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海外競馬ニュース
2014年10月02日  - No.39 - 3

賦課金制度の近代化についての意見募集開始(イギリス)[その他]


 BHA(英国競馬統轄機構)は、政府が8月27日に賦課金制度を近代化することについての意見募集を開始したことを受けて、ブックメーカーとできる限り多くの妥協点を模索したいと語ったが、賭事産業はその回答として、ブックメーカーが競馬賭事提供のために負担する費用についての最近の懸念を繰り返し述べた。

 ヘレン・グラント(Helen Grant)スポーツ大臣は8月27日、10週間にわたる意見募集を開始した。この意見募集では、(1) 現行の賦課金制度の改革で対応するのか 、(2) 現行の賦課金制度を“特別の法定制度”に代替するのか、という二つの選択肢について意見を求めている。

 しかし政府は、ジョージ・オズボーン(George Osborne)財務大臣が3月の予算演説で競馬支援策として、BHAが重視するアプローチ“競馬権(racing right)”にはっきりと言及したものの、政府として改革案と代替案のどちらが望ましいということはないと述べた。

 そして、現行の賦課金制度を変更しないで続けるという選択肢は除外しているが、代替案が無ければ現行制度は廃止できないとし、また、最近労働党が提案した方策のように賦課金制度を拡大して他のスポーツにも適用するという計画はないと付言した。

 グラント大臣は次のように語った。「競馬界と賭事産業は過去200年にわたって、互いに助け合ってその形を造り、共に成長してきました。他に類のない完全な相互依存関係にあります」。

 「賦課金制度は競馬の健全性維持に役立つ素晴らしいアイデアですが、本来あるべきようには機能していません。競馬および賭事産業の現状を反映すべきであり、この意見募集は私たちが賦課金制度を現代的なものとするための最善策を決定する一助となります」。

 BHAの渉外担当理事ウィル・ランブ(Will Lambe)氏はこの発表を歓迎し、次のように語った。「この意見募集は、英国競馬界の長期的な財務の健全性を確保するうえで重要な意味を持つとともに、政府の明確な意図と政策目標に沿って、英国の競馬界と賭事産業との間の現代的で公平な資金調達のパートナーシップを確認する絶好の機会でもあります。その過程では、競馬がもたらす価値と私たちの相互利益が再確認されていくことになるでしょう」。

 「ここまで漕ぎつけたのはグラント大臣とスポーツ・観光省職員のおかげで、とても感謝しています。今後数週間の私たちの最優先事項は、可能な限り妥協点を見つけ出すべくブックメーカーと一緒に取り組むことです」。

 しかし、ここ数週間の賭事産業からのコメントは、妥協点を見つけ出すことはこれまでよりも難しくなるかもしれないと示唆している。

 ラドブロークス社(Ladbrokes)が8月に中間決算を発表した際、CEOのリチャード・グリン(Richard Glynn)氏は、競馬に関連する費用について懸念があると語り、「競馬賭事が提供する価値は落ち込み続けています」と述べた。

 また、コーラル社(Coral)のCEOアンディー・ホーンビ(Andy Hornby)氏は8月中旬、賦課金制度が拡大され海外賭事業者に適用されるのであれば、全体の賦課金支払率を引き下げるべきであると要求した。

 さらに、ラドブロークス社のキアラン・オブライエン(Ciaran O’Brien)業務部長は8月27日に次のように語った。「近年の賦課金制度の下で達成された大きな進展を基に事を進めるにあたり、私たち国内ブックメーカーに焦点が当てられなかったことは残念です」。

 「メディア権の商業利用から得た資金がかなり積み上がっていることを心配しなければならない一方で、競馬界はありもしない夢のような大金が法律の制定によってもたらされることを追い求めています」。

 「おそらくこれは避けることのできない競馬界の駆け引きなのでしょうが、私たちブックメーカーの生産性の高い時間がこの問題にどれだけ費やされるかを考えずにいられません。とりわけ、競馬から得られる利益は競馬賭事提供のための費用の増加に対して落ち込み続けているのです」。

 政府によるもう1つの意見募集(賦課金対象範囲を海外賭事業者に拡大することについて)はもうすぐ締め切られる。この意見募集にはこれまで23件の回答があった。

 グラント大臣は、“適切な次のステップ”を決定する前に、それらの検討を行っていると語った。


 ビジネス・イノベーション・職業技能大臣、改めて“競馬権”を要求

 保守党のマシュー・ハンコック(Matthew Hancock)ビジネス・イノベーション・職業技能大臣は8月28日、資金調達制度の近代化について問う政府の意見募集を歓迎し、賦課金制度に替わる制度として“競馬権”を改めて要求した。

 ニューマーケットがあるウエスト・サフォーク選出のハンコック大臣は、賭事産業が競馬賭事を提供するために、競馬を主催する競馬界に対価を支払って賭事を行う権利を得る“競馬権”を長年提唱してきた。

 政府が8月28日に開始した10週間の意見募集は、2つの選択肢、すなわち (1) 現行の賦課金制度の改革で対応するのか、(2) 賦課金制度を“特別の法定制度”に代替するのか、について意見を求めている。

 ハンコック大臣は8月28日に次のように語った。「この意見募集は競馬産業全体にとって朗報です。これはニューマーケット周辺の8,500人の雇用を支えるとともに、競馬権を獲得するための新たな一歩です」。

 「誰もが口を揃えて破綻していると言う賦課金制度に替わる公正で持続的な方法として、私は競馬権を強く支持します。長期的解決策が超党派で支持されており、競馬権は競馬界に持続的で公正な資金源を提供すると同時に、賭事産業との商業的な結び付きを促進することになるでしょう」。

 ジョージ・オズボーン財務大臣(ハンコック大臣が以前首席補佐官を務めていた)は、予算演説の中で競馬権について言及し、賦課金制度の改革について発表したが、諮問文書の中で特に引き合いに出されることはなかった。

 ハンコック大臣は、「この問題はこれまで大きく前進してきましたが、賦課金制度に替わるものとして競馬権を強く要求し続けなければなりません」と付言した。

By Bill Barber

(関連記事)海外競馬ニュース 2014年No.31「賭事賦課金の対象範囲拡大についての意見募集を開始

[Racing Post 2014年8月28日「Consultation on modernisation of levy begins」、2014年8月29日「Hancock renews call for ‘racing right’ payment」]
 


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