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海外競馬ニュース
2012年02月23日  - No.9 - 1

BHAの新任CEOビター氏のリーダーシップに期待(イギリス)[その他]


 新しいBHA(英国競馬統轄機構)のCEOポール・ビター(Paul Bittar)氏は今日から、鞭使用ルール、崖っぷちの賞金額および賢明なリーダーシップの欠如という競馬界の最も急を要する問題に立ち向かうよう競馬界の重鎮たちから求められることになる。

 レーシングポスト紙は、競馬界、賭事界および生産界の何人かの重鎮たちに、BHAのCEOに就任するビター氏を待ち受ける重大な課題を挙げるよう依頼した。彼らのコメントの中には、このオーストラリア人CEOがハイホルボーンのBHAのオフィスに座って読むと酔いが覚めるような気持になる厳しいものもあった。

 しかしビター氏は、競馬運営のトップへの就任に至るまでに見せた慎重な楽観論で自身を鼓舞するだろう。以前の一時期におけるBHB(英国競馬公社:BHAの前身)での勤務、そしてBHAのCEO指名後の短期間の英国滞在において、ビター氏は競馬に造詣が深く競馬産業を理解している人物として圧倒的に好印象を作り出している。同氏がBHBで勤務しニュージーランド・サラブレッド・レーシング(New Zealand Thoroughbred Racing)やレーシングヴィクトリア社(Racing Victoria Ltd.)で上級職を務めたという経歴は、強みであると考えられている。

 就任直後の蜜月状態というものは長続きしないものなので、42歳のビター氏はこの好意的評判をうまく利用する必要がある。しかし競馬界は一晩では変わらないだろう。財政危機は引き続き問題となるだろうし、新しい鞭使用ルールは(どんなに微調整しようとも)全員から賛同を得ることは決してないだろう。またビター氏はやり手と評されているだけに、そのリーダーシップの発揮の仕方に対して腹を立てる者も出てくるだろう。

 競馬界はCEOの強いリーダーシップを求めている。多くの権限が競馬場とホースマンに広く割り振られているが、それでもビター氏は英国競馬界のトップであり、その影響力には持っている権限以上のものがある。

 ヘンリー・ダリー(Henry Daly)調教師は、「今英国競馬界が真にかつ単純に要求しているのは、慎重さを伴った強いリーダーシップです」と語った。

 ティム・ボーガン(Tim Vaughan)調教師は競馬産業の多くの人々に向けて、「私たちは素晴らしい競馬産業を有していますが、それが永久に続くことはありません。また、とり上げるだけで還元しない状況は続けられません」と言っていたが、ビター氏は最終的に、競馬界全体が常に関心を持っている賞金レベルをどのレベルまで確保できるかという点で評価されることになりそうだ。

 競馬界が満足できる財政を確保するということは、BHAの前経営陣がしばしば打ち負かされたブックメーカーと良好な取決めを行うことを意味する。その場合、ビター氏は、ブックメーカーが経済的関心事項の範疇にのみ協力するということを、気にする必要はない。

 ビター氏にとってより緊急を要する問題は、鞭使用ルールに関して巻き起こっている議論であり、同氏は1月20日にそれについて騎手組合(Professional Jockeys Association)と話し合いを持つことになっている。同組合のCEOケヴィン・ダーレー(Kevin Darley)氏は1月17日に「鞭使用ルールは現在私たちが望んでいる姿にはなっていません」と述べ、彼らのスタンスをすでに明らかにしている。

 ビター氏は鞭使用ルールを一挙に解決する有効な方策を早急に見つけなくてはならない。

 また、前任者であるニック・カワード(Nic Coward)氏は、厳しい時期にCEOを務めていた。当時は、競馬場で素晴らしいパフォーマンスが繰り広げられても、賞金額を悲しいほど低いレベルに低下させた深刻な財政危機を覆い隠すことはできなかった。

 外から観れば、カワード氏の率いる経営陣は次々に現われる財政問題との戦いでいつも打ちのめされて傷つき、前より困窮した状況になってよろよろしているように見えた。

 2007年に、新しく創設されたBHAにおけるカワード氏のCEO任命がほとんど報道されなかったことは、競馬の低迷を示す実例である。カワード氏のCEO就任1日目についての記事は、レーシングポスト紙の11ページ目の片隅に追いやられていた。

 本日ビター氏の就任は競馬界の話題に上っており、競馬界の重鎮たちが私たちの取材に応えてくれた際の熱心さは、同氏の就任がどれだけ重要と見られているか、また競馬界の危機がどれだけ深刻かを示している。

 2007年初めにBHAが創設されて以来、多くの変化があった。CEOを引き受けるに当たりカワード氏が職員たちに対して発表したマニフェストは、BHAを強力な、独立した、やる気を起こさせる、オープンでダイナミックな組織にするというものであった。このキャッチフレーズの平凡さは、カワード氏のCEO職としてのビジョンの欠如を示していた。同氏は迫りくる危機をほとんど認識していなかったように思われる。

 これに対して、ビター氏はまさに何が競馬界を苦しめているかを認識するだろう。

 しかし、競馬界の多くの人々は楽観的になる根拠があると信じている。競馬賭事賦課公社(Levy Board)が今年賞金を420万ポンド(約5億4,600万円)追加提供することを誓約したほか、メディア権料の増加による支援とホースマンからの要請を受けて、競馬場の資金提供は増加傾向にある。しかし、ますます機能しなくなっている賦課金制度の転換あるいは改善は、間違いなく次に取り組まなければならない課題である。

 財政危機の解決に力を尽くすことができれば、ビター氏は競馬を驚くほど健全な状態にできるだろう。競馬場入場者は増加しており、競馬はスポーツ全体の日程においても鍵となる要素であり、コートスター(Kauto Star)とフランケル(Frankel)は今年も競馬ファンのみならず一般大衆の心にも響くだろう。

 ビター氏は、“夜明けの前がいつも一番暗い”という古いことわざに慰めを求めることになるかもしれない。
 

ビター氏が取り組むべき喫緊の課題

・議論を巻き起こしている鞭使用ルールの有効な解決策を見い出す。

・強固で賢明なリーダーシップを証明する必要。

・低い賞金レベルに取り組み、財政危機への解決策を見い出す。

・競馬開催日の職員の賃金闘争を解決する。

By Tom Kerr
(1ポンド=約130円)

[Racing Post 2012年1月18日「Memo to BHA chief: give us clear leadership」]


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