彼をゆっくり休養させて、戻ってくるつもりです。BCクラシックに挑戦することを楽しみにしています」。

 メンデルスゾーンが発走直後にレースに負けていたのなら、ジャスティファイは勝利を求めて長い距離を戦い抜いたことになる。同馬は総賞金220万ドル(約2億4,200万円)のこのレースで用心深く発走し、スピードのある先行馬プロミシズフルフィルド(Promises Fulfilled)のわずか外側につけた。

 ジャスティファイはすぐに猛烈なスピードを出し、コーナーで外側を回り、その後ストレッチに続く走路を駆け抜け、昨年の最優秀2歳牡馬のグッドマジック(Good Magic)を2½馬身後ろに退けて優勝した。オーディブル(Audible)はグッドマジックと頭差の3着となった。

 ケンタッキーダービー5勝目を手にしたボブ・バファート調教師はこう語った。「ジャスティファイ、アメリカンファラオ、アロゲートは、それぞれ違うタイプの馬ですが、すべて偉大です。そうでなければジャスティファイがやったようなことはできません。彼はこれまで手掛けたトップホースに匹敵します。今日は本当に素晴らしい光景を目にしました。そこには崇高さがありました」。

 「ジャスティファイは私が手掛けた馬の中でも、ケンタッキーダービーで最高のパフォーマンスを見せました。ジャスティファイに才能があることは分かっていましたが、それを吹聴したくはありませんでした。そんなことでツキを落としたくなかったのです。しかし、本当に特別な馬を手掛けていることは確信していました。まさにそれを彼が証明しました」。

 道悪のときにキックバックを避け続けることは妙案だが、序盤に叩きだした猛烈なタイム(2F:22秒24、4F:45秒77)は、気を揉むバファート調教師をさらに不安にさせた。同調教師はこの天候の中、しっかりとレインコートを着用していたが、「1日中神経質になっていました。この馬場状態をとても心配していました」と不安になっていたことを認めた。そして、「鮮やかに逃げたときに"チャンスだ!"と思いましたが、最初の2ハロンが22秒、4ハロンが45秒であるのを見て、『わあ、速い!』と不安になりました」と語った。

 「私は、"かわいそうな馬だ。そのうちへたばってしまうだろう。もうダメだ"というようなことを考えていました。この大きな馬をケンタッキーダービーに出走させるために、常にイライラした1週間でした。チームにレブロン・ジェームズ選手(訳注:バスケットのスター選手)がいるようなものです。このような選手がいるのなら、勝負に勝たなければなりません。私たちはそのような気持ちでいました」。

 ジャスティファイの優勝により、ケンタッキーダービーは6年連続で1番人気馬が制したことになる。勝ち時計の2分4秒2は、ひどい馬場状態と、序盤が猛烈に速いレース運びだったために終盤でもたついたことを示している。

 マイク・スミス(Mike Smith)騎手はこう語った。「いざレースとなると、うまくゲートを出られるかが一番心配でした。うまくいってホッとしました。ただ彼がやりたいようにさせました。ボルトドーロ(Bolt D'Oro)は最初一緒に逃げていましたが、私たちの外側につけてきました。先頭に立つべきかどうか迷っているうちに、同馬は私たちの後ろに付きました」。

 高額賞金レースに強いことから"ビックマネー・マイク"の異名をとるスミス騎手はこう付言した。「ジャスティファイはただならぬ馬です。どれだけ特別であるかはうまく言い表せません。独特なものを持っています。平均をはるかに上回る能力を持つ馬であるだけでなく、それを発揮しようとする気迫があります。まだ若いのにとても大きく、才能あふれる馬です」。


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By Nicholas Godfrey

(1ドル=約110円)

[Racing Post 2018年5月6日「Mendelssohn last as Justify delivers on the hype in Kentucky Derby」]


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