TOPページ > 海外競馬ニュース > 賭事市場開放に関する法案が公表される (フランス)[開催・運営]
海外競馬ニュース
2009年03月26日  - No.12 - 1

賭事市場開放に関する法案が公表される (フランス)[開催・運営]


 エリック・ヴォルト(Eric Woerth)予算大臣は3月5日正午、インターネットスポーツ賭事市場の開放に関する法案要綱を発表した。その要点は、税率を引き下げたこと、スポーツ 賭事と競馬賭事とで取り扱いを“平等”にしたことの2点である。トランプにたとえれば、まさにカードが配り直されたのだ。

 法案要綱の内容をみて、競馬界とその歴史ある金庫番であるフランス場外馬券発売公社(Pari Mutuel Urbain: PMU)は大いに安心したであろう。賭事分野において許可されるのはパリミューチュエル賭事だけということが明確にされた(ブックメーキングは禁止)。ま た、賭事業者に対して特別納付金の支払いを義務付けたことが明らかになったのも朗報だ。特別納付金の額は賭金の8%とされ、納付された資金は競馬サークル に還元される。2008年に競馬サークルに還元されたPMUの純利益の額は、賭事売上高の8.2%であった。今後は、資金還元に関してはどの賭事業者も同 じ制度が適用される。

 一方、賭事客にとって最も良いニュースは財政面の措置である。競馬賭事からの国庫納付金は現在のところ、賭事売上高の約12%に上る。法案では、国庫納 付率が7.5%に引き下げられる。これにより現状と比べてPMUは戦略的に行動するうえで大きなゆとりを得ることになる。それゆえ、2010年1月から市 場独占権を失うPMUは、希望すれば賭事客への控除率(現在は22%)を引き下げることも可能になる。

 エリック・ヴォルト大臣は賭事市場開放に対するフランス政府の姿勢を“現実主義的見地から開放はするが、天使のような優しさで開放するわけではない”と 表現する。市場開放により国はリスクを負うことになる。すなわち、国が競馬その他の賭事全体から間接税として50億ユーロ(約6500億円)を徴収してい る現状を考慮すれば、税率の引き下げに踏み切った場合には、“その分を取り戻さなければ”ならなくなる。しかし同時に、この法案は賭事客への払戻率につい て上限を80〜85%と設定している。その目的は、賭事依存症を防止し、マネーロンダリングを規制することである。

 賭事市場における競争ルールがほぼ判明した今、参入を検討する賭事業者は得失を計算し始めるだろう。フランス賭事市場の魅力に惹かれて、多くの賭事業者 が免許を取得し参入してくるだろうか?それは競馬賭事市場について言えば疑わしい。3月5日の発表の場には、PMU以外の既存のブックメーカーおよび競馬 賭事業者は片手で数える程度しかいなかった。そのうえ彼らの反応はPMUの指導者たちとは対照的に冷めたものであった。


ベルトラン・ベランギエ(Bertrand Belinguier)氏“大変満足です”

 PMUのベルトラン・ベランギエ会長は、法案要綱に、はっきりと満足感を見せた。「まず、競馬賭事においてパリミューチュエルの原則が唯一認められるこ とに満足しています。競馬賭事あるいはスポーツ賭事において、すべての賭事業者は同じの税率に従わなければならないということは大変重要です。もう1つの 重要な点は、すべての競馬賭事業者は8%の割合で競馬サークルに資金援助しなければならないという義務です。新たに設定される税率もまた、とても好ましい です」。


ユベール・モンザ(Hubert Monzat)氏“私たちの方針と一致しています”

 フランスギャロ(France Galop)のユベール・モンザ事務総長は、法案要綱の発表を満足げに聞いた。同氏は2008年6月までエリック・ヴォルト大臣の特別顧問としてその法案 要綱の作成に取組んでいたので、それも当然である。モンザ氏は、「賭事市場開放は競馬界が望んでいた条件で法的な裏づけをもって実現されます。競馬界の利 益は十分に考慮されています」と述べた。


ドミニク・ド・ベレーグ(Donimique de Bellaigue)氏
“建設的でありますが不安もあります”

 シュヴァル・フランセ(Cheval Français フランス速歩競走協会)のドミニク・ド・ベレーグ会長は、3月5日の発表を取り仕切った。同会長の説明は明確で、「市場開放に賛成し、 すべてがパリミューチュエル賭事となることに賛成しましたが、たとえ市場開放しても現状が実質的に変わるものではありません。競馬賭事とスポーツ賭事にお ける賭事客の待遇に平等性があることは建設的なことだと考えます。国家が資金の流れをコントロールする権能を持つことを期待しています。競馬界は賭事市場 におけるシェアを守るために戦わなければなりませんが、事業内容の透明性確保が私たちの切り札になります」と述べた。


ゼターフ社(ZEturf)の副社長“私たちも出走します”

 ゼターフ社[訳注:マルタ島の賭事営業免許を受けたオンライン競馬賭事業者]の副社長エマニュエル・ド・ロアン=シャボ(Emmanuel de Rohan Chabot)氏は、自身の立場で次のように反応した。「コントロールと管理が行き届いたやり方で賭事市場が開放されるのは結構なことです。しかし、フラ ンスの賭事営業免許を有している会社は、法案要綱で示された税率、特に賭事客への払戻率が適用されると、このような制限に従おうとしない外国の闇業者との 競争が困難になる恐れがあります。受け入れ可能な控除率はせいぜい5%です。ゼターフ社は免許を申請するつもりです。フランス国内ではフランスのルールに 従って営業するつもりです」と語った。

By Francois Hallope
(1ユーロ=約130円)

(参考)PMU:2007年の資金の流れ

 

売上げ 88億4200万ユーロ (約1兆1494億6000万円)
賭事客への払戻し 65億4600万ユーロ (約8509億8000万円)
国庫納付金 10億8900万ユーロ (約1415億7000万円)
運営費 4億8000万ユーロ (約624億円)
競馬サークルへの還元 7億2700万ユーロ (約945億1000万円)
(関連記事)海外競馬ニュース 2008 No.16「フランス賭事市場の開放、パリミューチュエル方式以外は依然排除」、海外競馬情報2007 No.18「PMUと欧州委員会、もはや何もうまく行かず」


[Paris Turf 2009年3月6日「A qui perd gagne」]


上に戻る