EnglishKorean
中文Francais
Japanese Stud Book


世界の競馬
海外競馬ニュース(毎週更新)
海外競馬情報
海外競馬場・日程
海外競走登録・遠征情報
世界の競馬および生産統計 アジア競馬会議・競馬連盟
軽種馬登録情報
軽種馬登録ニュース
統計データベース
軽種馬の登録の仕組み
登録のあゆみ
ユビキタス関連
マイクロチップについて
申請書類ダウンロード

モバイルサイト
TOPページ > 海外競馬ニュース > スピード遺伝子の起源は一頭の英国牝馬に遡る可能性(イギリス)[その他]
海外競馬ニュース
2012年03月08日  - No.11 - 1

スピード遺伝子の起源は一頭の英国牝馬に遡る可能性(イギリス)[その他]


 遺伝子科学者エメリン・ヒル(Emmeline Hill)博士は、ウェブ上の科学誌である“ネイチャー・コミュニケーションズ”(Nature Communications)において、サラブレッド競走馬のスピード遺伝子の起源が約300年前に生きていた英国の牝馬1頭に遡る可能性を発表した。そして、現在ある遺伝子変異体はすべて種牡馬ニアークティック(Nearctic)に遡ることを発見したとしている。

 そのスピード遺伝子が広範囲に伝播した背景には、ニアークティックの仔でありサドラーズウェルズ(Sadler’s Wells)やダンジグ(Danzig)などの父で種牡馬として圧倒的な支配性を示したノーザンダンサー(Northern Dancer)の存在があると、この研究結果は示している。

 ダブリン大学、エクイノム社(Equinome Ltd.)およびケンブリッジ大学の科学者が率いる国際研究チームは、1764年〜1930年に誕生した有名なサラブレッド種牡馬12頭の骨から抽出されたものを含む数百頭の馬のDNAを分析した。

 この研究論文の筆頭著者であるヒル博士は、「サラブレッドの誕生以来、競馬における変化が長い年月をかけて様々な地域でスピード遺伝子のタイプの分布を形作りました」と語った。

「そして私たちは、最初の“スピード遺伝子”変異体が1頭の牝馬からサラブレッドの血統に入り込んだ可能性を突き止めました」。

「私たちは2010年に初めて“スピード遺伝子”を特定した後、血統分析と同時に集団遺伝学を用いて遺伝子変異体の起源を辿ることができるかどうかを探ることとしました。サラブレッドのスピードの起源はどこにあるのか把握したかったのです」。

 ヒル博士はエクイノム社の共同創立者である。同社は、サラブレッド各馬に最適の競走距離を特定するためスピード遺伝子検査を開発して市場化し、競馬界と生産界に提供してきた。

 ヒル博士は次のように付言した。「私たちは、ユーラシアと北米における22の馬種の約600頭の馬、博物館に収められている12頭の伝説的なサラブレッド種牡馬の骨や歯の標本、3大陸における現代の330頭の選り抜きのサラブレッドのほか、40頭のロバや2頭のシマウマに至るまでのスピード遺伝子のタイプを特定することによって、経済的に価値のある遺伝子変異体の起源を辿りました」。

 そして論文の共同著者であるケンブリッジ大学のミム・バウワー(Mim Bower)博士は、「一連の証拠の一つにより、17世紀と18世紀の優良種牡馬が優れた持久力に繋がるTタイプの遺伝子変異体のコピーを2つ有する(T:T)ことが明らかになり、英国の1頭の牝馬がスピード遺伝子の起源である可能性が高いことが示されました」と語った。

「その当時のレースは、2頭の馬が2〜4マイル(3200〜6400 m)の距離で複数回対戦するものであり、どちらかの馬がレースを2回制するか、あるいは対抗馬に圧倒的な差をつけるまで繰り返されました。5歳か6歳になるまでは出走せず、また生涯でレースに参加するのは2〜3回だけでした。このことはこれらの馬がT:Tタイプの遺伝子変異体を持つことと一致します」。

 また、20世紀には2歳馬のレースが人気となってスピードと早熟性の価値が増加し、世界の多くの地域でその傾向は今日も続いている。

 ヒル博士は次のように説明した。「たとえばオーストラリアにおいては、速く、短距離のスプリントレースに最も適応するスピード遺伝子のタイプ(C:C)が一般的であり、このCタイプの遺伝子変異体のコピーを少なくとも1つ持っている馬にはマーケットが求める需要があります」。

「このため力のある生産者は、馬の遺伝的構成をその方向に向けて形成していくことになるのです。各競馬開催国におけるレース体系の決定および特定の遺伝子型を持つ馬への商業ニーズも、馬の集合的な遺伝的構成に急速に影響を与えるでしょう」。

 Cタイプの遺伝子変異体がどこから発生したかを見つけるために、研究チームは20以上の馬種からのDNAサンプルを分析した。その中には、牝のサラブレッドの系統が由来する英国およびアイルランドの在来馬と牝のサラブレッドの系統が由来する東洋馬の集団が含まれていた。

 その分析研究の結果、Cタイプの遺伝子変異体を最も高い頻度で持っている馬としてシェトランド種が見つかった。

 シェトランド種は、サラブレッドの公式の誕生以前の卓越した競走馬であった英国の在来馬の種類である。

 CタイプおよびTタイプの遺伝子変異体の周囲の染色体の相違を比較し、研究者は11の異なるTタイプの遺伝子変異体に対してCタイプ遺伝子を1つだけ見つけたが、これは、“スピード遺伝子”が1回だけサラブレッドに入り込んだことを意味する。

 「この結果は、最初の“スピード遺伝子”変異体が1頭の牝馬からサラブレッドの血統に入り込んだ可能性を示しています。そしてその1頭は、サラブレッドが公式に誕生する前で英国の在来馬が競走馬として卓越していた、約300年前における1頭の英国牝馬である可能性が非常に高いのです」とヒル博士は述べた。

(訳注)筋肉量の発育に関わる遺伝子の中で、DNAコードの特定の位置には、遺伝子変異体Cまたは遺伝子変異体Tが含まれています。個々の馬は遺伝子の2つのコピー、1つは母から受け継いだもの、もう1つは父から受け継いだものを持っているため、遺伝子変異体の組合せの可能性としては3つ、すなわちC:C、C:T、T:Tの可能性があります。
そしてエクイノム社の一連の研究によれば、その遺伝的組合せ(C:C、C:T、T:T)によって馬に最適の競走距離が非常に良く予測できることが分かっています。また、スピード遺伝子検査で使われる遺伝子変異体は、サラブレッドの最適な競走距離を知るための最強の遺伝的指標であることも分かっています。そしてエクイノム社は、この研究結果が米国と日本のサラブレッドを使った科学的研究において別個に有効性が証明されているとしています。

  C:C ----- スピードがあり、スプリントのタイプ。最適距離は1000〜1600メートル。
  C:T ----- 速く、中距離タイプ。最適距離は1400〜2400メートル。
  T:T ----- スタミナがある。最適距離は2000メートル以上。
 

(関連記事)海外競馬ニュース 2010年No.6「馬の距離適性を予測する遺伝子検査サービス会社が出現(アイルランド)」

[Racing Post 2012年1月26日「Researchers find single British mare introduced speed gene to racehorses」]

[Racing and Sports 2012年1月27日「Thoroughbred speed gene traced to one mare」]


上に戻る