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海外競馬ニュース
2012年01月12日  - No.2 - 1

競馬界がトート社売却収入をどう使えるか、なお不明(イギリス)[開催・運営]


 競馬界は、トート社(Tote)がベットフレッド社(Betfred)に売却されてから5年後の2016年まで、売却益9,000万ポンド(約117億円)のうち約束された半分さえ得られない可能性があるということが11月22日に明らかとなった。

 トート社売却は2011年6月に合意されたが、その後BHA(英国競馬統轄機構)と文化・メディア・スポーツ省(Department for Culture, Media and Sport: DCMS)との間で競馬界への9,000万ポンド(約117億円)の支払交渉が行われ、第1回目の支払いが3月末までになされるとのスケジュールで合意されたと理解されている。

 しかし、ベットフレッド社の売却額支払が繰延べで年間1,000万ポンド(約13億円)ずつ支払われることとなっており、初回が2012年3月末、最終回が2020年と予定されている。また、売却資金の使途に制限があるため、競馬界が最も必要とするところには支出されないことになる。

 欧州連合の国庫補助ルールに適合するためには、資金の大半が慈善目的で支出される必要があり、賞金に直接支出することはできず、長期にわたって人々に貢献するような遺産型のプロジェクトへの支出が優先される。BHAのポール・ロイ(Paul Roy)会長は、「私たちが売却益からの資金を実際に支出できるまでには、かなり多くの段取りをこなさなければなりません」と述べた。

 受取りと分配を行う団体を設立し、その業務を実行する契約が必要となるだけではなく、慈善目的の団体は慈善委員会(Charity Commission)の承認を求めなければならず、これらは時間を要する問題である。

 ロイ会長は、「多くのことが進行しています。私たちには利害関係者がおり、売却益の受取りと分配の方法を最適化するために、制度の一体化に向けてDCMSと密接に連携してきています。国庫補助と控除について話合いも行ってきました」と語った。

 そして、「売却益が何に、どのように支出され、そしてそれをどのように獲得するかについてのより明確なガイドラインは2012年にはまとまるだろうと思いますが、私は、長期にわたって英国競馬全般の利益のために支出されなければならないと考えています。様々な競馬団体から売却益の使途について多くの申請を受けていますが、おかしなものも中にはあります」と付け足した。

 売却益からの一括支払いを望んでいたロイ会長は、競馬界の長期にわたる利益のために支出できる資金を積み立てていくことを熱望しているが、その進捗がはかばかしくないために競馬はよくある裏切りの犠牲となるだろうとの情報通の見方に根拠を与えてしまうかもしれない。

 同会長は次のように語った。「私たちは9,000万ポンド(約117億円)を手に入れる予定でしたが、あらゆる種類の条件が付せられているため、その受取りはゆっくりとした点滴注入のようになるでしょう。競馬界は、純利益の半分が得られるとの理解でトート社の売却を承認しました。その資金はどこに行ってしまったのでしょうか」。

 慈善プロジェクトのために寄付された資金を賞金システムの中に還流させる方法は見つかる可能性があります。馬主協会(Racecourse Owners’ Association)の評議員会および旧トート社の理事会のメンバーであったエリック・パーカー(Eric Parker)氏は、「獣医学のプロジェクトなどに支出できる資金を競馬賭事賦課公社(Levy Board)へ拠出できるかどうかは分かりません。政府は国庫補助の制約という言い訳を使いますが、これは問題を避けるための法律専門用語なのです。どのように検討したとしても残念な結果となるでしょう」と語った。

 そして、「競馬の賞金額は愕然とするような水準であり、私たちはこの分野に本格的に資金を注入する必要があります。競馬界の大半は私たちが9,000万ポンド(約117億円)からどのような恩恵を受けるかについて懐疑的でしたが、その最悪の懸念が現実となりつつあります」と付け足した。

 競馬・賭事担当のジョン・ペンローズ(John Penrose)大臣は11月22日、政府は純利益のうち半分が競馬界に分配されるというトート社売却過程での約束を尊重するつもりであると繰り返した。

 同大臣は、競馬界の資金調達についての国会の議論において、「私たちは現在競馬産業との話合いを行っており、私の方針は非常に簡潔です。どのような仕組みを通じてでも売却益を競馬界に提供するつもりであり、唯一の条件は、欧州の国庫補助ルールに抵触しない仕組みを通じて行われなければならないということです」と語った。

 同大臣は、「私たちは競馬界と話合いを持ち、その唯一の条件を前提とした上で“売却益をどのようにして使いたいのか述べる”よう言いました。解決は間近だと思います」と付言した。

 レーシングエンタープライズ社(Racing Enterprises Ltd.: REL)の開発部長であるナイジェル・ロディス(Nigel Roddis)氏は、DCMSと話合いを行ってきており、進捗は見られると述べた。

 そして、次のように続けた。「政府が最初にこれは国庫補助ルールを前提とすると述べたので、私たちは建設的な方法で売却益を使うことのできる構造を導入する必要があります。今事業年度中に交付されることを望んでいます」。

「この話合いは建設的に行われました。財務省の支出見直しに従って売却益からの資金は交付されますが、2月末か3月初めまでには交付されないでしょう」。

「国庫補助ルールには特例的な扱いがあります。発展性のある遺産型プロジェクトになるいくつかの項目は、競馬産業内で支出できる可能性がありますが、私たちはそれらがルールに収まることを確かにしなければなりません」。

「建設的な方法でこの問題が進捗していることに満足しています。売却益からの資金は私たちが適切だと思うやり方で支出したいと考えていますが、そうはいかないでしょう。これはある程度縛りのかかった資金であり、私たちはそれを何とかしなければならないでしょう」。

 売却益とは別に、競馬界は今後7年間ベットフレッド社からの支払いも毎年受けることになっている。

By Jon Lees
(1ポンド=約130円)

[Racing Post 2011年11月23日「Roy still in the dark over how racing can use Tote proceeds」]


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