TOPページ > 海外競馬ニュース > アナボリック・ステロイドの馬体内からの 消滅時間に大きな差異(アメリカ)[獣医・診療]
海外競馬ニュース
2009年03月26日  - No.12 - 3

アナボリック・ステロイドの馬体内からの 消滅時間に大きな差異(アメリカ)[獣医・診療]


 フロリダ州の現役サラブレッドを使った研究で、アナボリック・ステロイド(筋肉増強剤)が馬の体内から完全に消えるのに要する時間には大きな差異がある ことが明らかになった。この研究では26頭のサラブレッド(牝馬7頭、せん馬19頭)が使用されており、これらの馬は競走馬と同様の条件で管理されてい る。

 フロリダ大学獣医学部(College of Veterinary Medicine at the University of Florida)競馬研究所の所長であるリック・サムズ(Rick Sams, Ph.D.)博士は、薬物規制標準委員会(Racing Medication and Testing Consortium)により助成されている当研究の予想外の結果について、馬体内で薬物が消滅するまでの時間にばらつきが生じる原因は薬物の製品化合プ ロセスにあると説明している。

 サムズ博士は、「このように大きなばらつきが生じることは予想していませんでした。製品の化合プロセスの違いが原因だと確信しています。これは想定外でした」と語った。

 製薬会社なら大概ステロイドを製造しており、いくつかの商品名の馬用アナボリック・ステロイドが流通している。たとえば、アナボリック・ステロイドの一 種で、一般的にウィンストロール(Winstrol)として知られているスタノゾロール(stanozolol)は、現在は化合物としてのみ流通してい る。研究では、いくつかの商品名のアナボリック・ステロイドとその化合物を投与した馬の血液サンプルが検査された。サムズ博士は、商品名は異なるが同一の アナボリック・ステロイドはばらつきが小さかったのに対し、同一の化合物であってもばらつきが大きいことを見出した。

 この研究では、スタノゾロール化合物は多くのサラブレッドの体内から40日以内で消えた。しかし、ある馬の体内からは21日間で消えたのに対し、他の馬においては完全に消え去るまでに56日を要した。

 馬は体内からテストステロン(testosterone)を一掃するのには、短くて10日、長くて28日を要するが、スタノゾロールほど時間を要しない。

 ボルデノン[boldenone 馬用食欲増進剤であるエクイポイズ(Equipoise)]が消滅するには最短で91日、最長で140日要する。サム ズ博士は、エクイポイズは一般的に2回に分けて投与されるが、たとえ2回目の投与量が1回目の10分の1でも、体内残留時間は約24日伸びると補足した。

 ナンドロロン(nandrolone)の体内残留時間は、最短28日、最長77日であった。

 ケンタッキー州の現行ルールは、アナボリック・ステロイドをレース外で使用することを認めているが、調教師にはステロイド使用についてケンタッキー州競 馬委員会(Kentucky Horse Racing Commission: KHRC)への報告を義務づけている。KHRCはレースの60日前から投与を中止するよう勧告し、馬が出走する前には検査を受け残留していないことを確認 するよう求めている。ケンタッキー州のルールは米国の他州のアナボリック・ステロイドに関するルールと類似している。

 KHRCの馬医療部長メアリー・スカレー(Mary Scollay, D.V.M)博士は、馬のステロイドへの反応に大幅な差異があることが、ルール違反を企てる調教師たちへの警鐘となるだろうと指摘し、「ホースマンは競走 環境においてアナボリック・ステロイドを使ってはなりません」と述べた。

 残留時間にばらつきが生じることは、競馬においてアナボリック・ステロイドを禁止する理由にもなる。成分の化合方法によって薬効に差異が生じると、馬をロシアンルーレットのような危険な賭けに晒らすことになるからだ。

By Frank Angst

[thoroughbredtimes.com 2009年3月4日「Steroid study reveals wide variance in steroid residue」]


上に戻る