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2018年03月29日  - No.12 - 3

フランケル産駒、キプロスとパキスタンで種牡馬入り(キプロス・パキスタン)[生産]


 フランケルの初年度産駒2頭は、遠く離れた異国で種牡馬入りする。


キプロス

 ストレートシューター(Straight Shooter アンドレ・ファーブル厩舎)は、昨年5月にサンクルーでのデビュー戦を7馬身差で圧勝した。しかしその後は怪我のために、競馬場で優雅に走る姿を見せることはなかった。同馬は太陽が輝くキプロスで種牡馬生活を送ることになる。

 南アフリカの大物馬主マーカス・ジュースト(Markus Jooste)氏に所有されていたストレートシューターは、最近のアルカナ社2月セールに上場された。しかし最終的には、エージェントのオリヴィエ・セントローレンス(Olivier St Lawrence)氏の仲介により、プライベート取引で購買された。

 新たな馬主は、長年キプロスで馬を生産・所有しているペトロス・パンテリデス(Petros Pantelides)氏と、競馬と生産に70年間携わっているニコラス・ハジヤンニス(Nicholas Hadjiyiannis)氏(101歳)である。

 ストレートシューター(セルジュ・ブシュロン氏が生産)はジャンリュックラガルデール賞(G1)優勝馬ナークース(Naaqoos)の半弟。首都ニコシアから15マイルほど離れたアカキ村のハジヤンニススタッド(Hadjiyiannis Stud)で、レーシングポストトロフィー(G1)3着馬メディシンパス(Medicine Path)とともに供用される。主に同スタッドが所有する繁殖牝馬と交配するが、プライベート種付料で限定的に外部の繁殖牝馬にも種付けする。

 パンテリデス氏はこう語った。「ストレートシューターがキプロスの競馬産業をグレードアップさせると堅く信じています。この馬の購買に協力してくださったハジヤンニス氏に感謝します。そしてセントローレンス氏にもお礼を言いたいと思います。彼がいなければ、このような取引はできなかったでしょう。フランケル産駒ということもあり、ストレートシューターに種牡馬としての魅力を感じました」。

 「卓越した血統であることは明白です。父フランケルは、少なくとも近年において最高の競走馬でした。また、彼の3代母はゲイリー(Gaily)です。つまり近親に、偉大なピルサドスキー、G1馬のユームザイン(Youmzain)とクレアカドワール(Creachadoir)がいます。またナークースは半兄です。ここ数年、ストレートシューターの多くの半兄弟・半姉妹がさまざまなセリで高額で購買されています」。

 しかしパンテリデス氏は、ストレートシューターをその素晴らしい血統だけで種牡馬として信頼しているわけではないと述べ、こう語った。

 「しっかりした骨格・筋肉と均整のとれた馬体を持つ見事な馬です。1回走って楽勝しただけで非常に高く評価されていますが、その理由は一目瞭然でしょう。そのレース運びや終盤での末脚は、怪我さえなければ確実に重賞勝馬になっていたことを示しています。彼は一戦だけでレーシングポストレーティング(RPR)の94ポンドを獲得しました。欧州で一戦しかしていないフランケル産駒の中で2番目に高いレーティングです」。

 キプロスの競馬はすべて、オールウェザーコース(左回り約1300m)を持つニコシアレースクラブ(Nicosia Race Club)で施行される。年間の平地競馬開催日数は約100日(週2日。1日8~9レース)。

 ニコシアレースクラブは2012年から、英国・アイルランド・南アフリカの競馬を対象とした馬券発売を認めている。また2017年から、キプロスの競馬映像を海外の賭事業者に提供している。

 キプロスでは今シーズン、種牡馬は30頭供用されており、繁殖牝馬は300頭繋養されている。また、現役競走馬は1,000頭いる。

 パンテリデス氏はこう語った。「キプロス競馬の水準は、英国やアイルランドをかなり下回ります。しかし、私たちはそれらの競馬先進国から有望な種牡馬や繁殖牝馬を購買することで、その差を縮めようとしています」。

 過去10年間においてキプロスで最も優秀だった種牡馬は、故タッカタム(Takkatamm 父フォーティナイナー)である。同馬は現役時代、サー・マイケル・スタウト(Sir Michael Stoute)調教師に管理され、デューハーストS(G1)で4着となった。この馬もハジヤンニス氏に所有されていた。

 ストレートシューターは、2月15日にキプロスに到着した。パンテリデス氏はこう語った。「彼は地中海の気候を好んでいるようです。しばらく時間を掛けて、新しい環境に慣れさせるつもりですが、ここを気に入るに違いありません」。


パキスタン

 一方、タンゴファイア(Tango Fire)は3戦して上位に絡むことはなかったが、素晴らしい血統ゆえにパキスタンに売却された。そして昨年11月、パキスタンのサルゴーダの近くのアリアスウォーリアックスタッド(Alias Warriach Stud)に到着した。暑さに慣れる時間は十分にあったようだ。

 タンゴファイア(生産者:ニューセルズパークスタッド)は、G2・2着馬ラテンラブ(Latin Love 父デインヒルダンサー)を母とする。リチャード・ハノン(Richard Hannon)調教師に管理され3戦したが、すべて大敗した。昨年10月、タタソールズ社の現役馬セールにおいてわずか4,000ギニー(約63万円)でセントローレンス氏により購買された。

 タンゴファイアは、乏しい競走成績を優れた血統で埋め合わせる。母ラテンラブは、優良牝馬のセルリアンスカイ(Cerulean Sky)を母とする。ランクレッセ(L'Ancresse)とムーンストーン(Moonstone)はセルリアンスカイの半妹。ムーンストーンは現役時代に愛オークス(G1)を制し、繁殖牝馬として昨年ロイヤルロッジS(G2)で僅差の2着となったネルソン(Nelson)を送り出している。

 タンゴファイアの新しい馬主は、獣医学講師のハサン・マフムード・ウォーリアック(Hassan Mahmood Warriach)氏である。同氏はこう語った。「アリアスウォーリアックスタッドは、パキスタンで新たに設立された牧場です。英国・アイルランド・ドバイ・カタールから馬を輸入しています。現在、繁殖牝馬8頭と種牡馬2頭がいます。パキスタンにフランケルの初年度産駒を輸入したことを誇りに思います。サラブレッド産業全体がこのニュースにワクワクしています。生産者から大きな反響があり、タンゴファイアはとても順調に種牡馬生活をスタートさせました。今年は30頭~50頭の牝馬をタンゴファイアのもとに送るつもりです。厩舎やエサは英国とは異なりますが、彼はすぐにパキスタンの新しい環境に慣れました」。

 フランケルのオーナーブリーダーであるカリド・アブドゥラ殿下が築いた血統は、パキスタンで大いに尊重されるだろう。この国で昨年最も活躍したビッグブラボー(Big Bravo)の父はダンヒルスター(Dunhill Star その父デインヒルはフランケルの母父)、母父は殿下所有の優秀なマイル馬ウォーニング(Warning)である。

 フランケルの初年度産駒の大半は来年以降に現役を引退し、欧州や北米の知名度が高い牧場に種牡馬入りするだろう。クラックスマン(Cracksman)やエミネント(Eminent)などはすでに高い評価を受けており、今年はさらにそれを高めるだろう。一方、今年3歳のエラーカム(Elarqam)、ネルソン、ロストロポヴィッチ(Rostropovich)は出世街道を進むことが約束されている。

By Martin Stevens

(1ポンド=約150円)

[Racing Post 2018年2月21日「Frankel's first stallion sons settle into exotic climes」]


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