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海外競馬ニュース
2016年07月14日  - No.28 - 2

英国のEU離脱は厩務員不足の問題にどう影響するか(イギリス)[その他]


 EU(欧州連合)からの離脱を決めた英国の国民投票は、今後何が起こるか分からない状況を生みだし、厩務員の間で不安が広がっている。

 英国厩務員協会(National Association of Stable Staff:NASS)のCEOジョージ・マクグラス(George McGrath)氏は、すでに厩務員から問合せが来ているが、適切な回答ができていないとして、こう語った。

 「EU内出身者・EU外出身者を問わず、厩務員は今後どうなるのかと尋ねてきます。しかし、首尾一貫した説明をするのは困難で、そのことが不安を煽っています。今後のことが分かる者は誰もいません」。

 「私たちNASSも完全に予測することはできず、厩務員と同じ状態です」。

 「英国の雇用法の80%がEU法の下にあり、それがどう変わるかです。すぐに変化があるとは思いませんが、今後変化がないとは言い切れません」。

厩務員不足

 厩務員の確保に苦労してきた調教師たちは、EU外からの雇用が規制されたことで生じた不足を穴埋めするために、EU内から厩務員を雇用せざるを得なかった。

 マクグラス氏はこう付言した。「これからもEU内から雇用できると思いますが、フランスでは週35時間の労働で高収入を得ているのに、英国で働くためにその職を手離すでしょうか?今後すぐには、厩務員不足の問題に大きな変化はないでしょう」。

 BHA(英国競馬統轄機構)はEU離脱派が勝利したことを受けて、当面は馬の福祉、馬の移動、雇用法に影響が及ぶことはないだろうと表明したので、競馬産業は一安心した。

残留派と離脱派

 1973年にイタリアから英国に移住したルカ・クマーニ(Luca Cumani)調教師は、EU残留に投票した。「失望しました。誰も自分の国を失ったわけでもないのに"我々の国を取り戻そう"といったスローガンや、"長期的利益のための短期間の痛み"といったスローガンを人々が鵜呑みにするのは安易すぎると考えていました」。

 「なぜ危険を冒さなければならないのでしょう?全く不必要なことです。世界人類は違う方向にバラバラになるよりも、もっと団結すべきです。悲しい結果になりました」。

 「株価が急落して、年金基金や年金に影響が及びます。これが利益となるのでしょうか?この混乱は長期間続くかもしれません」。

 一方、ラルフ・ベケット(Ralph Beckett)調教師は反対の意見をもち、こう語った。「私は離脱に投票しました。なぜうまくいっていないのに現状維持に投票しなければいけないのでしょうか?離脱派が勝利して喜んでいます」。

 「これが産業内で抱えている厩務員不足の問題に役立たないことは分かっています。しかし同時に、状況が悪化するわけではないことも確かです。今後もたらされる影響がプラスなのかマイナスなのかは分かりません」。

 「私たちは自ら困難を乗り越えなければなりません。厩務員不足の問題を解決するためにEUを頼りにしても、長期的な解決策は見つかりません。短期的には多少の痛みが伴うことは分かっていますが、長期的には多くの利益があると考えます」。

By Jon Lees

[Racing Post 2016年6月26日「Brexit vote a conern among stable staff」]


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