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海外競馬ニュース
2007年08月02日  - No.30 - 3

2008年度の賞金資金交付額削減(イギリス)[開催・運営]


 イギリスの馬主は2008年の競馬賭事賦課公社(Levy Board:賦課公社)からの賞金補助額が10%削減されることを覚悟しなければならないだろう。その原因は、競馬が若いファン獲得に失敗しつつあるからだ。

 2007年の約14%の削減に続く削減は、賦課公社のロブ・ヒューズ(Rob Hughes)会長によれば、“誠に遺憾ながら”断行されるということだ。

 ブックメーカーからの収入の減少により、賦課公社は当期2007〜2008年収入見積りを、2006〜2007年の収入見込み9,000万ポンド(約216億円)より5%少ない8,550万ポンド(約205億2,000万円)とせざるを得なかった。

 その結果賦課公社は、開催日数に応じて競馬場に支払われてきた賞金補助にメスを入れた。そして、収入見積りが達成されなければ更なる削減をせざるをえな いとの条件つきで、主要な年間支出項目である賞金補助予算額を2007年の5,500万ポンド(約132億円)から4,950万ポンド(約118億 8,000万円)に削減した。

 さらに生産者賞と分割競走への交付金についても10%の削減がなされ、各々162万ポンド(約3億8,900万円)と85万5,000ポンド (約2億500万円)に減額される。

 賦課公社からの出走奨励金(appearance-money scheme)への交付金は2006年に310万ポンド(約7億4,400万円)から150万ポンド(約3億6,000万円)に削減された後、凍結されて いる。これは、この資金が馬主にとって欠くべからざるものとみなされたからだ。

 馬主にとって二筋の光明は、賦課公社がはじめて英国競馬公社(British Horse Racing Board:BHB)の振興基金に資金提供することと、2007年の公約実行を約束したことである。

 競馬法医学研究所(Horseracing Forensic Laboratory:HFL)の売却収入1,700万ポンド(約40億8,000万円)の利息55万ポンド(約1億3,200万円)は、番組企画のため に特定イベントを強化する“振興基金”に充当されることになる。

 イギリス馬主協会(Racehorse Owners Association)の最高経営責任者マイケル・ハリス(Michael Harris)氏は、ホースメンズ・グループ(Horsemen’s Group)も代表して、賦課公社による2008年賞金補助額の大幅削減の予告が大変残念であるのは当然だが、「競馬産業が賭事市場の需要変化に適応しな ければならないということは、競馬産業にとって厳しい警告です。競馬は素晴らしい賭事ですが、その魅力は若年層に理解されていません」と述べた。

 またハリス氏は、「競馬をもっと分かり易くし、最大限に馬券ファンにアピールする番組を編成し、最も必要とされる時期に開催を行うため、賭事産業と連携 する際には慎重でかつ断固とした戦略を立てなければなりません。もし私達がこれらの市場の変化に迅速に対処できなければ、競馬賭事は衰退を続けることにな るでしょう。そして減収を補うための別の収入源を見つけるのは困難です」と語った。

 ヒューズ会長は、「ベッティングショップの映像市場の先行きの不確実性によって、これらの予算削減が不可避なものとなっています」と語った。

 最高経営責任者トリストラム・リケッツ卿(Sir Tristram Ricketts)は「私たちは予定外の支出や収入の更なる減少に備えて、十分な現金準備をしたいと考えました」と10%削減の理由を説明した。

 予算削減の大鉈をどこに振るうかは,主に競馬場が決めることになる。競馬場は近々2008年度の実際の賞金補助額を知ることになるだろう。

 競馬場協会(Racecourse Association)の最高経営責任者スティーヴン・アトキン(Stephen Atkin)氏は「賦課公社メンバーである、当協会のデーヴィッド・ソープ(David Thorpe)会長はこの決定を支持しました。それは確かに残念ですが、当面は避けがたいことでした」と語った。

 

By Howard Wright
(1ポンド=約240円)


[Racing Post 2007年7月19日 「Prize-money cut for 2008」]


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