TOPページ > 海外競馬ニュース > ニューマーケットの開発計画を巡る7年間の戦いが終結(イギリス)[その他]
海外競馬ニュース
2016年09月29日  - No.39 - 2

ニューマーケットの開発計画を巡る7年間の戦いが終結(イギリス)[その他]


 ニューマーケットのハッチフィールド牧場開発計画を巡る7年間の戦いは、ついに終結しようとしている。新たにコミュニティ・地方自治大臣に就任したサジード・ジャヴィド(Sajid Javid)氏が、物議を醸しているダービー卿(Lord Derby)の400棟の住宅建設計画の認可決定を取り消したのだ。

 フォレストヒース市議会(Forest Heath District Council: FHDC)の計画委員会は2014年7月、長年申請されてきたこの開発計画を認可していた。しかし今回、この開発申請が最終的に棄却された主な要因の1つは、地元経済における競馬産業の重要性だった。

 2014年7月の認可はその数週間後に、当時のコミュニティ・地方自治大臣のエリック・ピクルズ(Eric Pickles)氏により"撤回"されていた。その後、審問と資料提出が延々と繰り返され、最終的に決着がつくまでに2年を要した。

 開発計画とそれに伴う交通量増加のためにニューマーケットの競馬・生産界に影響が及ぶことが、認可取消の理由の1つに挙げられた。FHDCの最近の報告によれば、競馬・生産界は地元経済に対し年間2億800万ポンド(約270億4,000万円)の利益を生み出している。

 ダービー卿は、2009年にニューマーケット北東部のハッチフィールド牧場で1,200棟の住宅を建設する当初の開発計画を申請して以来、地元ホースマンと争っていた。2010年にその申請が棄却された後、ダービー卿は計画規模を縮小し再申請した。しかしピクルズ大臣は、その開発計画でも交通量は増加し、人馬が危険に晒され、ニューマーケットに悪影響が及ぼされるだろうと考えていた。ニューマーケットで調教を受ける現役馬は今年4月に過去最高の2,900頭(2011年から800頭増)に上っている。

 特に危険が伴うエリアは、馬が往来するレイズレーン(Rayes Lane フォードハムロードの端)だろう。この道は住宅完成後にニューマーケット中心部へ向かう主要道となる予定であった。

 ジャヴィド大臣は認可取消と判断した理由ついて、「この開発申請を認可するにあたり、競馬産業にもたらされる脅威がかなり問題となり、馬が行き来するレイズレーンの交通量の増加で高まる危険性も問題となります」と説明した。

 ダービー卿がこれに代わる計画案を申請するかどうかが、今後注目される。しかし、近くのミルデンホール空軍基地(RAF Mildenhall)で2020年に4,000棟の住宅が提供されようとしていることを考慮すれば、数年後にフォレストヒース市内で多くの住宅建設が行われるようになるかもしれない。

 認可取消の判断は、多くの競馬関係者に歓迎された。その1人であるニューマーケットホースメングループ(Newmarket Horsemen's Group)のウィリアム・ギタス(William Gittus)会長はこう語った。「すごく良いニュースです。しかし、最初の段階で、認可について大臣の判断を求めざるを得なかったことは残念に思います」。

 「後から考えると、ニューマーケットの競馬産業の国内外での重要性を明確にしたデロイト社(Deloitte)の報告書は、最初の計画のヒアリング時から利用できていたでしょう。そうすれば、計画委員会はおそらく違う結論を導き出していたのではないかと思います」。

 ギタス会長は「ジャヴィド大臣は認可取消の理由について、"この開発計画は、ニューマーケットの競馬産業の長期にわたる健全性と、競馬産業が地元および英国全体にもたらす経済的利益を損なう危険性がある"と述べています。私たちはこのことに大いに勇気づけられています」と付言した。

 ニューマーケット歴史建造物保護活動団体(Save Historic Newmarket Action Group: SHNAG)も長年にわたり、ハッチフィールド牧場開発計画に激しい反対活動を行ってきた。SHNAGの創立者で前ニューマーケット町長のレイチェル・フード(Rachel Hood)氏は、「本日はニューマーケットにとって記念日です。しかしそれと同時に、今後私たちが一丸となってニューマーケットとその競馬・生産界のために取り組むための記念日でもあります」と語った。

 調教師の中でも、とりわけフォードハムロードを拠点とする調教師は、この認可取消を称賛した。

 ウィリアム・ハッガス(William Haggas)調教師はこう語った。「これはニューマーケットにとって朗報です。これで終結することを望んでいます。私は往来の多いフォードハムロードに住んでいるので、交通量がさらに増えると大変困ります。レイチェル・フード氏やジャコ・ファンショウ(Jacko Fanshawe)氏(SHNAG創立メンバー)は、あらゆる会合に参加して開発計画に抗議するように私たちを鼓舞したのですから、全く称賛に値します」。

 ルカ・クマーニ(Luca Cumani)調教師はこう語った。「私たちはケンブリッジの郊外住宅街ではなく、厩舎スタッフのための住宅供給を望んでいました。この開発計画が実現していたら、交通量が増え、ニューマーケットに損失をもたらしていたでしょう」。

 この開発計画を認可したフォレストヒース市議会(FHDC)の副リーダーであるロビン・ミラー(Robin Millar)氏は、こう語った。「住宅供給計画はこの地域において必要性の高いものであり、私は市議会メンバーが当初行った認可決定を支持しますが、ジャヴィド大臣の判断を見過ごすわけにはいきません」。

 ダービー卿のスポークスマンはこう語った。「私たちは現在、認可取消の決定について精査中です。よく検討した上で詳細なコメントを発表するつもりです」。

news_2016_39_01.jpg

By David Milnes

(1ポンド=約130円)

(関連記事)海外競馬ニュース 2013年No.52「ハッチフィールド牧場開発計画の新提案で、地元に再び反対運動(イギリス)」

[Racing Post 2016年9月2日「Horsemen's Hatchfield victory after long battle」]


上に戻る